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蓮舫氏の『二重国籍』は問題なし。説明責任は法務省にあり - 奥田安弘×荻上チキ

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民進党・蓮舫代表の国籍をめぐる問題が再び注目を集めている。そもそも「二重国籍」であることは問題なのか? そして、蓮舫代表が国籍資料を公表することにどういった影響があるのか。中央大学法科大学院教授・奥田安弘氏が解説する。

2017年7月13日放送TBSラジオ荻上チキ・Session-22「民進党・蓮舫代表の『二重国籍』は問題なし。説明責任は法務省にあり」(構成/大谷佳名)

■ 荻上チキ・Session22とは

TBSラジオほか各局で平日22時〜生放送の番組。様々な形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」などなど柔軟に形式を変化させながら、番組を作って行きます。あなたもぜひこのセッションに参加してください。
番組ホームページはこちら →http://www.tbsradio.jp/ss954/

“二重国籍の政治家”は違法?

荻上 ゲストをご紹介します。『家族と国籍――国際化の安定のなかで』(明石書店)の著者で、国際私法がご専門の中央大学法科大学院教授・奥田安弘さんです。よろしくお願いします。

奥田 よろしくお願いします。

荻上 今日は、民進党の蓮舫代表の国籍資料公表をきっかけに「国籍」について改めて考えたいと思います。まず、蓮舫代表の国籍に関するこれまでの説明をまとめます。

蓮舫氏は1967年に台湾籍の父と日本人の母の長女として日本に生まれる。当時の日本の国籍法では父親の国籍しか取得できなかったため、台湾籍として日本で暮らした。日本と台湾が断交した1972年以降は中国籍の表記となり、その後1985年に日本の国籍法が改正され、父親だけでなく母親が日本人の子どもについても日本の国籍を取得することができるようになった。その経過措置として、改正法の施行前に生まれた蓮舫氏も、1985年1月21日、17歳の時に届け出により日本国籍を取得した。

蓮舫氏は同じ時期に父親と大使館に相当する台北駐日経済文化代表処を訪れ、台湾籍を放棄する手続きをしたと記憶し、過去にそう説明していたが、昨年9月6日の会見で「代表処での父親の台湾語が分からなかったので、実際にどういう作業が行われていたか分からなかった」と説明を修正。同じ日に、念のため台湾国籍を放棄する書類を提出し同時に国籍について台湾側に問い合わせたところ、9月12日に「戸籍が残っている」との回答があった。その後9月23日の会見で、台湾当局から台湾籍放棄の手続きが完了し、その証明書が届いたと明らかにした。

去年9月に台湾国籍が残っていることが判明して以来、蓮舫代表の国籍を問題視する一部の声はやまず、民進党内においても「二重国籍問題が支持率低迷の原因」と指摘する議員が出てきました。そうした状況の中、おととい開かれた民進党の執行役員会では「蓮舫代表が自身の戸籍謄本を公表する考えを表明した」と、会合に出席した複数の党関係者が明らかにしました。

この報道に対してはさまざまな反応があり、蓮舫代表は7月13日の定例会見で次のように述べ、戸籍謄本の全面開示は否定しつつ、7月18日に自身の国籍に関する関連資料を公表する意向を示しました。

「我が国においては、戸籍は優れて個人のプライバシーに属するものであり、“差別主義者”や“排外主義者”の方々に言われて公開するようなことは絶対にあってはいけないと思っています。また、その前例にしてはいけないとも思っています。

ただ、野党第1党の党首として安倍総理大臣に強く説明責任を求めている立場から、きわめてレアなケースではありますが、戸籍そのものではなく、すでに私が台湾籍を有していないことが分かる部分をお伝えする準備はしております。

ただ、これは多様性を否定するものでもなく、また、わが党の仲間が私をどうのこうのと言うものでもありません。私は『多様性の象徴』だと思っています。その部分では、共生社会を作りたいという党の理念に一点の曇りもありません。ただそこに対して、若干の曇りが私自身の二転三転した説明にあるという疑念がなお残っているのであれば、それは明確にさせていただきたい。」

これを受けて、Twitterでは多くの民進党議員の方からのコメントがあり、たとえば今井雅人議員は、「都議選の大敗を受けて、何をすべきか。課題は沢山あるが、まずは、蓮舫代表の二重国籍問題を解決することだ。この問題をうやむやにしてきたから、うちの党はピリッとしないのである」と発言。

