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地球の外に生命を探せ! / 『地球外生命は存在する!』著者、縣秀彦氏インタビュー

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宇宙人は存在するのか。古くから、人々はその存在を探るべく宇宙にメッセージを発してきた。未だ宇宙人からの返事はない。しかし近年、観測技術の向上により、太陽系内外を問わず、生命の可能性を秘めた天体が見つかってきている。果たして地球外生命体は存在するのか。探査の最前線を、『地球外生命は存在する!』の著者、縣秀彦氏に伺った。(取材・構成/増田穂)

幅広い生命の定義

――単刀直入に伺います。地球以外にも生命体は存在するのでしょうか。

いないと証明できません。例えば家にゴキブリがいるというのは、見つければいいので簡単です。しかし反対に「いない」と言い切れるかというと、これは大変難しい。ゴキブリは物陰に隠れているわけですから、いても気づかないことの方が圧倒的に多いのです。

宇宙人も同じだと考えています。「いる」ということは発見すればすむ話です。確かに今のところ宇宙人は見つかっていません。しかし、今現在見つかっていないからと言って、いないと証明したことにはなりません。

ゴキブリは1匹いたら、家にいるのがその1匹だけだった、ということはまずないですよね。芋づる式に見つかります。宇宙人、地球外生命体捜しというのはそういうものだと思っています。最近はアストロバイオロジーという新しい学問領域で、そうした地球外生命に関する研究が行われています。

――アストロバイオロジー……。あまり聞き慣れないです。

日本語で言うと「宇宙生物学」です。1990年代くらいから始まった、かなり複合的な学問領域で、生物学、化学、宇宙物理学、天文学など、さまざまな分野の人たちが参入しています。特に若い世代が続々と集まってきていて、とても活気のある領域です。

アストロバイオロジーはまだまだ発達段階の研究領域です。学問的に確立しているとは言い難い。現段階のアストロバイオロジーは、どちらかというと、さまざまな科学分野の研究者の中で、生命にかかわるテーマに関心をもった人たちが集まり、情報共有をするためのプラットフォームになっている感じです。具体的には、生命とは何か、地球上のどこで発生したのか、どのような進化をしてきたのか、宇宙にも生命はいるのか、そういうテーマです。

――生命に関わる研究、とのことですが、そもそもどのようなものを「生命」というのですか。

それは大変難しい質問ですね。もちろん、古典的な生物学ではほぼ統一した定義が存在します。高校の教科書にも書かれていますが、(1)自分と他の物を区別できる、(2)代謝をする、(3)自己増殖する、さらに(4)進化の可能性がある、を付け足す場合もあります。

(1)は、自分と他の物との間に境界を持つということです。(2)は必要なものを取り入れて、いらないものを排出する行為。例えば人間は呼吸をして必要な酸素を取り入れ、不必要な二酸化炭素を排出しています。(3)は分裂したり、子孫を残すことですね。(4)はそのまま、進化するかどうかです。これが生物学界での古典的な生命の定義です。

しかし、こうした定義は揺らいでいます。子孫を残そうとしないものは生命ではない、なんてありえないですよ。未婚の方やお子さんを持たないご家庭もあるでしょう。

それに、最近ではAI技術が目覚ましい発展を遂げています。例えば将来、非常に高度な知能を持つAIが作られたとしましょう。もちろん最初は人工的に生み出されます。しかしその後は、彼らが自分で自分を作れるようになるかもしれません。今でも工場の多くはオートメーションされたライン上で製品を作っています。将来的にはロボットがロボットを生み出す日が来る、つまり自己増殖する日が来るかもしれません。

ロボットは電気をチャージしますから、熱を発します。必要な電気エネルギーを取り入れ、不必要な熱を放出する。代謝の条件も揃います。自分と他の物との境界を持つことは言うまでもありませんし、自動学習機能で進化するかもしれません。そう考えると、本当に生命の定義は揺らいでいるんです。

アストロバイオロジーでは、さらに話は複雑です。先ほど申し上げた通り、アストロバイオロジーはさまざまな分野の科学者が参加する学際的なプラットフォームです。したがって、それぞれの分野の研究者が、それぞれの定義で話をします。

「生命」も、生物学を背景に持つ方でしたら、先ほどの定義で一通りの合意はとれるかもしれません。しかし宇宙物理学者の連想する「生命」はもっと広い。例えば人間が理解しているタイムスケールとは別に、ナノ秒みたいな単位で生きている生き物とか、別次元に住んでいる生き物とかがいるかもしれません。SFみたいですが、そうした可能性も研究の範疇です。

