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シンポジウム「就活はこれでいいのか?〜日本の雇用を考える〜」

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(左から)城繁幸氏、安藤至大氏、海老原嗣生氏、池田信夫氏。
(左から)城繁幸氏、安藤至大氏、海老原嗣生氏、池田信夫氏。 写真一覧
今年も就職活動が本格化する時期を迎えています。学生生活の1/3が費やされる"就活"については問題も多く、政府が「新卒者雇用に関する緊急対策」を打ち出して特命チームを設置、企業の側も選考活動の後ろ倒しを検討するなど、変化の兆しが見えはじめています。

一方で、就職予備校化する大学や、就活対策・仲介業者の問題点も指摘され、インターネット上でも活発な議論が行われています。

今回のBLOGOSシンポジウムは、言論プラットフォーム「アゴラ」との特別共催企画として、日本工業大学神田キャンパスを会場に、就活システムや企業の人事制度、労働経済学に造詣の深い専門家をお招きし、"日本の就活"を徹底討論しました。





池田信夫(以下、池田):こんばんは。今日のテーマは、“就活はこれでいいのか”ということを切り口にして、日本の雇用や労働市場を考えていきたいと思っています。今日、ご出席頂いたのは、私の隣から人事コンサルタントの海老原嗣生さん、そのお隣が日本大学大学院准教授の安藤至大さん。そのお隣が、人事コンサルタントの城繁幸さんです。

一同:こんばんは。

池田:それでは、最初にそれぞれのお立場と考え方を表明してもらいたいと思います。城さんと海老原さんは、知る人ぞ知る昔からのライバルなので……。

城繁幸(以下、城):いやいや、そんなことないですよ(苦笑)

池田:まずはボールを投げる形で城さんからどうぞ。

”全社員請負”で、終身雇用も就職氷河期もなくなる



:全社員を請負にしようというのが、私の立場です。使い捨てになるのは、正社員という役職があるからです。正社員がなくなれば、非常にフレキシブルで働きやすい会社になる。たとえば、コンビニ店員は、業界最大手でも債務超過と言われている会社でも同じ時給。これは同じ地域で同じレジを打つという仕事に対して値札がついているからです。

これが本来の意味での世界標準なんです。経営難だから給料を下げる、終身雇用だから地方に転勤なんてこともコンビニ店員の世界ではない。セクハラ・パワハラも辞めたり訴えたりすればいいので、起こりにくい。みんなが、“この仕事に対して、この雇用契約”という風に契約を結ぶようになれば、終身雇用も就職氷河期もなくなります。

海老原嗣生(以下、海老原):城さんとは対立面が多いように見えるけど、実際には近い部分が多いんです。僕は“橋を渡った人”と“橋を渡らない人”の二つにして欲しいと思っています。橋を渡ったら“あなたに預ける。一生ついてこい”となる。今の日本はこの“橋を渡った人”の会社ばかりだった。橋を渡ったからには、いい思いもするけど、パワハラ・セクハラもあり得るという覚悟をするべきです。

安藤至大(以下、安藤):農林水産業から、製造業・建設業から、サービス業へと働き方が変化してきました。昔はお爺さんが農業をしていたら、親子代々、農業というのが当たり前。同じ仕事をずっと続けられたんです。高度経済成長期に入っても、同じ会社にずっと勤めることができた。でも、現在は過渡期です。労働人生の間で、自分の仕事を変える必要があります。
“良い会社に入れば安泰”という時代ではない。正規雇用と非正規雇用は上下関係ではなく、実際には一長一短の関係です。契約期間にしても長期か短期かの二択ではなく、多様な契約ができるようになれば、解雇の必要性が低下します。

7割の人は最初から大手を受けちゃダメ



池田:城さんと海老原さんの話が対立してなくて意見が一致しているところばかりが目立ったんだけど、何か違いはないですか?

海老原:違いじゃなくて、城さんの生の声が聞きたいんですよ。城さんの言うように、全ての物をガラガラポンで壊せば、いろんな人達が恵まれるようになると思いますけど、単に大企業の日本型雇用を壊しただけだと、大企業に入れる人は有名大学を出た一部の人間に限られていて、結局、コップの中の嵐で終わるんじゃないか?という思いがあるんです。そこはどうですか?

:僕は大手企業に入るのが全体の15%程度という海老原さんの認識よりも、もうちょっと多いのではないかと思っていて、全体の3割程度はいると思っています。ただ、僕は一階建てと二階建てという言い方をしているんですけど、二階にいる人っていうのは声が大きくて政治力を持っている人なんですね。ある事業の中で優先的に予算を取ってくる人達。残った物を一階に回しているわけですよ。

原発だって、たとえば一機作って人件費いくらって決まってるわけですよね。それを結局は規模が大きくて経団連の会長も出すような東電が取っちゃうわけですよ。残ったお金で、非常に危険な仕事を下請け会社にやらせているわけです。だからリスクは高いんだけど、給料は安いという非常に歪んだ構造ができちゃうわけですよ。その1階建てと2階建ての構造は、維持できないのでいずれはなくなります。でも、それを自然死するまで待つのかっていうと、それには違和感がある。

海老原:そこの気持ちは分かるんです。ただ、それとは別次元の話を聞きたいんですが、残りの7割の人はどうやったら救われるんですか?

