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【特別寄稿】津田大介氏「Gov 2.0 Expo」速報レポート2日目

「Gov 2.0 Expo」2日目は、1日目と比べてセッションの数も増え、1セッションあたりの時間が90分から50分と短くなったこともあり、非常に盛りだくさんな内容となった。

午前中はライトニングトーク形式のキーノート。ここでは目立ったものを紹介する。


●キーノート
●Government as a Platform for Greatness / Tim O'Reilly (O'Reilly Media, Inc.)

2日目キーノートのトップはGov 2.0 Expoの生みの親であるティム・オライリーの講演からスタート。内容的にはこれまでの講演やオープンガバメント化に対する彼の文章などを踏襲したもので、新鮮味はなかったがコンパクトにまとまったわかりやすい講演だった。
以下に講演要旨を掲載する。

(講演要旨)
政府はこれまでの形態を変え、政府自体がプラットフォームにならなければいけない。

今までの政府は「自動販売機」のようなものだった。市民がお金を払うことでサービスを享受するイメージ。しかし、Gov 2.0は政府が“enabler”(実現する人・もの・要因)になる必要がある。

Appleは自ら“enabler”になり、AppStoreというプラットフォームを立ち上げたことで、20万個以上のアプリがリリースされた。20万個のアプリの中でAppleが作ったアプリは20個以下だ。

天候の情報は政府が公式に提供しているから、その情報を加工してテレビ局やウェブが天気予報を独自に作ることができる。そういう発想がGov 2.0そのものだ。

義務教育やマーシャル・プラン、レーガンのGPS技術を導入など、過去に実現された偉大な政策を振り返ってみると、いつも大胆な発想の転換が求められてきた。偉大な政策を達成するには時間がかかるし、大胆でなければいけない。勇気が必要になるのだ。

現在の米国は、温暖化問題や医療改革、教育問題など様々な問題を抱えている。そうした問題に対処するには「今あるシステムをアップグレードする」という発想を捨てて、一から作るという発想が必要になる。Gov 2.0もそういうものだ。



●The Next Frontier: Embracing the Cloud / Linda Cureton (NASA)

NASAでCIOを務めるLinda Cureton氏の講演はNASAのクラウドコンピューティングへの取り組みと、SNS活用について触れられた。

NASAは米国の省庁の中でかなり早い段階から「Nebula」というクラウドコンピューティングのシステムを導入した(※「Nebula」とはラテン語で「Cloud」という意味)。その結果、コストと時間が削減され、システムに柔軟性がもたらされたという。

特に時間削減の効果は意味が大きく、「その分戦略的な将来のプロジェクトにかけられるエネルギーが増えた」そうだ。

一方、Cureton氏は、セキュリティやベンダー・ロックイン(サービスや製品ありきで特定企業の制約を受けてしまうこと)といったクラウドコンピューティングにまつわる問題を指摘。「クラウドは万能薬ではないが、何か問題を解決しようと思ったときに、クラウド的なソリューションを考えることは重要」と、選択肢の一つとしてクラウドが有用である認識を示した。


●Cloud Computing Services: Finding a Solution for Over Budget, Understaffed Agencies / Tim O'Reilly (O'Reilly Media, Inc.), Dave Girouard (Google Enterprise), Randi Levin (City of Los Angeles)

ロサンゼルス市のCTO・Randi Levin氏と、Googleエンタープライズ部門のDave Girouard氏による講演。昨年から今年にかけてロサンゼルス市が電子メールのシステムをGmailベースのものに全面移行した背景が説明された。

電子メールシステムをGmailベースの「Goverment Cloud」に変更する案がロサンゼルス市議会で認可されたのは2009年の10月のこと。Googleと5年契約を結び、約3万人の市職員のメールがGmailベースに変更された。現在は電子メールのみだが、今後はGoogle Appsも導入されるそうだ。

現状の見積もりではクラウド(Gmail)導入によってハードコストが500万ドル削減されるとのこと。また、導入による効率化で削減される予算は2000万ドル。合計2500万ドルのコスト削減が見込まれているそうだ。

Gmailを導入した大きな理由は、これまで使っていた電子メールシステムが職員に評判が悪かったという部分が大きいという。

「古いシステムをアップグレードするオプションもあったが、Gmailを導入するよりそちらの方がお金がかかることがわかった。また、iPhoneユーザーの市職員から『メールを同期できないのが不便』というフィードバックも多かったので、Gmailを選択した」(Levin氏)

