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なぜ名古屋人はすべて"損得"で考えるのか

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名古屋は不思議な土地だ。

かつてタモリは「エビフリャー(エビフライ)」「ミャーミャー言葉」といった“名古屋弁模写”をネタにして、名古屋人の不興をかった。だが、今年6月放送のNHK「ブラタモリ」でタモリが名古屋を褒めると、スポーツ紙などは「歴史的和解」として報じ、名古屋地区での視聴率も過去最高だったという。

名古屋生まれの作家・清水義範は、著書『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)で、愛を込めて故郷を「偉大なる田舎」だと論じている。本書から、「お値打ち」なものが大好きな名古屋人の、独自の価値観を紹介する。


■すべてを、得か損かで考える

すべてにおいて、これは得だわ、というものには飛びつき、これは損だわ、というものには手を出さないという意味において、名古屋の人というのは非常に功利的なのである。

そのせいで、街の景観に魅力がない、ということもおこる。名古屋駅前とか、栄のような繁華街を見てみても、ただ四角いビルが並んでいるばかりで、デザインの面白いビルがほとんどないのだ。だから街の印象がフラットで、目を引かれることがない。

石原裕次郎が名古屋のことを歌った「白い街」という歌(ヒットしなかったので知る人は少ない)があるのだが、白い街とは、名古屋のパッとしない景観をよく表している。なんだか街が白々しいのである。

つまり、ビルを建てる時、凝ったデザインにすれば建築費がかさむわけだ。ビルは頑丈に機能的にできていればそれでよく、デザイン代に高い金を払うのは損だというのが名古屋人の考え方なのだ。だから街に、あっと目を引くような魅力がない。

■付加価値がわからない

ビルのデザインといえば、中部国際空港(セントレア)のビルの話が面白い。あの建物はもともとのプランでは、滑走路側の壁面がうねうねと波打っているデザインだったのだそうだ。ところが工事の前になって、この側面の壁を真っすぐにしたら工費はどれだけ安くなるか、という話が持ちあがり、計算してみた結果、真っすぐの壁に変更になったのだそうだ。ビルのデザインに金をかけるのはもったいない、という功利点な考え方が通ったというわけだ。

そういう精神があるから、名古屋の景観はどうもパッとしないのだ。名古屋駅のすぐ前に建ったトヨタ自動車の名古屋オフィスのあるミッドランドスクエアを見ても、まことに奇をてらったところのない質実剛健なビルで、この面白さのないところがトヨタだよな、なんて感じてしまう。

デザインよりも実質価値を重視するのが名古屋人の功利性である。

それで、実質価値という言葉が出て、思いあたることは、名古屋人には付加価値というものがわからない、ということだ。

付加価値とは、商品の持っている実質価値以外の魅力のことだ。一見なんでもないような商品だが、これはあの有名店のもので、そのことに価値があるのだ、というのが付加価値である。

■「お値打ち」価値観しかない

それで、名古屋に京都などの有名料亭が進出しても、うまくいかず撤退してしまうことが多いのだそうだ。名古屋人は食事をとるのに、その店の名、という付加価値をあまり感じないからだそうだ。

たとえば有名料亭では、1回の食事に5万円もかかったりする。その5万円のうちのいくらかは付加価値代なのだ。

私も、この店で食事をとれるようになったか、という満足代が5万円の内に入っているのだ。

ところが名古屋人には付加価値がわからないから、1回の食事で5万円は高すぎやしないか、と考える。その料亭の名前の代金だという発想がないのである。

そして、そもそもこれ原価はいくらぐりゃあのものだ、と考えてしまう。そして、5万円は法外だわ、と結論が出るのだ。名古屋人には実質価値しかわからないからである。

名古屋人は、この安さでこれが食べられるのはすごく得だ、という「お値打ち」価値観しかないのである。

■ブランド物が大好きな理由

ところが、その実質価値しかわからない名古屋の人が、ファッション関係のブランド品には敏感で大いに愛好するのである。

シャネル、プラダ、グッチ、ティファニーなどといったブランドの、服やバッグやスカーフなどはかなり高くても買うのだ。むしろ大いに愛好している。

なぜならば、ファッション関係のブランド品は身につけていれば、他人に見えるからなのだ。他人が見て、あっ、シャネルだわ、と驚いてくれるところがいいのだ。

清水義範『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)

見えないおしゃれは意味がないが、見て、あっあれだわ、と思われるのは実質価値であり、大いに見せびらかしたいのだ。

そういうことだから、マイナーなブランド品では意味がない。誰が見ても、あっあれを持ってる、とわかる超有名ブランドでなければならないが、それはとてもほしいものなのである。

損か得かでしか価値を考えない名古屋人だが、超一流ブランドのファッションは、誰にでも見えるものだから得なものなのである。

このあたり、とても微妙である。一流料亭で食べても、自分に満足感はあるかもしれないが他人には見えない。他人に見えないところで高い料金を払うのは損なことである。

しかし、一流のファッション・ブランドのものは他人に見えて、一目置いてくれる。だから得なのである。

名古屋人は他人に見えるところでは大いに見栄を張る。うらやましいでしょう、と見せびらかす感じさえある。

だが、他人に見えないことには見栄を張らない。誰にもわからないところで見栄を張っても無意味なのだ。そういう時は、「お値打ち」なものに飛びつくのだ。

その辺は、実に功利的にきっちりとしているのである。

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