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「性愛用の女」との同居で「生活用の女」にされた妻はその見返りを得たのか?(ラブドールを家庭に持ち込んだ夫についての感想)

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ラブドールを恋人代わりにする男性のことを初めて知ったのは、10年くらい前にあった某ブログ。彼女との「愛の生活」を綴った日記が面白いということで、一部で人気だった。私も一時期読んでいた。最初に、これ「ピグマリオン」だなと思った。古代ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』に登場する、キプロスの王ピグマリオン(ピュグマリオン)の物語だ。

生身の女性たちに失望したピグマリオンは、完璧な女性を求めて彫像作品を作った。その出来映えがあまりに見事だったので、彼はすっかり彫像の女性に恋をしてしまい、毎日のように語りかけ、贈り物をし、ベッドを共にし、ついに彼女は自分の愛に応えてくれたのではないかと思うようになった。その狂おしい思いと彫像の素晴らしさに打たれたヴィーナスが、褒美として彼女に命を授けてくれた。

SF小説『未来のイヴ』から映画『空気人形』まで、さまざまな小説、映画などのベースとなっているこの物語はある意味、ヘテロ男性の究極の夢なのだろう。「<女>は男の症候である」というラカンの言葉を呟きたくなる。

ラブドールに真実の愛見つけた男たち、「僕にとっては人間」:AFPBB News

最近話題になった上の記事に取り上げられていた「尾崎さん」に集中していた批判は、既婚者がラブドールに嵌っていること自体より、あの記事の中の「尾崎さん」の言葉とそこから類推される背景に向けられていたと思う。

妊娠、出産した妻が育児に追われ、セックスレスになる夫婦はよくあるらしい。妻には疲労に加え、一時的に性欲が失われるという話も聞いたことがある。で、夫が風俗に通い出したり浮気をしたりというのもありがちなので、ラブドールもそのパターンになる。男が「生活用」(家事育児を任せる)と「性愛用」(あらゆる楽しみを共有する)に女を使い分けているということだ。

昔だと、夫と妾の関係を正妻が黙認している例がよくあった。それは普通、夫の経済力で妻には何不自由ない生活が保証され、夫は対外的にも家庭内でも妻を立てて成り立つものだった。現代でも夫の愛人の存在を黙認するのと引き換えに、経済的保証を得るということはありそうだ。

まして、一つ屋根の下で夫の愛人と暮らすのであれば、妻には相応の見返りがなければならないだろう。もし、何の見返りもなしに愛人の存在や妻妾同居に妻が耐えている状況があるとしたら、さまざまな要因から女の側に経済的な独立が難しく、男の側がそこにつけこめる構造があるからだ。

ラブドールとの同居状態を「尾崎さん」の妻が受け入れざるを得なかったのは、家を出ても行くところがない、子どもを抱えて経済的に自立できる見込みがないと判断したからかもしれない。そうだとすれば、夫もそれを充分知っていて、「生活用」と「性愛用」を同時に確保できる今の状況を享受してるということになる。*1

ラブドールは妾や愛人(人間)ではなくただの人形だからその喩えはおかしいという人もいるかもしれないが、「尾崎さん」にとってそれは「人間」であり愛情を注げる唯一の「女」なのだから、彼の妻が、自分は「生活用の女」としてハウスキーパーの役に押し込められ、夫婦の交流のすべては「性愛用の女」であるラブドールに独占されている、と感じたとしても不思議ではない。

では彼女は、夫からどれだけの見返りを受け取っているのだろうか?

「尾崎さん」は、セックスレス以外にも、仕事から帰ってきた自分の愚痴を黙って聞いてくれないなど、妻への不満があったことをほのめかしている。結局その問題を2人で話しあって解決するということができなかったわけだし、この点に関してはどっちが悪いというふうには、外部からは決めつけられない。

なのに「尾崎さん」は「性愛用」の女を無理矢理家庭に持ち込んでおいて、その見返りとなるものを妻に与えていないようだ。

せめて取材に対して「妻の理解のお陰でこういう生活ができています」と対外的に妻を立てておけばよいものを、自己正当化の言い訳に終始し、更には「最近の日本の女性は、ちょっと冷たい部分も増えてきている。心が汚いというのか、人に対して冷たい」などと女性全体への批判までしている。

古いことを言うようだが、女を使い分け、それを女に納得させたいなら、それなりの「甲斐性」ってものが必要なんだよ。それもないのに勝手なことして偉そうなこと言ってんじゃない。いざとなれば妻は妾を殺すこともできるんだからせいぜい気をつけろ。

私が「尾崎さん」という男性について思うことは以上だ。

(男女関係というものについて根本的にわかってないとか、こういう「見返り」を期待する考え方こそが愛を潰すとか、逆に「強制異性愛主義的男女二元論」に陥っているとか、妥協して暮らしている夫婦はいくらでもいるとか、いろいろ異論はあるだろうけど、あの記事から読み取れる範囲で言えば私は、鈍感で自己中な夫、父を持ってしまった家族が気の毒でならない)

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