GoogleのDave Girouard氏は今回の導入を振り返り、「そもそもクラウドコンピューティングに対して誤解があることがわかった。自分が管理するハードでないところにデータを置くことに恐怖感があったり、一私企業にデータを預けることへの不信感が思った以上にあった」とクラウドに対する世間の厳しい認識を指摘。その上で「Googleの場合、技術力と翻訳力が強い。そこでほかのクラウドサービスと競争力を付けていって、ベンダーとしてロックインしてもらえればいいと思っている。提供している商品の質が良いからロックインしてもらえる。そうなりたいと思っています」と語った。


●New Opportunities and Responsibilities in the Cloud / Brad Smith (Microsoft)

Googleに続いて登場したのはMicrosoftのBrad Smith氏。クラウドコンピューティングで後れを取ったMicrosoftが現在はクラウドにシフトしていることを強調する講演となった。

Smith氏は冒頭「クラウドはコスト削減につながる」と前置きした上で、Microsoftのクラウド技術が導入された2つの事例を紹介した。

1つはマイアミ市で導入された犯罪警報システム。これはMicrosoftがプレゼンを行い、マイアミ市が導入を決定するまでわずか8日間しかかからなかったという。もう1つはNASAが所有するイメージ画像のライブラリシステム。これまでNASAのイメージはアリゾナ州立大学が保有していたが、実際に大学まで行かなければそのイメージを見ることができなかった。それをMicrosoftがクラウドのプラットフォームを提供することで誰でもアクセス可能になったそうだ。

Smith氏はまたクラウドコンピューティングが現在抱えている問題についても指摘した。

「インフラは大きな問題。現在ブロードバンドと呼ばれている環境が実際には高速ではなくなってきた。さらなる高速化を考えなければいけない。また、プライバシーとセキュリティの問題もある。特に法律の話は深刻。クラウドが進めば進むほどオンラインで犯罪行為が起きたときに、どこの法律で裁くかという問題が出てくる。各国や、州ごとにオンラインにおける法律の足並みを揃える必要があるのではないか」


●Unlocking Real-Time Data / Joshua Robin (Massachusetts Department of Transportation)

マサチューセッツ州運輸省のイノベーション&スペシャルプロジェクト部門のディレクター・Joshua Robin氏からはマサチューセッツ州で実際に行われたオープンデータの試みが紹介された。

マサチューセッツ州は公共の交通インフラ、特に公共バスの評判が悪い。理由は単純で、州の運輸省が時刻表を開示していないため、バスの利用者がバスがいつ来るかわからないからだ。こうした市民からの不満を受け、09年の9月に時刻表をウェブで公開するようにしたら、すぐにスマートフォン向けの時刻表アプリがユーザーによって作られた。

Robin氏は「自分たちがコストをかけてアプリを作るより、データをオープンにしただけでコストをかけずにユーザーのサービス向上ができた」と、胸を張った。


●Transparency Is Not Enough / danah boyd (Microsoft Research)

Microsoft Researchの研究者でハーバード大学のフェローを務めるdanah boyd氏の講演。彼女は講演の前置きとして、以前親戚が性的虐待者によって殺害されたことに触れた上で、米国の性犯罪者データベースの使われ方に対する懸念を示した。

米国は性犯罪を犯した人間のデータの住所などが公開され、多くの人がアクセスできるようになっているが、boyd氏は「性犯罪といってもいろいろなケースがある。州によっては16歳同士のカップルが普通にセックスしただけで捕まり、性犯罪者として記録され、その後の生活が大幅に制限されるような例もある」と、性犯罪者データベースに潜む運用の問題を指摘。「性犯罪者に関するデータの透明性を高めるのは大いに結構なことだが、データを公開するだけでは不十分。求められるのはデータの信頼性と運用。公開されたデータを適正に解釈するためのツールを市民に与えなければいけない」と、データのオープン化以降に求められるサービスの必要性について言及した。


●Open Government Ninja 101: Skills, Strategies, and Stealth / David Hale (National Institutes of Health)

国立衛生研究所で「Pillbox」というプロジェクトマネージャーを務めるDavid Hale氏の講演は「Ninja」という単語が頻繁に登場するユニークなものとなった。

○Pillbox
http://pillbox.nlm.nih.gov/

Pillboxは世間で流通している薬をビジュアル化して、誰でもわかりやすく調べることができる無料のネットサービス。Hale氏は「Pillboxを実現したのは多くの“Ninja”がいたおかげ」と、プロジェクトに関わった人たちを独特の表現で賞賛した(※米国では近年「Ninja」という存在、単語の人気が非常に高くなってきており、単純にクールなものを賞賛するようなときに「Ninja」が使われることもあるそうだ)。

