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「誤読」でバレる 伸びる人落ちぶれる人

(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平)

誰でも、いい間違い、聞き間違い、覚え間違いはある。だが、その間違いに気付きづらい人がいる。塾講師の筆者は「間違いを素直に認められない性格だと、知識の吸収が遅くなり、誤読に気付きづらい」という。そして「間違いを指摘してくれる人が、周囲にいるかどうかが重要」と指摘する。はたして、落ちぶれるリスクがある「裸の王様」度の高い人物とは?

■なぜ政治家はいつも「誤読」するのか?

支持率が“危険水域”にまで達している安倍政権。そういえば、安倍晋三首相は2017年の年初からケチがついていた。1月の参議院本会議にて民進党の蓮舫代表の代表質問への答弁の中で「訂正云々(ウンヌン)」を「訂正デンデン」と読み間違えたことは記憶に新しい。「首相が云々(ウンヌン)を伝伝(デンデン)と誤読?」と話題になった。

現政権には、この首相の上をいく人がいる。たとえば麻生太郎副総裁・財務相。「踏襲(トウシュウ)」を「フシュウ」、「未曾有(ミゾウ)」を「ミゾウユウ」、「頻繁(ヒンパン)」を「ハンザツ」などと読んだ“前科”がある。

さらに、「ヤンキー先生」こと義家弘介文部科学副大臣の誤読も相当なレベル。国会で「便宜(ベンギ)」を「ビンセン」、「出自(シュツジ)」を「デジ」と読んだことがある。

権力を持つ人物ほど、誤読を積み重ねる

誤読をしているのは政治家だけではない。

わたしはセミナーで、ある有名企業トップのこんな熱弁を耳にしたことがある。

「いいですか、みなさん! 企業の多くはジュンプウマンポに成長してきたわけではありません!」(順風満帆=ジュンプウマンパン)。

なぜ、このような「権力を持つ人」が誤読を連発するのか。あれこれ考えてみたら閃いた。実は権力を持つ人物であればあるほど、誤読を積み重ねる可能性が高くなるのではないか、と。その理路を簡単に説明しよう。

■「誤読」の量は「裸の王様度」に比例する

大人であれ、子どもであれ、自分で誤読を改める手っ取り早い方法は、周囲の人たちが自身の誤読に対して、に「その読み方って○○が正しいんだよ」と指摘してもらうことだ。すこし恥ずかしい思いを抱きつつ、それをきっかけに以後その漢字の読みに気をつけていく……。これを繰り返せば、誤読している漢字の総量を徐々に減らすことができる。

だから、手厳しい見立てをすると、誤読を繰り返す権力者のそばには、誠意を持っていさめてくれる人がいないのだろう。すなわち「裸の王様」と化している可能性が高いのだ。

その人のミスに気づいたけれど、畏れ多くて指摘することができない。あるいは、ミスを指摘すると逆ギレされそうなので気づかぬふりをしている……。周囲がそんなふうに委縮(あるいは無視)してしまうと、当人は誤読に気づかないまま、そのことばを人前で連呼しつづけることになる。そして、相変わらず周囲は「その読み方って違うよな」と内心あきれながらも、沈黙を決め込むのだ。

そう考えてみると、「安倍一強」と言われ、周囲はイエスマンばかりとの声もある首相の「裸の王様」の兆候は年初にすでにはっきりと現れていたのかもしれない。

誰であっても、これまで当たり前のように(口にするにせよしないにせよ)「そう読むのだ」と思い込んできているから、「誤読」は自らそれと気づくことが難しい。それだけに「たかが誤読じゃん」と笑って済ませられる問題ではないことが分かる。

あなたはどの漢字を読み間違えているのだろうか? そして、わたしはどの漢字を読み間違えているのだろう?(おぉ、こわい……)

中学入試問題 漢字の「読み」に挑戦 

さて、わたしは平生、中学受験専門塾で小学生に国語を指導している。以下、10問の読み取り問題はすべて今年度(2017年度)の首都圏の私立中学校入試で出題されたものだ。

