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「メンタル」を鍛えるには、この5冊

Q. 私たちが今、読むべき本は何ですか?
Answer:明治大学文学部教授・齋藤 孝さん

(上から順に)『LEAN IN(リーン・イン)』『不格好経営』『シャネル 人生を語る』『花言葉』『漱石書簡集』

いよいよ、メンタルタフネスが必要な時代です。自分一人で切り抜けなければいけない場面でも、人に相談しなければならない場面でも、精神状態を適切に保って対処していかなければなりません。変化が激しく、社会も人も複雑な状況に陥っていますから、自分自身をマネジメントしていく能力を養いましょう。

そこでお薦めしたいのが、時代を切り開いてきた女性の本です。現実に向かってひとつひとつ道を切り開いている女性たちの姿や考え方には、学びが大きい。読み進めると、経営者などの高い能力が必要な人も一般の人も、同じような問題にぶつかっていることがわかります。上の立場の人はより大きな課題に取り組んでいるだけで、根本の問題は同じなのです。精神論だけ書かれた本ではわかりづらいこともありますが、『LEAN IN』『不格好経営』『シャネル』は、実体験がつづられていて参考にしやすいと思います。

精神的にも肉体的にも疲れていたり、忙しすぎて本を読む余裕がないときには、美輪明宏さんの『花言葉』で、気持ちを落ち着けましょう。5年ほど前からときどきお会いしているのですが、若いときから成功も失敗も経験された方だからこそ、アドバイスに説得力があります。美輪さんの美的な要素や格言に触れて、自分と向き合いましょう。

道を切り開きたいと感じている方に読んでいただきたいのは、『漱石書簡集』です。夏目漱石というと、“悩める人”というイメージが強いかもしれませんが、実は大きな志を持って生きた人だったことがわかります。日本の近代を支えた、日本人全体の教師といえるでしょう。それぞれの手紙が自分に宛てられたと思って読めば、勇気づけられ、視野を大きく持てるようになります。

時代の流れに取り残されないためには、多くの本を精密に読みこみ、すぐに仕事に応用できるようにしていくことが重要です。最後に、私が実践している読書法をご紹介します。

まず、本を読み終える期限を設けます。目を速く動かしたり、必要な部分だけをピックアップして読み進めると、徐々に速く読めるようになります。時間を短縮したいなら、目次を見て、結論が書いてありそうな章から読んでもいいと思います。速く読もうとして記憶に残らないのは本末転倒ですから、読んだ本は内容を要約して周囲に説明します。

仕事用でも趣味の本でも、本を探すときには、書店に行くことをお勧めします。探している本の類書数冊を真剣に読み比べるのです。中身を吟味して一番いいものを1冊買うようにすれば、そのとき選ばなかった本の内容も記憶に残ります。このとき、立ち読みだけで済ませようとすると、だんだんと真剣に読まなくなり、記憶に残りませんから、1冊は買うこと。服やバッグを買うときに真剣に比べるように、本も真剣に選んでみてください。

▼ご紹介いただいた本5冊

『LEAN IN(リーン・イン)』シェリル・サンドバーグ(著)川本裕子(序文)村井章子(訳)日本経済新聞出版社 本体1600円+税
フェイスブックCOOが自身の経験を基にして書いた、仕事を持つ女性が、結婚して家庭を持つこと。「男女平等のイメージが強いアメリカでも、女性が実際より能力を低く見せる癖がついていることがわかります。精神面の整え方、対等なパートナー探しなど、勇気づけられる」

『不格好経営』南場智子(著)日本経済新聞出版社 本体1600円+税
DeNA経営者が、介護をはじめとした家庭と仕事の問題をつづる。「著者はコンサルタント時代には自分が経営者だったらもっとうまくいくと考えていたのに、それができずに苦しみ、リーダーが意思決定することの難しさを痛感する。経営者でなくても参考になる」

『シャネル 人生を語る』ポール・モラン(著)山田登世子(訳)中央公論新社 本体857円+税
ファッションデザイナー、ココ・シャネルの回想録。「“皆殺しの天使”といわれたシャネルは、“私は服が好きだったのではなく、仕事が好きだった”と語り、孤独に必死で働き続け、出会い、恋愛もする。新しい時代を切り開いた強い女性像を感じてください」

『花言葉』美輪明宏(著)PARCO出版 本体1400円+税
歌手、俳優、声優、演出家、作家である著者の格言集。「日常の悩みの層よりもうちょっと深い層や視点から見た、納得できる言葉やアドバイスです。落ち着いて厚い本を読む時間がないときは、パラッと開いたページの言葉を見て、息を抜いてリラックスしてほしい」

『漱石書簡集』夏目漱石(著)三好行雄(編)岩波書店 本体760円+税
漱石が自分の弟子や友人に送った手紙。「人のため、世のために働こうとする大きな志に溢れています。自分の身の回りのことだけで小さくまとまって志がないと、働きづらい。日々のSNSなどではなかなか触れることのできない言葉があります」

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齋藤 孝
明治大学文学部教授。1960年、静岡県生まれ。85年に東京大学法学部卒業後、同大学院教育学研究科修士課程、博士課程などを経て、2003年から現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。教育分野にとどまらない深い知識と穏やかな語り口で、テレビなどのメディアでも活躍中。  ●齋藤さんの本
名文は暗唱することで心の力となることを説いた『声に出して読みたい日本語』(草思社)をはじめ、多くの著作がベストセラーに。近著に写真の『齋藤孝の絶対幸福論』(実業之日本社)、『年を取るのが楽しくなる教養力』(朝日新聞出版)ほか多数。 

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(明治大学教授 齋藤 孝 構成&編集=干川美奈子 撮影=堀 隆弘)

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