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ビットコインの分岐問題について

ビットコインの分岐問題が話題になっています。

重要な日は7月21日と8月1日です。

その前に、そもそもなぜビットコインの分岐問題が出て来たのかを説明します。

ビットコインは、「鍵で守られた元帳をユーザーがやりとりしている」とイメージしてもらえば良いです。元帳とは、乱暴に言えば「エクセル・スプレッドシートみたいなもの」です。

そこに「誰々さんから、誰々さんへ、所有権が移りました…」という情報を、次々に書き込みしてゆくわけです。

しかしデジタルの元帳は改ざんしやすいので、その書き込みが真正かどうかを誰かが検証しなければいけません。

そこでビットコインでは、数千のコンピュータに元帳のコピーを配布し、新しい記帳があった事実を全員に知らせるわけです。

この検証作業は、自宅のパソコンでも理論的には出来ます。

でも最近はスピード競争が激化し、この検証作業に特化した一部のプロが、大半の検証作業を行うようになっています。

この検証作業のことをマイニング(採掘)と言います。そしてそれをやっている人たちのことをマイナー(鉱夫)と言います。

検証に際しては「ビザンチン・コンセンサス」という手法が使われます。ビザンツはコンスタンチノープル(=イスタンブール)を中心とした東ローマ帝国を指します。

そのローマ軍の部隊が攻城戦をする際、各個に攻めると撃退されやすいです。逆に皆が、各方面から一斉に攻撃を仕掛ければ、全体としては、勝つ公算が高くなります。

Царьград

そこで各部隊を指揮する将軍が、勝てるチャンスを最大化するため、51%の賛同があったときに攻め込むと言う風に了解したのが「ビザンチン・コンセンサス」というわけです。

これは今日の潜水艦、宇宙ロケット、旅客機、戦闘機などのコンピュータにも採用されています。

たとえば戦闘機が被弾し、一部のコンピュータが壊れた時、戦闘機の中に複数のコンピュータを配置し、壊れていないコンピュータが相違に気付き、全員投票し、多数決で正しい判断結果を決めるのです。

これと同じことがビットコインでも行われているのです。

こうして検証が終わり、その取引が真正だと判定されると、過去取引はブロックとして封印されます。これはあたかも、古代の昆虫が、琥珀(こはく)の中に閉じ込められ、化石になったような具合です。

検証が終わると、マイナーは、ご褒美として新しいビットコインを「発見」します。

この説明からもわかるとおり、ビットコインでは、いちいち面倒臭い検証が行われるため、処理速度が遅いです。

また検証に要する時間がどんどん長くなり、プロセス・フィーが嵩む懸念があります。

このままではビットコインがクレジットカードやパスモのように、日常生活で利便性を発揮する可能性は、どんどん遠のいてしまうのです。これが分岐問題の発端です。

そこで処理速度を上げてやるため、二つの考え方が出ました。
ひとつはマイナーたちの間で支持されている考えで、それはブロックサイズの制限を拡大すべきだという主張です。

なおマイナーたちは、どんどん処理能力の高いコンピュータをマイニング作業に投入しており、それは軍拡競争の様相を呈しています。

マイナーの大半は中国に居ます。

最終的には、資本力のある一部のマイナーが、大部分のマイニング作業をし、その労働の果実として、新しいビットコインを獲得する「半寡占」が起こる様相を呈しています。

もうひとつの考え方はデベロッパーたちの主張であり、それはビットコインを分岐させ、交通渋滞を解消する方法が提案されています。いわば高速道路の本線に対し、「バイパス」を設けるようなものです。

この手法を「セグウィット(SegWit)」、そしてそれを主張しているグループのことを「コア」と言います。

このように「バイパス」を作り、「本線」の混雑を緩和すると、「本線」におけるマイニング作業に事業投資してきたマイナーたちは、収益機会が減ります。だからマイナーたちはこの分岐に反対しているのです。

そこで両者の間で妥協案が生まれました。それは1)ブロックサイズを2倍に増やす代わりに、2)セグウィットも認める、というものです。

ブロックサイズを2倍に増やすと、処理速度が上がります。

この妥協案のことをセグウィット・ツー・エックス(SegWit2X)と言います。

7月21日にそのソフトウェアがリリースされる予定です。

マイナーの8割は、このセグウィット・ツー・エックスを支持しているそうです。

ひとつの見どころとして、ビットコインでは上で説明した「ビザンツ・コンセンサス」が用いられているため、マイナーの過半数がセグウィット・ツー・エックスを支持するかどうか? が注目されます。

なお「コア」支持者の一部は8月1日にユーザー・アクティベーテット・ソフト・フォーク(UASF)を行いたいと考えています。そこではセグウィットに従わないトランザクションは却下されます。

もし8月1日までに過半数のマイナーがセグウィットを採用しなければ、二種類のビットコインが出来てしまうのです。

いずれにせよ、最終的にはビットコインが分裂しようが、しまいが、長い目でみれば余り関係ないと思います。仮に複数のビットコインが出来たとしても、最終的には最も優れたアプローチが自然に他を淘汰するでしょうし、それまでにはある程度、時間がかかると思います。

短期的なボラティリティーは避けられませんが、長期的には心配していません。

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