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▼( )内の漢字の読みをひらがなで答えなさい。
(1)人と意見を(異)にする。【学習院女子中等科(A入試)】
(2)(見目)うるわしい人。【学習院女子中等科(A入試)】
(3)(柔和)な性格。【獨協埼玉中学校(第1回)】
(4)旧友と(杯)をかわす。【獨協埼玉中学校(第1回)】
(5)(鋼)のような肉体を持つ。【東京農業大学第一高等学校中等部(第1回)】
(6)一度でも会えれば(本望)だ。【東京農業大学第一高等学校中等部(第1回)】
(7)医療は(仁術)ともいわれる。【日本大学藤沢中学校(第1回)】
(8)地震により(尊い)命が失われた。【日本大学藤沢中学校(第1回)】
(9)一冊の訳書を(著す)。【広尾学園(第1回)】
(10)(筆舌)につくしがたい。【広尾学園(第1回)】
※解答は本文末に記載。

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■「間違い」を素直に受け入れることが大切 

難なく正解できただろうか。

大人には比較的やさしいレベルかもしれない。でも、小学生となると、その出来不出来に大きな差が出てくる。この差はそれまでの読書量や学習量が大きく関わっているのは言うまでもない。とりわけ辞書を引く癖が身についている子は漢字の読み取り能力が高い。また、親の子に対する接し方も、読み取り能力を左右しているように感じるのだ。

塾で指導していると、知識をどんどん吸収する子に共通する特徴に気づく。その筆頭に挙げられるのが、他者(塾の場合は講師に当たる)の直言に対して、自らの間違いを素直に認め、すぐに軌道修正できるスキルを有している点だ。

こういう子は漢字の読みで苦労することは少ない。そして、そんな子の保護者と話をしていると、柔軟な性格の方だなあと感服させられることが多いのだ。

わたしが経営している中学受験専門塾では、講師と保護者が対面して話す機会が多くある。季節ごとの面談会はもちろん、受験生の保護者とは子の受験校が最終決定するまで何度も面談をする。

和気あいあいとした雰囲気でおこなわれることがほとんどだが、ときにはシビアな話になる場合(成績や受験校決定の段階など)もあるが、知識をどんどん吸収する子の保護者ほど、塾側の話をじっくり聞き、その意見に納得するや否や、それまで抱いていたご家庭の方針をフレキシブルに変更してくれるのである。

子は親の鏡、親は子の鑑 

わたしが言わんとしていることはもうお分かりだろう。

「子は親の"鏡"」であり、「親は子の"鑑"」である。子は「鏡」のように親に似る。だからこそ親は「鑑」、つまり子の手本になる存在でなければいけない。

因果関係があると断言できる性質のものではないが、子どもの漢字の誤読があまりにも耳についたら、保護者自身がまず自身の日々のふるまいを熟考・反省すべきかもしれない。ひょっとしたら親が家庭内で、前述した漢字の誤読を繰り返す「権力者」のようになっているのかもしれないのだ(だから、子どもも誤読がいつまでも直らないのかもしれない)。

家族をはじめ周囲の意見を受けつけないオーラを日頃から放ってはいないか……。自分に厳しいことばをかけてくれる人はどれくらい身近にいるのか……。

読者の皆さんに対して高言を吐いているわたしだが、先日こんなことがあった。幼稚園児の息子がソファにだらしなく寝そべりながら、母親に「ねえ、ごはん、まだあ?」などとのたまった。思わず頭に血が上って説教しそうになったわたし。が、はたと立ち止まった。

これって普段のわたしの姿そのままではないか。

「子は親の鏡」「親は子の鑑」……そう、わたしも肝に銘じよう。

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▼解答
(1)こと (2)みめ (3)にゅうわ (4)さかずき (5)はがね (6)ほんもう (7)じんじゅつ (8)とうと(9)あらわ (10)ひつぜつ

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