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やはり中国に人権はない! それを許すトランプの情けなさ - 山幸夫 (産經新聞前論説委員長)

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アメリカはもう「人権の国」ではなくなってしまったのか。

 中国の著名な民主活動家で、ノーベル平和賞受賞者、劉暁波氏が7月13日に亡くなった。各国首脳が相次いで哀悼の意を表明する中、トランプ米大統領は同じ日、マクロン仏大統領との首脳会談後の共同記者会見で、劉氏死去には一切触れず、あろうことか、中国の習近平主席を「偉大な指導者で才能あふれる人物」と絶賛してみせた。

 ネット空間などで批判含みの反響が続出したため、ホワイトハウスは、あわてて5時間後に追悼の声明を発表した。しかし「大統領は深く悲しんでいる」というわずか5行の素っ気ないものだった。

 驚くべき冷淡さだが、筆者は、こういう反応を予想していた。というのも、その5日前の7月8日、ドイツのハンブルクでの20カ国・地域(G20)首脳会議の機会に開かれた米中首脳会談で、トランプ大統領の口から、劉暁波氏に関する懸念表明、注文が一切聞かれなかったからだ。

 ハンブルクでの首脳会談が開かれたのは、時あたかも、劉氏が重篤に陥り、診察を許可された米独両国の医師団も手の施しようがない状況の中だった。しかも中国は、劉氏を国外の病院に移して適切な治療を施すべきだという各国からの強い要請を、無視し続けていた。 

 こうした事情があったのだから、本来なら、トランプ氏は、劉氏の問題を会談の主要議題に据え、習主席に対して、非人道的な対応を厳しく批判し、国外での治療を認めるよう迫るべきだった。

 しかし、この会談を報じた内外メディアの記事を読む限り、トランプ大統領は、そのことに一切言及していない。また、人権問題そのものも、会談全体を通して取りあげられた形跡はない。北朝鮮の核開発、貿易不均衡といった緊急の課題があったとしても、不可解、驚きというしかない。

 会談後、ホワイトハウスが公表した記者団向けのメモを確認してみたが「人権」の文字はなかった。念のため、ワシントンに戻る大統領専用機内で行われたホワイトハウス当局者による大統領の欧州歴訪を総括するブリーフィングをチェックしてみたけれど、やはり、結果は同じだった。

 記者団からそれに関する質問もなかったというのも実に不可解な話だ。 

 それにつけても、思い出すのは、1997年10月の江沢民主席(当時)とクリントン米大統領(同)との共同記者会見だ。国賓として訪米した江沢民主席が、最初の訪問地としてハワイを選び、日本にあてつけるかのようにパールハーバーで献花した、あの時の外遊だ。日本でも記憶している人は少なくないだろう。筆者もこの江沢民訪米を取材した。  

 晩秋の一日、ワシントンでの首脳会談を終えた両首脳は、ホワイトハウスに隣接する荘重なオールド・エグゼクティブ・ビルの講堂に並んで立った。

 1989年の天安門事件について聞かれた江沢民主席は、「国家の安全を脅かし、社会的安定を損なう政治的争乱に対して政府が必要な措置を執ったということだ。党と政府はこの判断が正しかったと確信している」と流血の弾圧を正当化した。

 こういうとき、ホストは、国賓であるゲストの言い分を一応聞き置くという態度をとるものだが、クリントン大統領は違った。自ら発言を求め、「われわれは考えが違う。この事件、それに続く活動家への容赦ない措置によって、中国は国際社会の支持を失った」と賓客を面罵した。 

 江沢民主席は憤然として、「民主主義、自由、人権というものは、それぞれの国家の状況に従って、他国から干渉されずに検討されるべきものだ。温かい歓迎には感謝しているが、時に雑音が耳に入ってくる」と激しく反発、人権活動家が宿舎やホワイトハウス前でデモや集会を行っていることをもあてこすった。

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