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【読書感想】なぜ、残業はなくならないのか

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なぜ、残業はなくならないのか(祥伝社新書)

なぜ、残業はなくならないのか(祥伝社新書)


Kindle版もあります。
なぜ、残業はなくならないのか (祥伝社新書)

なぜ、残業はなくならないのか (祥伝社新書)

内容(「BOOK」データベースより)
これが、残業大国・日本の正体だ!「残業」には、わが国の労働社会の問題が凝縮されている。「残業」は僧らしいほど合理的だ。そもそもが、日本の労働現場は残業しなければならないように設計されているのだ。本書では、この問題にいかに立ち向かうべきかを深く掘り下げて議論し、政府が進める「働き方改革」についても、その矛盾を鋭く指摘する。すべての働く日本人に、気付きを与える一冊。

 「残業」という言葉に良いイメージを持っている人は少ないと思いますし、最近では、「仕事が終わったら早く帰るように」なんてお達しが出ることもあります。残業自慢の人も、減りましたよね。
 とはいえ、何が何でも定時帰宅、というのはなかなか難しいということも、多くの人は実感しているはずです。
 サービス業では、自分の都合というより、お客さんの都合に合わせなければならないところがあるし。
 定時帰宅を声高に主張している人たちがみんな、お客としても「時間外労働や過剰なサービス、厳しい納期」を否定してくれているのなら良いのだけれど。

 日本のドキュメンタリーやノンフィクションやドラマでは、現在でも、「みんなが協力し、睡眠時間を削って、素晴らしいコンテンツをつくりあげるシーン」を、今でもけっこう見かけます。
 そういう「クリエイティブな仕事」のためなら、残業や時間外労働も許されるのだろうか?
 そう言いつつ、僕も観客としてはけっこう好きなんですよね、ボロボロになりながらも、何かを成し遂げるシーンって。つい、感動させられてしまうのです。

 著者の常見さんは、この本の「はじめに」で、こう書いておられます。

 読者の皆様の中には、「残業」に関して本音を言いづらい雰囲気を感じている人もいることだろう。
「とはいえ、仕事の絶対量も多く、顧客からの急なオーダーもある。残業は減らせないのではないか」「大手が残業を減らそうとすると、そのしわ寄せは取引先の中堅・中小企業に行くのではないか」「残業に対して肯定的に言うと、ブラック企業礼賛論者だと言われそうだ」などと思っている人がいるのではないか。本書はまさに、そんな素朴な疑問に向き合う一冊である。

「日本企業の残業は、なぜなくならないのか?」

 あえて空気を読まずに回答しよう。その答えは簡単だ。

 残業は、合理的だからだ。
 残業もまた、柔軟な働き方だからだ。
 残業しなければならないように、労働社会が設計されているからだ。

 この言葉に抵抗感のある人、いや嫌悪感を抱く人さえいることだろう。しかし、残業は、日本における雇用システム、特に従業員の雇用契約、仕事の任せ方から考えると必然的に発生するものである。残業は、人手不足を補う意味や、仕事の繁閑に柔軟に対応するものである。

 著者は、独立行政法人労働政策研究所・研修機構の『データブック国際労働比較2016』をもとに、世界各国と日本の総実労働時間の推移を国際比較しています。

 2014年においては日本人の一人当たり平均年間総実労働時間は1729時間であった。諸外国と比較すると、アメリカ1789時間、イタリア1734時間、イギリス1677時間、スウェーデン1609時間、フランス1473時間、ドイツ1371時間となっている。
 日本はアメリカ、イタリアに次いで高い水準となっているように見える。グラフから明らかだが、メディアでは「日本人は働きすぎ」という言葉が独り歩きしているが、日本「だけ」が高いわけではない。中長期のスパンでの推移も注目していただきたい。

 2000年以降の推移を見ても、高い水準で変化していない国(アメリカ、イタリアなど)、低い水準で変化していない国(フランス、ドイツなど)などが存在する。スウェーデンのように労働時間が増加している国も存在する。

 1980年代からの推移をみると、日本の総労働時間は改正労働基準法(1987年改正、1989年瀬施行)の影響により、現象を続けてきた。この改正で、1週間に48時間であった法定労働時間が40時間に変更されている(当面の間は46時間を認めた)。週休2日も90年代に広がった。2009年には過去最低の1714時間を記録している。

 この一人当たり平均年間実労働時間のグラフをみると、1980年には2100時間をこえて、日本、アメリカ、イタリア、イギリス、フランス、スウェーデン、ドイツのなかで、ぶっちぎりのトップだった日本の労働時間は、右肩下がりとなり、1990年代後半には「他国並み」になっているのです。

 日本人は長い間「働きすぎ」だったけれど、この20年くらいに関していえば、自分たちが思い込んでいるほど、長時間労働をしているわけではないのです。

 ただし、著者はこのデータに関して、「正規雇用者のみのデータではなく、非正規雇用者が含まれるデータとなっており、労働時間が短い非正規雇用者の増加により、平均の労働時間が減っているかのように見える」と注意喚起しています。

 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、正規雇用者の労働時間は、1993年が2045時間、2015年には2026時間と、そんなに変わってはいないのです。
 いまの日本では、正社員という立場は羨まれがちではあるけれど、彼らは20年前と変わらない長時間労働を課せられてもいる、ということです。

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