元々国立衛生研究所や国立医学図書館には薬に関するデータが大量にあった。しかし、素人が見ても何が何だかわからないようなものが多く、フィルタリング技術を開発する技術者(Ninja)のおかげで、データが整理されたという。

Hale氏はPillboxを実現する上で重要だった要素として「コレクティブ・ラーニング」を挙げた。これは専門家同士がお互いに経験を共有し、学習していくプロセスのこと。行政機関の人間もこのプロセスに参加し、その中には2007年からワシントンDCのCTOを務め、2009年3月にオバマ政権のCIOに任命されたVivek Kundra氏も「Goverment Ninja」として含まれていたそうだ。

「必要なのは目的を達成しようという使命感と、それを実現するためのツール。数的指標も重要だし、根回し的なことも求められる」

このプロジェクトではあらかじめエスノグラフィーの専門家や大学教授など、外部の専門家の意見も多く取り入れられている。

「政府機関はコンテンツのエキスパートだとしたら、省庁の外にはコンテクストのエキスパートがいる。外部にいるコンテクストを構築できるNinjaを探すことでこのプロジェクトは実現できた」

Hale氏はこのプロジェクトに関わる以前、全米のネイティブアメリカンの集落を回って暮らしぶりを調べるプロジェクトに関わっていたそうだ。

「何かを達成するときに必要なのはコミュニティに参加するということと、何か情報をもらったときにそれを“記録し続ける”ということ。そこで得たもう1つの教訓は、データを政府が独占的に所有しているという考え方は捨てなければいけないということだ」

Hale氏がPillboxのアイデアを思いついたのは、ある技術系のカンファレンスでデベロッパーと話していたときのこと。技術系の人間ではない彼は、その際「API」の意味すらわからなかったそうだが、デベロッパーにAPIの意味を教えてもらい、「データがあって、そのようなアイデアがあるなら無料で作りましょう」と提案してくれるベンダーがあったそうだ。

こうしてプロジェクトは進んでいったが、その際彼が重視したのは、「co-(協力)」と「competition(競争)」を組み合わせた「co-ompetition」という概念だ。Pillboxは、最初に頼んだデベロッパーだけでなく別のデベロッパーも途中から参加し、それらが競争する中でより良いサービスが作られていったそうだ。

「プロジェクトを成功させるには、まず使命をはっきりさせて今抱えている課題を認識すること。その後トライ&エラーを繰り返すということでしかできない。ただ、プロジェクトにはきちんと保険をかけておくことも重要。あとは上層部を取り込むことも大事。根回しは本当に重要なので、皆さんこれを参考にしてGoverment Ninjaになってください」という言葉で講演は締められた。

質疑応答では「政府が薬の情報を積極的に開示するなんて、これを悪用する輩が出たらどう責任取るんだ!」と、声を荒げながら感情的な反応をする聴衆がいたが、Hale氏は冷静にこう切り返した。

「政府が情報を開示しようかしまいが、悪用する人間は悪用する。非営利団体のAMERICAN ASSOCIATION OF POISON CONTROL CENTER(米国中毒情報センター協会)にはコールセンターが設けられているが、そこにかかってくる電話の半分くらいが『自分が今飲んだこの薬はどんな薬だったのか?』という質問。専門家が対応しているが、それを処理するコストとして、1件電話がかかってくるごとに45ドルかかっている。Pillboxのようなサービスが普及することでそうした電話が減り、コストが削減されるのであれば、こういう情報を開示することには意味がある」

こうした不毛なやりとりがよく行われる日本でも、非常に参考になる切り返しと言えるだろう。


●Four Perspectives on data.gov.uk / Tim Berners-Lee (World Wide Web Consortium), John L. Sheridan (Information Policy and Services Directorate of the UK’s National Archives), Dominic Campbell (FutureGov), Chris Thorpe (The Guardian)

キーパーソン4人による英国のオープンガバメント化の講演。英国のオープンガバメントでまず重視されたのは、データをオープン化する際にHTMLを人間が読めるデータ、RDFをマシーンが読めるデータと定義し、その2セットをフォローするということだ。

その作業を行うことで、例えば位置情報であれば、人間が読める情報は統計省が公開する選挙区の情報や陸地測量部が提供するGPS情報とリンクさせたりできるようになる。Department for Business Innovation & Skills(BIS)という機関で様々な場所に散らばっていたデータをまずその2形式でまとめる作業を行った。

