記事

タイガー・ウッズ逮捕「続報」:「社会認識」「司法制度」の「日米差」を考える - 舩越園子

1/2

ウッズが米ツアーで最後に出場した今年1月の「ファーマーズ・インシュアランス・オープン」初日のスタート風景。大勢のファンやメディアの熱い視線を受け、スターの輝きを放っていた(筆者撮影)

 タイガー・ウッズが逮捕されてから7週間が経った。うつろな目をした顔写真や呂律の回らない呼気テストの映像は、多くの人々を驚かせ、落胆もさせた。

 以後、公の場にもゴルフの世界にもウッズの姿は見られない。だが、記録の話になると「タイガー・ウッズのみ」「タイガー・ウッズ以来」という具合に彼の名前は必ずと言っていいほど上がる。そんな偉大なるゴルファーがこのままゴルフ界から消えてしまうのは、あまりにも惜しい。

 ウッズはこれからどうなっていくのか。それを見通す上では、今回の事件に対するゴルフ界、そして何より米国社会での受け止め方を知ることが何より重要だと思う。

「出廷延期」のうえに「刑軽減」も!?

 まず、事実関係をおさらいしてみよう。ウッズが4度目の腰の手術を受け、「これで、ようやく痛みのない人生を取り戻すことができる」と喜びと安堵を示したのは4月19日のことだった。

 だが、その翌月末5月29日、「ウッズDUIで逮捕」という衝撃のニュースが世界を駆け巡った。さらにいったん釈放された直後に、子供を車に乗せて再び自らハンドルを握り、病院を訪れる姿が米メディアによって撮影され、ウェブ上に載った。

 そして6月19日、ウッズは「プロフェッショナルなサポートを得ている」と、薬への対処と睡眠障害に関して入院治療を受けていることをツイッターで公表。7月3日、2週間の治療を終えて退院したこともツイッターで発信した。

 当初は、その2日後の7月5日にウッズは裁判所に出廷し、いわゆる罪状認否を行うことになっていた。この日程はウッズが逮捕され、すぐに釈放された段階で決まっていたものだった。だが、いつの間にか、出廷日時は8月9日へ延期されている。

 そして、逮捕・拘置された時点では「DUI(Driving Under the Influence=アルコールまたは薬物の影響下での運転)の嫌疑だったが、裁判所での罪状認否より前の現時点で、すでに「DUI」ではなく「Reckless Driving」にダウングレードされ、減点と罰金だけになるであろうという見通しが、複数の米メディアによって報じられている。

「Reckless Driving」とは日本語に直訳すると「危険運転、無謀運転」となるが、Uターン禁止の場所とは知らずにUターンしてしまったとか、車間を詰め過ぎて走行したといった比較的軽度な交通違反が「reckless」とされ、違反チケットを切られることが多く、それゆえ減点や罰金も軽度で済むことが多い。

司法取引の可能性

 なぜ、出廷の日時が延びたのか。なぜ、出廷前から「DUI」が「Reckless Driving」へ軽減されることがすでに報じられているのか。そもそも、逮捕され、釈放された直後に入院しなければならなかったのはなぜなのか。

 ウッズが受けたと同様の腰部手術に詳しい整形外科医の小塙幸司医師(こばなわ神田整形外科院長)は、「欧米では術後の鎮痛薬はコデイン系が推奨され、痛みの度合いで服薬量と回数は(患者が)自己調整できます。コデイン服用過多のふらつき運転は一般人でも多いのではないでしょうか。慢性難治性の疾患で長期服用ならコデイン依存のリスクもありますが、(ウッズの場合)2週間の入院ということは深刻な依存性ではなく、服薬指導と術後の疼痛コントロール、リハビリなどが行なわれたのではないか。もし術後に睡眠障害になるほど痛みがひどかったのならば、術後の経過があまりよくなかった可能性もあります」と、薬の服用そのものより、むしろ術後の経過を案じる。ちなみに、コデイン系の鎮痛剤とはアヘンから単離された成分だが、米国ではモルヒネから合成されたものが一般的。日本では劇薬に区分される医薬品である。

 一方、ゴルフ関連の訴訟に詳しい西村國彦弁護士(さくら共同法律事務所)は、あのピコ太郎を有名にした世界的人気ミュージシャン、ジャスティン・ビーバーの過去のケースを引き合いにこう解説する。

 2014年、フロリダ州内でウッズと同じくDUI(飲酒)と、さらに運転免許不携帯(期限切れ)、公務執行妨害で現行犯逮捕されたビーバーは、「司法取引」によってその罪を「Reckless Driving」と公務執行妨害のみに軽減された。しかもその刑は、さらに「アンガー(怒り)・コントロール・セラピー」の一定時間の治療とDUI講習の受講、5万ドルの「寄付」などを条件に、規定の「罰金」のみへと軽減された。「アメリカでは、まず検事と交渉、次に裁判官と交渉という手順で、かなり司法取引がある。ウッズなのだから有力弁護士が司法取引をやっているでしょう」(西村弁護士)

 米メディアも、ウッズがわざわざ入院したのは司法取引を有利に運ぶためだったと見ているようで、だからこそ刑の軽減や執行が免除される「diversion program」なる制度が適用され、「DUI」ではなく「Reckless Driving」にダウングレードされる可能性大だと報じているわけだ。 

あわせて読みたい

「タイガー・ウッズ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    パチンコ団体の無茶な主張に呆れ

    宇佐美典也

  2. 2

    発言捏造? 水原希子の動画を検証

    西村博之/ひろゆき

  3. 3

    議員秘書が明かす蓮舫氏の悪評

    fujipon

  4. 4

    解散を要求していたのは野党側

    和田政宗

  5. 5

    橋下氏「北対策はヤクザに聞け」

    PRESIDENT Online

  6. 6

    キンコン西野「素人の演出迷惑」

    メディアゴン

  7. 7

    よしのり氏「山尾氏は謝罪不要」

    小林よしのり

  8. 8

    民進・岡田氏 解散の違憲性指摘

    岡田克也

  9. 9

    豊田議員糾弾は大衆によるリンチ

    小林よしのり

  10. 10

    トランプ氏 国連演説で北に警告

    ロイター

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。