:うーん。彼らが就職することを考えるんであれば、大手なんか最初から受けちゃダメですよ。最初から通らないから。リクナビでもいいですけど、大学の就職課とかそこに行って、行けるころに行った方がいいと思います。だけど、この格差構造を支えていかないといけないと思っています。目先の就職のことだけを考えるんだったら、大手とかリクナビとかには頼らない方がいいと思います。

新卒採用にもいろんなメリットがある



池田:今回、我々は2ヶ月ぐらい、いろんな人のお話を聞いて思ったのは、就活という独特の休職活動は、ある種の合理性があると言えばあるんですね。みんなが“せーの!”で就職するから、そんなに能力がない人でもどこかに潜れ込めちゃう。就職率で言うと、イギリスのカレッジは3割くらいしか就職できない。でも、日本は3月末になれば9割はどこかに入れるんです。

海老原:卑近な意味で考えれば、僕もそう思っているんです。アメリカの大学生数十人に話を聞いたことがあるんですが、“すぐに就職する必要ないよ、2〜3年してすればいいんでしょ”って誰もが思っている。日本だと、就職できないってことで、こんなシンポジウムを開いたり、マスコミがこれだけ叩くから、“就職しなくちゃいけない”って盛り上がりが違うんですよね。

池田:企業も就活って括りでこれだけ集まってくるから、お互いにぶつけやすいっていうメリットはあるでしょう。

海老原:その部分はメリットですよね。

安藤:新卒採用をやめるべきだって、みんな騒いでますけど、中途採用も山ほど行っているんですね。新卒採用はいろんなメリットがあるんです。震災や原発の問題で、新卒採用を控えるんじゃないかって言われてますけど、会社の人事部だってキャパがあるから、一年間のタイムテーブルがあるわけですよ。どうしても中途採用ってのは、会社というよりは各チームのヘッドが自分の部下を個別に雇っているのであって、それに比べると新卒採用はいろんなメリットがあるんです。

年齢も22歳くらいで統一されてるから比較選別が容易なんですね。もし年齢がマチマチだと、優劣をつけるのは難しいし、毎月入社されると教育訓練はすごく大変だけど、4月に一斉に入社してくれれば同時にできる。それに、社歴と年齢が大体リンクすると。日本型の先輩・後輩みたいな形で、文化的には扱いやすいと、いろいろなメリットがあるからやってきたんです。メリットがあることを“やめろ!”と言っても、やめる動機がないとやめないんですよ。なので、新卒採用がダメというのなら、何がいいのかっていう代替案を出さないといけません。

池田:逆に言うと、就活についての不満は、求職する側からも企業の側からもあると思うんですよね。それについてはどうですか?

海老原:企業側の話で言いたいのは、これも城さんに近くなっちゃうんですが、価値観なんですよ。そこを壊さないといけないから、日本型雇用の中では、みんな有名企業に行きたい、大手に行きたい、となる。そこを壊せば、そういう気持ちがなくなれば、いろいろな会社にみんなが行くようになる。就活も、もっと楽になると思うんですよ。そういう意味で価値観は壊さなきゃならないですよね。

池田:この問題は就職の入り口のことだけじゃなくて、キャリア全体の絡みがあるわけですよね。確かに入り口だけ見ると、数が一遍に処理できて能率的だという面はあるにせよ、大学出たばっかりのスキルもはっきりしないところで、目分量で大学のブランドなんかで選んじゃうと、相当ひどいのを掴んじゃったりするわけですよね。そういう人達を窓際で養わなくちゃいけない。

逆に採用される側で見ると、学校で学んだ専門知識なんて関係なくて、3年になったばかりで成績表も見ないで採用されると、“何のために大学で勉強しているんだ”ってなりますよね。さっきも安藤さんも言ってたように、日本がどんどん成長している時代には便利屋で良かったのかもしれないけど、これから競争が厳しくなって、よりスキルが必要とされるときに、“大学にいってれば何かしら身に着けてるだろう”と考えてる大学側にも問題はあるのでは?


