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「出戻り人事」パナが樋口専務に頼る事情

(ジャーナリスト 山田 清志)

社費で留学しながら、帰国後にすぐ外資へ転職した「不義理」の人間を、たった4人の代表取締役の1人として呼び戻す――。今年4月、パナソニックは日本マイクロソフトの元社長・樋口泰行氏を、代表取締役兼専務役員として招いた。樋口氏はパナの元社員。約25年ぶりの古巣復帰となる。樋口氏は、6月19日に報道関係者との懇談会を開いた。「出戻り」の理由を、樋口氏はどう語ったのか――。

外資系を転々としダイエーの再建に尽力

「“出戻り”や“異例の人事”という報道もあるが、私自身もびっくりの人事である。日本の伝統的な企業で働いた経験があると、最後は日本の企業で働きたいと考えるケースも多いようだが、さまざまな理由でなかなかそうはいかない。そうした人たちにとって、1つの例になればいいという気持ちもある」

パナソニック専務役員で、社内カンパニー「コネクティッドソリューションズ(CNS)社」社長の樋口泰行氏は6月19日、東京・有明にあるパナソニックセンター東京の会議室で報道関係者と懇談会を開き、こう話し始めた。


パナソニック専務役員、社内カンパニー「コネクティッドソリューションズ社」社長の樋口泰行氏。

樋口氏の経歴は、実に多種多様で、「渡り鳥人生」といってもいいだろう。1980年に大阪大学工学部を卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。配属先は溶接機事業部で、アーク溶接機の設計を担当した。その後、情報機器事業部に異動し、IBMのワークステーションのOEM事業を担当する。奇しくもその2つの事業部は、樋口氏が現在担当するCNS社に所属している。

10年後の90年には、社費でハーバード大学経営大学院に留学。しかし、卒業して戻ってくると、あっさりと松下電器を退社し、92年ボストンコンサルティンググループに入社。「少し暴れたいという若気の至りもあり、大阪から東京に出てきた」と当時を振り返る。

その後、94年にアップルコンピューター、97年にコンパックコンピューターに移り、2003年、45歳の若さで、コンパックを買収した日本ヒューレット・パッカードの社長に就任した。2005年には産業再生機構の要請を受けて、経営再建中のダイエー社長に就任。林文子会長(現横浜市長)とともに不採算店舗の閉鎖や食品部門の改革など立て直しに尽力した。

07年になると、今度はマイクロソフトの日本法人に経営トップとしてスカウトされた。当時の同社は基本ソフトの「Windows Vista(ウィンドウズ・ビスタ)」が思うように伸びず、経営のテコ入れに迫られていた。そんな中で樋口氏は国内IT企業との関係を強化して企業向けビジネスの拡大に取り組んだ。その後、15年に会長へ就任。そして17年4月パナソニック専務役員として出戻ってきた。

「外資系でやっているとかなり疲れる部分もあり、そろそろスローライフを送りたいと思っていたタイミングに、今回の話をもらった。光栄な話であり、力になれるのであればと思ってお受けした。新卒で入社後12年間のパナソニックの経験があることと、外資系を経験して物事をシャープに考えることができるという両方があったので選ばれたのだろう」(樋口氏)

樋口氏が指揮を執るCNS社は、BtoB事業を主体とするAVCネットワーク社から衣替えをした社内カンパニーである。流通・物流分野のシステムや製造のほか、航空機向けのシステム、エンターテインメントなどを担当している。分野は幅広く、パナソニックの発展のカギを握る社内カンパニーのひとつだ。しかし、2016年度の売上高は1兆407億円、営業利益は296億円と前期に比べて394億円減の減収減益で、多くの事業が収益改善事業に位置づけられている。それだけに、早期に利益を稼げる体質へと変えることが求められている。

「私に与えられた役割は“変革”である。CNS社は旧パナソニック電工および車載系部品を除いたパナソニックのBtoB事業の集合体であり、そこに置いてしっかりとしたビジョンをつくり、変革の方向性を打ち出すことが大切だ。パナソニックとしての位置づけをどうするのか、差別化の源泉はどこにあるのかといったビジネスモデルも定義していかなくてはならない」(樋口氏)

ただ、その変革について「劇薬のようなリーダーが入ってきて変革を行えば、短期的な増益効果はあるかもしれないが、社員に魂が入らないと本当の成果は出ない」と話す。これは樋口氏がこれまでいろいろな会社で経験してきた中でたどりついた結論だという。

「社員が納得する形で『この人が言うことであったら、ぜひやりたい』と共鳴するリーダーがやらなければ、本当の意味での変革はできない」(樋口氏)

ベンダーから問題を解決するパートナーへ

具体的な事業改革の方針については、勝てるエリアや立地のいいエリアを探すことと同時に、差別化できる要素技術を引き続き追求するという。そのうえで、組み合わせでの付加価値を重視し、ハードウェアだけでなく、ソフトウェア、サービス、ソリューションを組み合わせた提案を進めていく。

「最後まで逃げない、販売した後も責任を持つといったパナソニックの企業姿勢を生かしたい。そこに生きる道があると信じている。出来合いの製品を手渡すだけで解決する場合もあるが、さまざまなものを組み合わせて、現地で調整し、定期的に保守までを請け負うところに価値が生まれる。そこにこそ差別化の源泉があり、単なるベンダーから困りごとを解決するパートナーへ変革することを目指す」(樋口氏)

変革の手始めとして、今年10月にはCNS社の本社を大阪から東京へ移す。ちょうど現在本社のある南門真地区が売却予定で、大阪市内に移る計画だったので、「それならば東京に移転したほうがいい」となったそうだ。

パナソニックは創業100周年を迎える2018年度に売上高8兆8000億円を目指している。達成のため、津賀一宏社長が期待を寄せるのが、車載関連とCNS社だ。期待通りの成長ができるかどうか。数々の経験を積んできた樋口氏の経営手腕に注目が集まっている。

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