一方で、有田芳生議員は「蓮舫代表が戸籍を公開して何が明らかになるのか。国籍選択日が記入されているというが、それがどんな意味を持つのか。政党の代表が戸籍というもっともプライバシーに属することの公開を強いられて、それが一般人へのさらなる攻撃材料になることは目に見えている」と批判しました。

それに対して、原口一博議員は、「公職選挙法による立候補の国籍要件は指摘されている通り、偏に日本国籍を有すればいい」と発言する一方で、「戸籍開示は他者から強いられる性質のものでは断じてない」と言いつつ、しかしながら説明することの重要性は指摘されていました。寺田学議員は、「都議選の敗因を代表の二重国籍問題とする意見が党内にあるが、そのピントのずれが根源的な敗因を作り出していると思う。

これは我々自身の問題だ」として、そもそもこうした論点になっていること自体が問題だと指摘しています。小西博之議員も、「戸籍の開示ではなく、口頭の説明で十分ではないか。政治的責任から明らかにすべきと考える内容については弁護士に確認してもらい、説明の真性を保証して貰えば十分だ」と述べるなど、さまざまな反応が出ています。

さて、こうした一連の反応も含め、奥田さんはどのようにお感じですか。

奥田 戸籍の開示という話が出てきたこと自体、非常に違和感を覚えます。たとえば、1976年までは、戸籍は「原則公開」でした。しかし、それは誰でも他人の戸籍謄本を取れるという意味であって、全国民に見えるような状態に置くという意味ではありません。仮に他人の戸籍謄本を取った人がそんなことをしたら、当時でも、法的責任を問われたでしょう。

また、1976年に戸籍が「原則非公開」となったのは、戸籍謄本によって出自が明らかとなり、就職で不利になるとか、婚約が破談になるというようなことが起きたからです。しかし、今のように、テレビやインターネットで公開されるというのは、同じ「公開」でも意味が全然違います。

戸籍謄本というのは、旅券の発給を受ける際に、日本国民であることを証明するためであったり、本籍地以外の市町村で婚姻届を出す際に、独身であることや婚姻年齢に達していることなどを証明したりするために、役所に提出するものです。それを会社の人事に使ったり、結婚相手の素性を知るために使ったりするのは、プライバシーの侵害であるだけでなく、本来の目的から外れた制度の乱用と言えます。

ましてや全国民に公開するのは、他人から強制された場合だけでなく、仮に本人が自発的に行ったとしても、制度の根幹を揺るがす行為だと思います。

荻上 そもそも仮に二重国籍だった場合、政治家、あるいは野党第1党の党首や総理という立場にはなれないのでしょうか?

奥田 いいえ。現在の法律を適用した場合には何の問題もありません。昨年10月に日本維新の会が「国籍選択をしていない者は被選挙権がない」「管理職公務員になれない」といった内容の法案を出しましたが、審議未了で廃案となりました。こうした法案が出されるということからも、現在の法律では日本国籍以外に外国国籍を持っていても、それは政治家や国家公務員の欠格事由にはならないことが分かると思います。

ただし、外交官だけは、外交特権との関係で二重国籍が欠格事由とされていますが、それでは外務大臣も、というわけではありません。

荻上 今回、選挙の際に二重国籍であると公職選挙法に違反するのではないかという議論もありましたね。その中で、「これまで二重国籍であることを認識しつつも自分は日本人だと宣伝していたことが、有権者を欺くことになるのではないか」という指摘がありますが、二重国籍であっても日本人ではあるわけですよね。

奥田 公職選挙法では日本国籍のみが要件であり、外国国籍を持っていても問題とはなりません。立候補の際に選挙管理委員会に戸籍謄本を見せる手続きがありますが、その場合の戸籍謄本は日本国籍があることだけの証明なのです。ですから、二重国籍であるかどうかを調べることはありません。ましてや、選挙管理委員会が戸籍謄本を公表するなどということはありえません。

たしかに立候補した人が経歴などを詐称した場合、禁錮・罰金の刑に処せられますが、そこでいう経歴とは、「過去に経験したことで、選挙人の公正な判断に影響を及ぼすおそれのあるもの」とする最高裁判決があります。一般的には、学歴の詐称などがこれに当たるでしょう。しかし、仮に蓮舫氏が二重国籍であったとしても、それを学歴の詐称などと同列に扱えるでしょうか。

投票に影響を与えたという人がいますが、それを言えば、候補者の個人的趣味でさえ投票に影響を与えたという人が出てくるかもしれません。法律がそんなことまで含める趣旨であったとは思えません。また、昨年秋に蓮舫氏に対する告発状を東京地検に出した人がいたようですが、受理されたという話は聞いていません。

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