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99%の消費者は理解不能「食品表示」の怪 「政治主導」で迷走する改正案

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加工食品の原料表示をめぐって「悪法」と呼ぶべき制度が始まろうとしている。その問題は国内にとどまらず、国際問題になるリスクもある。毎日新聞の小島正美編集委員は「こんなあいまいで分かりにくい表示制度は過去に見たことがない」という。何が起きているのか。特別寄稿をお届けしよう。

■消費者団体の「要望」も背景にある

こんなあいまいで分かりにくい表示制度は過去に見たことがない。国内で製造される全加工食品に原料原産地の表示を義務づける「原料原産地表示制度」(食品表示基準改正案)のことだ。なぜ、こんな“悪法”といってもよいくらいの表示制度が生まれてしまうのか。政治主導もあろうが、消費者団体の「知りたい権利」という安易なステレオタイプ思考も背景にあるのではないか。


原料原産地表示を審議する消費者委員会・食品表示部会(7月12日、小島正美撮影)

加工食品の包材やラベルに原料原産地を表示させる制度は、すでに緑茶など22加工食品群と4品目で実施されている。これをどこまで拡大するかの検討が2016年1月、消費者庁の「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」で始まった。

最初の2、3回目まで聞いていて異様に感じたのは、大半の消費者団体がいとも簡単に「すべての加工食品に義務づけるべきだ」と要望したことだ。「消費者は原材料の原産地を知りたいと思っている」「それは消費者の知りたい権利に応えることだ」という論理だ。

それに呼応して、国内の農業生産者団体と多くの自治体も義務化に賛同する意見を寄せた。義務化すれば、国産表示が増えて、国産品が伸び、地場産業の育成につながるという思惑だ。

ふだんは政治的な問題で利害や考え方が異なる消費者団体と農業生産者団体が一致してスクラムを組むという異様な光景のように私には映った。

これに対し、大半の事業者は「実務的に困難」との理由で反対意見を述べた。品質のよい製品を同程度の価格でつくり続けるには、いろいろな産地の原料を組み合わせる必要があるが、その頻繁な変更に合わせて、包材やラベルをいちいち印刷し直すわけにはいかない。現実的に対応は難しいという言い分だ。至極まっとうな意見である。

■知りたいことは何なのか

私が疑問に感じたのは、そもそも原料原産地の表示はそれほど優先順位の高いニーズなのかという点だった。表示で重要なことは、健康や安全性、環境保全、おいしさなどにかかわる内容がその製品の表示から読み取れるかどうかである。

たとえば、栄養成分。炭水化物や脂肪、ビタミン、ミネラルなど大切な栄養素はもちろんのこと、その製品に含まれる栄養素が1日に必要な栄養素の何パーセントにあたるかの表示があれば、消費者としては健康維持に役立つはずだ。海外ではこうした栄養成分表示が当たり前のように実現しているのに、日本ではやっとわずか5つの栄養成分表示が実現したに過ぎない。あまりにも世界から遅れている。消費者団体はなぜ、こういう重要な表示の実現にもっと力を入れないのだろうか。

いうまでもなく、アレルギーを引き起こすアレルゲン表示は、安全性にかかわるだけに優先順位は高く、もっと充実させる必要がある。

さらにいえば、その製品の原材料または加工食品がつくられるときに、たとえば農産物の加工品ならば、どんな農薬が何回散布されたのか、加工工場の排水はどのように処理されたのか、地球温暖化ガスをどれだけ発生させたのか、製造工程で労働者の安全対策はどこまで施されたかなどなど、その製品に関して知りたいことは山ほどある。

そうした知りたいことの中で、原料原産地の表示がどれくらい重要かという議論をすべきなのに、そういう肝心な議論はない。

■アメリカの「知りたい」運動

もうずっと以前のことになるが、アメリカの市民団体を取材したときを思い出す。その市民団体はいろいろな製品について、「会社内の女性の重役比率」「軍需産業とのかかわり」「環境保全策」「社会貢献度」などさまざまなことを調べて、その情報を消費者に知らせることで、「この製品を買いましょう」といった活動をやっていた。買い物を通じて世の中を変えていこうという運動だ。

こういう有用な情報こそ、まず消費者が知りたい情報だろう。そして、その有用な情報を商品の購買に結びつける活動こそが、本当の意味での知りたいことに応える活動のはずだ。

つまり、製品を選ぶときに大切な情報は、原料原産地以外にたくさんあるということだ。日本の消費者団体はそういう緻密な議論をせずに、ここぞとばかり「選択」や「知る権利」を持ち出しているように見える。

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