企業側から見た新卒採用のメリット



:企業側から見た新卒採用のメリットって、“いい加減でいい”ってことだと思うんですよ。今は職種別採用も増えてますけど、やっぱり今でも配属先が全然違うって泣いてる人も多い。新卒採用って、企業側がコスト負担することでこれだけ高い就職率を達成できている。でも、そのコストは10年後、20年後にも出てきて、そこそこいい大学を出て幹部候補生として入ったのに“何でヒラなの?”という30代が増えてる。私はもう入り口を分けた方がいいと思うんですよね。超エリートコースとそうじゃない一般のコースに。あとから変更できるにしても、とりあえず入り口で分けちゃった方がいい。

池田:原発の事故で見ても、入院した東電の社長が慶応大学の文科系の人だったり、原発のスペシャリストでも何でもない人が危機管理をしているという怖い状況になっちゃっています。これはワールドワイドの会社のキャリア形成ではあまり考えられないことが、日本では一般的になってますよね。

:ゼネラリストは終身雇用を維持する上では非常に楽なんですよね。どこにでもハマりますから。でも、本当の危機のときは厳しいかもしれない。

海老原:幹部候補って、いろいろ部署を回らないと全社視点ができないから、そういう幹部候補生だけやらせればいいんです。

安藤:平時では、そういう東電の社長みたいな人でもいいと思うんですよ。でも、危機のときに誰が対応するのか?それを決めておかなかったのが失敗の原因なのかなぁと思いますね。

海老原:ただ、敢えて言ってしまうと、働く人にとっては総合職っていうのは非常にメリットがあったりするんですよ。いろんな仕事をやりながら、自分に合った仕事を見つけられるじゃないですか。俺なんか全然違う仕事を10個くらいやって、たまたまマーケティングなんて、やりたくもない仕事に回っちゃったんです。そういうところで、使えなかった人を使えるところに回すということで、使えない人を減らす仕組みにはなってるんですよね。

池田:それは城さんの言葉で言うと、2階建てに潜り込んだ人は楽なんですよね。でも、大部分は潜り込めてないわけじゃないですか。そのギャップが非常に大きい。これは事実認識は海老原さんも城さんも同じだと思うんですね。いわゆる二重構造って言われるもので、一説では戦前からずーっと続いているわけです。この労働市場の構造ってのは、そろそろ何とかしないといけないと思う。

安藤:そう思います。さっき海老原さんおっしゃっていた、会社の中で部署を転々としているうちにハマるところが見つかるというのは、一長一短なんですね。会社の中で人をあてはめていくって話と、他の会社に行って別の仕事を探すというのは、どちらも合理性がある。今までは会社内部の労働市場でやってきたことがメインでした。それをいきなり外部労働市場に移行するのは、なかなか難しいってのはありますよね。

採用時の差別には仕方がない面もある



池田:安藤さんもおっしゃってたけど、ある種の批判になっちゃってる。厚生労働省の論法としては、“大企業の終身雇用型が望ましい”ってのがあるじゃないですか。市場原理主義者から労働者を守らなくちゃいけないんだ、っていう。でもそれは現実にはできないわけですよね。

安藤:トラックの運転手なども入れ替わりが激しいことから分かるように、“日本型の長期雇用”っていうのは、実は国内でもそんなに一般的ではないんです。お二方も言ってたみたいに、有名企業ばかりアタックして敗れるのはやめましょうと、思うわけです。自分に合った会社を探すのが大事なんです。100社も200社もエントリーシートを書いても、そこにいいメッセージを書けるわけがない。

それに普通の大学の人達は、採用時に差別があるのは、ある意味で合理的で仕方がない面もあるんです。100人の募集のところに2万も3万も応募が来たら、全員を等しくチェックするのは無理ですよね。採用実績がある学校が選ぶ傾向が出てきてしまう。相手のことがよく分からないから、少しでも情報があるところでやろうとすると学校名での採用になってしまうんです。そこを無理してこじ開けようとするよりも、自分が入れる、相思相愛になれる会社を探した方がいいんです。そして、そこでステップアップを考える。“大企業が入ったから安泰だ”と65歳までのほほんとしているんじゃなくて、途中で転職だって可能なんだから、現実を見ようよと思いますね。

池田:有期雇用の話でいうと、どうしても話が狭くなりがちですよね。アルバイトの人達をいかに規制して、“3年以上働いたら正社員にしないといけない”と、労働法の先生方も厚生労働省も、必ず労働者保護の話に行くんですよ。労働者を保護することには全く反対しないんですが、それ以外の職にありつけない人はどうするのか。もう一つの問題は、そういう風に厳しくした場合に、その人達を会社は雇い続けるのか。そういう大きな問題が抜けたままで、“労働者が可愛そうだ”って方に、話が狭いところに行ってしまう。

海老原:フレキシビリティが必要なんですよ。いつでもクビを切れるためには、クビを切った後の保障が必要になります。それでいつでもクビを切れるようになる。首を切ったあとに、首が繋がればいいわけなんです。

池田:フレキシビリティで言うと、いわゆる“北欧型にしろ”って議論はあるけど、個人的にはちょっと難しいんじゃないかと思ってるんです。物の本や論文とかを読んでみると、スウェーデンのやり方を見てみると、むしろ競争社会ですよね。ボルボが調子悪くなったら、政府は救済しないと。クビを切った労働者が他社に行って就職することは支援するけど、会社は救済しない。日本は会社を救済して、労働者も保護して、“みんなで仲良くやってきましょう”ってやっちゃうから、どこかで無理が来ちゃうんですよね。

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