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ヒューマニティの問題として、介護ロボットの導入を急ぐべき。介護者がよりよく生きるために現場に光を当てていかないと - 「賢人論。」第43回クロサカタツヤ氏(前編)

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今回の「賢人論。」ゲストは総務省の「AIネットワーク化検討会議」に委員として参加する経営コンサルタント・クロサカタツヤ氏。世の中をがらりと変えつつあるITの今を専門家に訊く。前編でクロサカ氏は、介護ロボットを早急に導入することの重要性を訴えるとともに、“自己改革の機会”としての結婚の意義を語った。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

結婚以後、自分の中に山ほど変化があった

みんなの介護 クロサカさんには2人の娘さんがいらっしゃるそうですね。高齢化だけでなく少子化・晩婚化が日本の社会問題になって久しいですが、クロサカさんは結婚・子育てについてどう捉えていますか?

クロサカ 個人の視点ですが、家庭をもつことは“自己改革の機会”になると思っています。結婚以前と以後では、自分の中で変化が山ほどありました。私たち人間は社会の中で生きていく存在ですから、死ぬまで変わり続けざるを得ないんですよ。山の中で狩りでもして生きていない限りは、たとえ引きこもりであっても何らかの形で社会とつながっていなければならない。

けれど、変わることというのはそう簡単じゃありませんよね。たとえば一人暮らしをしていたら、生活を朝型にしようと思ってもすぐ心が折れるでしょう(笑)。でも、自分が変わらないとパートナーとの関係が維持できないんだ、良好にならないんだと気づくことで、改善への手がかりを獲得できますよね。パートナーを鏡として自分がどう変わっていくべきかを考えていける。

子供ができるとなおさらそうです。現実的な問題として、子供と遊ぶためには健康でいなければいけない。そういう意味では、もしそれが可能ならば、子供は若いうちに授かれた方が、親の身体は結果的にラクですね。一方、特にホワイトカラーの場合、仕事をして寝転がっているだけだと、身体はどんどん衰えていきますよ。それに抗うためにも、自己改革を促してくれる家庭という存在はすごく大切なものだと思います。

みんなの介護 “子供が欲しい”と思ったのはいつ頃でしたか?

クロサカ 20代の頃は親になっている自分を想像できなかったですね。30代前半だって、気持ちはまだ20代なんですよ。まだ何者にもなっていない段階だから、自信もないし。それでも32歳の頃、子供を授かったことを知って、「頃合いなんだな」と思いました。自分はそういう年齢になったんだなということを、そのときなんとなく悟ったんです。

逆にそれくらいでもいいのかもしれない。いま振り返ると、ちょっと気負いすぎていた気もして、正に「案ずるより産むが易し」だったのかな、とも思います。ただ、その言葉通りにするには、やはり結婚や育児を通じて山ほど訪れる「自己変革の機会」を正しく受け止める必要があります。特に男性の側は、「案ずるよりって…産まないお前が言うな!」と言われかねないですからね(笑)。

AIの製品は使われないと磨かれていかない

みんなの介護 クロサカさんは総務省の「AIネットワーク化検討会議」で、人工知能などの技術革新に伴う社会課題に取り組んでらっしゃるそうですね。

クロサカ 人工知能というと特別なものというイメージがまだあるかもしれません。でも、私たちは今や、一日の中で人工知能に接していない時間の方が短いかもしれませんよ。Gmailの迷惑メールフィルターやYouTubeの「あなたへのおすすめ動画」には人工知能が使われていますし、それにFacebookのタイムラインだって友達が投稿した順に表示されるのではなく、ユーザーの関心が分析された上で並べ替えられているんです。自動車もエレベーターも少なからず人工知能によって制御されている。

人工知能はいわば「ご本尊」なんですよ。普段は奥の方に隠れていて、御開帳されない限り目に触れることはないんだけれど、ずっとエンジンとして稼働し続け、いろいろなシステムを支えているんです。

みんなの介護 人工知能の発展に伴い、今後はどのような新しい技術が出てくるのでしょうか?

クロサカ 現時点で要素技術はすでにいろいろできているので、あとは「使わないと先に進まない」という状況に来ています。というのは、人工知能をはじめとしたIT関連のサービスは、あらかじめ100年変わらない完成版がリリースされるのではなくて、いつまでも「ベータ版」だから。使っていくうちにどんどん機能が磨かれていく構造になっているんです。

ですから今後は、「何が出てくるか」というより「何を使いたいか」という話になってくるでしょうね。この先は、そんな風に製品を実際に使いながら磨いていく、そしてサービスの質を上げていくという段階に入っていくんだと思います。

みんなの介護 介護業界でも、ロボットを導入していく動きがあります。

クロサカ 日本社会ではどう考えても介護業界にテクノロジーを使っていくべきです。個人的なことを言えば、僕は今42歳で、父が85歳。幸いにしてまだ父は元気な方なんですが、2年前に大きな手術をしてから身動きが取りづらくなってきました。いずれベッドの上での生活が長くなり、80kgもある父を「よっこらしょ」と起こすのか…と思うとなかなかしんどいのだろうなと思います。

みんなの介護 個人向けの介護ロボットや身につけるタイプのパワーアームがあれば、介護はずっと楽になるでしょうね。

クロサカ そこまでいかなくても、ベッドから起きたがっていることをセンサーで感知して知らせたりですとか、テクノロジーの力でやれることは山ほどありますよ。我々のような介護する側に対してこそ、そういったサポートを積極的に取り入れていかないと、これからの介護は間違いなく成立しないですよね。“老々介護”という状況が始まってきていますから、今こそ導入を急がないと。

みんなの介護 介護ロボットは実際に開発が進められ製品化もされていますが、いまいち普及しきっていません。

クロサカ 「機械に介護されるのは嫌だな」という感情的な障壁があったり、さっき言った「ベータ版的な思考」、つまり使いながら磨いていこうという発想が根付いていなかったりといった、我々ユーザー側が持つ課題の方がむしろ多いのかもしれませんね。

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