ポイントは熱源と水の存在

――そうすると、宇宙で捜している生命も、かなり広い枠で捉えて捜しているのでしょうか。

捜している生命は大きく分けると2つに分けられます。一つはとにかく「生き物」、もう一つは「知的生命体」です。前者をA、後者をBとしましょう。Aの方は、あまり進化していません。要は有機物、つまり炭素を材料とする生物で、顕微鏡で見ないと見えないくらいの非常に小さなものです。地球上でも、生命はそうした微小なものから始まり、38億年をかけてゾウやシロナガスクジラのような大きなものまで幅広いバラエティを生んだのです。

Aについては、地球以外の太陽系内の天体のどこかにいないか探っています。一番近いところでは、地球の上空500kmを周遊している国際宇宙ステーション(ISS)で、エアロゲルという宇宙空間の粒子を採取する物質を置き、そこに付着したものの中に微生物がいないか調べています。「たんぽぽ計画」というものです。

他に代表的なものと言えば火星探査です。火星探査は1960年代から繰り返し行われています。さまざまな目的で探査が行われていますが、その一つが生命探査です。火星に生命が存在する可能性は否定できないですからね。あとは木星の衛星や土星の衛星にも生命の可能性を否定できない衛星があります。こうした天体での生命探査には、直接探査機を送って、そこにいる生命、もしくは生命の化石を採取する手法での調査のほか、代謝によるメタンや二酸化炭素の排出の痕跡がないか観測する手法が取られています。

今のところ、確実な生命の証拠は全く見つかっていません。同時に、これは本当に生命がいないのか、我々の探査能力が足りないだけなのかもわかりません。可能性はまだゼロではないのです。

――どういった条件から、生命の可能性を判断しているのですか。

一つのポイントは液体の水があるか否かです。地球の場合は明確です。表面の7割を海に覆われています。地球規模で考えると非常に薄い膜のような海ですが、そのおかげで生命が生まれ進化しました。生命は、有機物の一つで非常に高分子です。有機物の化合は水がないと進みにくく、高分子の化合は水がなくては起こり得ないと考えられています。したがって、水の存在が生命の可能性の重要な判断材料になるのです。

水は、熱源となる太陽から近すぎると蒸発してしまいますし、反対に遠いと凍ってしまいます。ですから、暑くもなく寒くもない、太陽からのちょうどいい距離に位置していることが重要です。そうした水が存在できるエリアを、ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)といいます。

しかし、ハビタブルゾーンにあるからといって、生命が存在できるわけではありません。例えば月は地球と同じくハビタブルゾーン内にあります。しかし水も大気もほぼありません。したがって生命も存在できないのです。天体のサイズも重要なのです。

――先ほどお話にあった火星は、ハビタブルゾーンに存在し、水もあるとされています。

ええ。火星は地球の10分の1の重さの小さい天体です。これが何を意味するかというと、惑星としての進化が早いということなんです。火星でも、進化の過程で、地球と同じように表面が海で覆われていた時代がありました。しかし、今ではなくなってしまっている。ただ、水があったということは、今表面になくても、どこかに保存されているわけです。火星の地下に凍結した状態で残っていると考えられています。そこに、バクテリアなどのそこまで進化していない生き物の痕跡が残っているかもしれません。

――土星や木星の衛星についてはいかがですか。

土星や木星の衛星はもう太陽のハビタブルゾーンからは外れているので、表面は凍っています。ただ、さまざまな証拠から、氷に覆われた内部に液体の水の部分がありそうなんです。確実に水があるのは木星の衛星エウロパ。同じく木星の衛星ガニメデはおそらくあるだろうと言われています。

土星の衛星エンケラドスにも確実に水があると考えられています。しかもエンケラドスではその水が割と表面に近いところにあると考えられているので、もし生物がいるとしたら比較的容易に見つけることができるかもしれません。

――エウロパやエンケラドスは太陽系のハビタブルゾーンの外に位置していますが、寒すぎないんですか?

確かに太陽からは離れていますね。ただ、宇宙での熱源は太陽のように光っている恒星だけではないんです。土星や木星を周回している衛星は、みな氷の塊です。おっしゃるように寒いですから。ではなぜその内部が一部溶けているのかというと、潮汐力が働くからなんです。

――潮汐力、ですか。

木星には60以上もの衛星が見つかっていますが、エウロパは比較的木星に近いところにあります。すると、重力で互いに引き合う力が起こるのです。月と地球でも重力が働き、潮の満ち引きが起こります。それが潮汐力です。潮の満ち引きって結構大きな運動ですよね。それだけのエネルギーが発生しているということなんです。エネルギーが発生するということは、熱が発生するということです。つまり、潮汐力によってエウロパの内部は熱を持ち、その結果として氷が溶けるのです。

ちなみ木星にはエウロパより内部にイオという衛星があります。イオはより木星に近い分、潮汐力も大きく働きます。エネルギーで地下が暖められて、イオでは火山がぼんぼん爆発しています。つまり、太陽からのハビタブルゾーンから外れていても、そうした熱源があれば、「ハビタブル」なんです。これもアストロバイオロジーの中で定義がまとまっていないこところですね。【次ページにつづく】

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