○bis.gov.uk
http://bis.gov.uk/

BISによっていろいろなデータがオープン化され、地図情報と投資情報を組み合わせて、どこのエリアに投資が集中しているか、企業が倒産が多いのはどの地域かといったことがビジュアル的にわかるようになった。こうしたサービスを開発する際は、元々あるデータを使って新しいアプリケーションで見せるということが意識された。

BISのようなサービス提供を可能にしたのは、REWIRED STATEというデベロッパーの存在だ。この企業が中心となり多くのデベロッパーを呼ぶイベントを主催し、実際のデータを元に「デベロッパーに何ができるか」というプレゼンを行ったことで、オープンガバメントの具体的取り組みが進んでいった。

政府内でオープンガバメント化の取り組みを推し進めたのはブラウン前首相だ。ブラウン前首相は首相時代に、首相官邸下にインフォメーションタスクフォースを置き、プロジェクトを推進した。ブラウン政権になる以前も「行政のデータをオープン化すべき」といいう議論そのものは存在したが、リーダーシップを持って進める人間がいなかった。具体的に進んだのはブラウン首相の功績が大きいという。その背景には「予算削減」という行政府の逼迫した事情もあった。

一方、政権を奪取したばかりの保守党もこの分野については非常に積極的だ。保守党ではテクノロジー・マニフェストを公開しており、同マニフェスト内では基本方針として市民の政府のデータに関する権利保障や、超高速ブロードバンド整備などが挙げられている。ちなみに、この「超高速」というのは、労働党が提唱するマニフェストの50倍速い。ほかにも「政府の発表する書類を全部オンラインで公開する」「政府内にITチームを作る」といった項目が挙げられている。労働党から保守党に政権は移ったが、これによってオープンガバメント化の流れが止まることは当分なさそうな気配である。

○保守党のテクノロジー・マニフェスト
http://www.conservatives.com/Policy/Where_we_stand/Technology.aspx


●Building a Culture of Experimentation / Fred Dust (IDEO)

PRADA、Pepci、Apple、P&Gといった多くの一流企業をクライアントに持つデザイン・ファームのIDEO。IDEOで政府系のプロジェクトに関わるFred Dust氏の講演は技術革新の話ではなく、社会革新という視点からイノベーションに結びつくための様々なポイントが示された。

・正しい疑問を持っているか
人々はアンケートを採っても必ずしも正しい答えが返ってくるわけではない。ニューヨークのあるラジオステーションでリスナーにアンケートを採ってみたら、一番人気はクラシックだった。これを受けラジオ局はクラシック中心の編成にしたが聴取率が上がらない。その後実際にリスナーが聴いている音楽を調査するデバイスを使って、調べてみたところ多くの人が聴きたがっていたのはクラシックではなくセリーヌ・ディオンだった。

・状況を仮定するな
かつてIDEOが赤十字と仕事したときの話。それまで赤十字はイメージが悪く、輸血が思うように集まらなかった。そこで人々に伝えるメッセージを変えることにした。「人にサービスを提供しています」というメッセージではなく、「人々と一緒に働く」というイメージ作りをIDEOが行ったらうまくいくようになった。

・自分の業界の外を見よう
医療業界の人は自分の業界内ばかり見ている。しかし、銀行業界のやり方を見て踏襲したら成功したという例がある。銀行業界は元々フルサービスの窓口業務からATM中心のセルフサービスに移行した。医療業界の人は医療だけ見ていたことでなかなかうまくいかなかった。

・新しい疑問には新しい技術で抵抗しなければいけない
「The Blue Zones」という書籍がある。これは長生きしている人たちをフィールドワークで調査した本。著者は医者たちとネットワークを作り、長生きしている人たちが多いコミュニティを訪ね、医者たちから疑問を投げてもらった。いわば「疑問をオープンソース化」して本を書いた。自分に対して常に「正しい疑問を投げかけているか」ということを意識しよう。

・正しい人材を持っているか
まず重要なのは、より多くの消費者に参加してもらうというメンタリティーを持つこと。プリウスやiPod、Wiiなどは進化する上で消費者の声や反応を取り入れた。「自分が所有している」という考え方を捨てることも大事。コンテンツは一旦オンラインの世界に置いた時点で、自分のものではなくなると認識すべき。

・ゴールを持つ
BestBuyの事例。同社は女性の利用者が非常に少なく、女性層を取り込むために自分の会社の外で女性を雇って女性が求めるものを研究させた。

・プロトタイプを作るために正しいプロセスを踏み、様々なことを試す
コロンビアの首都ボゴタ市では、交通事故の死者が多いことに市長が悩んでいた。死亡事故を減らすため、罰金を上げてみたりしたが結果が出ない。そこで市長が考えたのはコロンビア人の気質。コロンビア人が一番嫌がるのは「侮辱される」こと。それを逆手にとって、交通事故が多い街角に道化の格好をした人間を配置し、交通違反した人がいたらその人のところに道化が言って公然で侮辱するようにした。この“対策”は功を奏し、導入から2カ月で交通事故が半分になった。

質疑応答では、「プライベートセクターの話ばかりで、官公庁には適用できないんじゃないか?」という質問が出た。Dust氏はこれに対し、「プライベートと官公庁で変わることがあるとしたら1つだけ。それは政権交代があるかないかということ。しかし、政権交代があっても職員がすべて入れ替わるわけではないので、本質的には変わらない」と答えた。


●Match made in Heaven: High Reliability-High Risk Organizations and the Power of Social Networks / Carmen Medina

CIAに30年以上務め、最後はCIA内のthe Center for the Study of Intelligenceのディレクターを務めたCarmen Medina氏の講演。Medina氏はCIA退職後、recoveringFed.comというブログを立ち上げ、Twitterなども含め積極的に情報発信を行っている。

Medina氏は冒頭、SNS導入の必要性について言及。「SNSを導入し、省内で情報共有を行う必要性を上層部に直訴したが、上の人間の抵抗感が強かった」と省内政治の難しさを吐露。「常に高い能力を維持する必要があり、かつリスクを多く抱えている組織にこそSNSは必要」と主張するMedina氏は、2003年に起きた史上最大規模の停電事故をメインテーマにして情報共有の重要性を説いた。

「電力はもっともリスクの高い社会インフラ。大量に在庫を持っておけないし、常にモニターする必要もあり、いろいろな種類のエネルギーのソースのバランスを取らなければならない。それに加えて毎日どれだけ必要か推測し、どれだけの電力を供給するか考えなければいけない。その上で広範囲に電力を供給しなければならず、火種があらゆるところにある。03年の大停電は、どれだけの電力を必要とするのか推測するシステムを誰かが切ってしまったのがそもそも原因。切った人間がそれを忘れてランチに行き、そこからさまざまなシステムがダウンしていき、バックアップサーバーも落ち、なし崩し的に大停電につながった。何か起きたときには、サバイバルシステムが用意されているはずなのにそれが機能しなかった。ここから学べる教訓としては、情報の透明性の確保し、共有を進め、それぞれが何をしないといけないかという共通認識を持つことが重要だということ」

Medina氏は停電の教訓をテロリズム分析システムに置き換え、必要な要素は下記の6つであるとした。

・包括的である
・多様である
・システムに冗長性がある
・危険性の度合いを測る能力がある
・迅速に動ける
・透明性があり、お互いに何をやってるか把握できる


その上で、こうしたシステムを構築するには「今あるシステムをアップグレードするのではなく、スクラッチで一から新しいものを作らないとダメだろう」という認識を示した。

質疑応答では「CIAのようなお堅い機関でSNSを作ることにどれだけ現実味があるのか」という質問が出た。これに対し、Medina氏は「自分から見ると、CIAは優先順位が間違っている」と古巣をバッサリ。

「CIAは同じフロアに座っている人がどんな仕事をしているのか知らない。仕事として、テロリストを見つける、災害を感知するといったミッションの方が大事なのだから、情報共有を進めた方がいいのにできなかった。難しいことではないと思うんだけど……」と、最後は言葉を濁した。

安全保障に関わる機関同士で情報共有がうまくいかず、複数の機関で横の連携ができないという現象はどこの国でも見られることだ。オープンガバメント先進国の米国でも、こと問題が安全保障に及んだ途端、こうした旧態依然とした問題を抱えざるを得ないあたりに問題の根深さが伺えた。

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津田大介

メディアジャーナリスト。大学在学中からIT・ネットサービスやネットカルチャーをフィールドに新聞、雑誌など多数の媒体に原稿を執筆。現在、早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師、情報通信政策フォーラム(ICPF)副理事長、(財)デジタルコンテンツ協会発行「デジタルコンテンツ白書2010」編集委員。著書に、「Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)」など。
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