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加計学園問題のあらゆる論点を徹底検証する ~安倍政権側の“自滅”と野党側の“無策”が招いた「二極化」 - 前編 -

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加計学園問題をめぐり、かみ合わず、対立する主張

森友学園問題は、小学校開設のための国有地が不当に安く払い下げられたことが、安倍晋三首相の夫人安倍昭恵氏が名誉校長を務める学校法人森友学園への「不当な優遇」ではないかが問題とされたが、加計学園問題も、森友学園問題と同様に、「安倍一強」と言われる安倍内閣への政治権力の集中の中で、安倍首相と親密な関係にある特定の学校法人が国から不当な優遇を受けたのではないかが問題とされたものだった。

その問題をめぐる構図を大きく変えたのが、前川喜平前文科省事務次官が、記者会見を開き、文科省内に「総理のご意向」文書が存在したことを認め、「行政が捻じ曲げられた」と明言したことであり、それ以降、最近まで文科省事務次官という中央省庁の事務方のトップの地位にあった人間の発言や、その省内で作成された文書によって、「不当な優遇」を疑う具体的な根拠が示され、それが、国会の内外で安倍首相や安倍内閣が厳しい追及を受ける事態に発展した。

国会での追及を免れるため、先の国会の最大の対決法案であった「テロ等準備罪法案」を、委員会採決を省略して本会議で議決するという不当な「奇策」まで使って、会期を延長せず国会会期を終了させたが、このようなやり方や、一連の問題に対する安倍内閣の不誠実な対応が、安倍内閣への批判を逆に高め、都議選で自民党が歴史的惨敗、その後、安倍内閣の支持率は政権発足後最低の水準まで低下している。

都議選での自民党の惨敗、支持率の急落を受け、7月10日には国会両院で閉会中審査が開かれたが、外遊中の安倍首相が出席しなかったことへの批判が高まり、安倍首相が出席して両院の予算委員会で閉会中審査が開かれることになった。

ここに来て顕著なことは、加計学園問題について、「重大な問題だ」と指摘する論者と、次第に少数になりつつあるが「全く問題がない」とする論者との間で、激しく意見が対立し、しかも、両者の主張がほとんど噛み合っていないことである。

加計問題での“防衛線”「挙証責任」「議論終了」論の崩壊】でも述べたように、7月8日放映のBS朝日「激論!クロスファイア」(司会田原総一朗氏)に、元大蔵官僚の高橋洋一氏と私が出演し、同氏の「挙証責任」「議論終了」論をめぐって激しい議論を展開した。私の諮問会議・WGの議事録に基づく指摘で、少なくとも高橋氏の「議論終了論」はほぼ完全に崩れたと思えたが、ネットでは、多くの人が「郷原氏、高橋氏に圧勝」とする一方で、一部に「高橋氏の完勝だ」と評価する人もいる。

また、閉会中審査の結果についても、自民党の青山繁晴議員の前川氏への質疑、前愛媛県知事の加戸守行氏の発言の評価等をめぐって、見方が真っ向から対立している状況にある(猪野亨氏【閉会中審査でのやり取りを自民党に軍配を上げるネトウヨたちの異様性 国会軽視の安倍自民党】)。

安倍首相が出席して行われることとなった予算委員会での閉会中審査をめぐって意見・評価が全くかみ合わないまま激しく対立する状況が続くことが予想される。

なぜこのような状況が続くのか、「安倍首相を支持するか、しないか」という政治的意見の対立の先鋭化によるものであることも確かである。しかし、それ以上に、この問題は、「安倍首相の指示・意向があったのかどうか」という事実認定の問題のほかに、社会的、経済的、或いはコンプライアンス的に重要な論点を多数含んでおり、その点についての見解の対立があること、しかも、この問題についての国会での議論が低レベルで本質的な問題を指摘し得ていないことなどが、影響しているように思われる。

この「見解の対立」も、かなり本質的な違いであり、その解消は容易ではないが、まず、何がどう対立しているのかを全体的に整理することは、今後の加計学園問題をめぐる議論に関しても有益なのではないかと思う。

そこで、政権の帰趨を決する重大問題となった加計学園問題をめぐる議論の混乱を解消し、少しでも充実したものとするため、この問題全体に関する論点を、可能な限り網羅的に取り上げて整理し、解説してみたいと思う。

私のブログ記事としては過去に例がない程の長文になってしまったので、最初に内容を全体的に示しておきたい。

第1 安倍首相の指示・意向という「事実」に関する問題

第2 利益相反、公正・中立性の確保という「コンプライアンス」に関する問題

第3 規制緩和をめぐる「挙証責任」に関する問題

第4 「犯罪性」に関する問題

第5 安倍政権側と野党側の対応を“斬る”

第1「事実」に関する問題([A])

安倍首相の指示・意向の有無と意向の「忖度」

加計学園問題をめぐる最大の争点が、「『腹心の友』の加計孝太郎氏が経営する加計学園に有利な取り計らいをするよう安倍首相の指示・意向が示された事実があったか否か」であることは間違いない。しかし、この点についての事実が明らかになる可能性はほとんどないに等しい。仮にその事実があったとしても、安倍首相がそれを認めることはあり得ないし、その指示・意向を直接受けた人間がいたとしても、それを肯定することは考えられないからだ。

安倍首相の直接的な指示・意向のほかに、官邸や内閣府の関係者が、安倍首相の意向を「忖度」して、加計学園の獣医学部新設が認められるように取り計らったのではないかも問題となるが、【官僚の世界における“忖度”について「確かに言えること」】でも述べたように、「忖度」というのは、される方(上位者)にはわからないものだし、行う本人も意識していない場合が多い。「忖度」があったかなかったかを、安倍首相にいくら質問しても、関係者をいくら追及しても、事実を明らかにすることは、もともと極めて困難である。

しかし、それらの事実が直接証拠によって立証されることはなくても、間接事実によって推認されることはあり得る。国家戦略特区の枠組みによって加計学園の獣医学部新設が認められた経緯の中での関係者の発言のほか、手続自体が「最初から加計学園ありき」としか考えられない「歪んだもの」だったとすれば、その背景に、安倍首相と加計氏との関係があることが影響したことが合理的に推測され、安倍首相の指示・意向や、忖度が働いたことが強く疑われることになる。

立証命題としての「事実」は、安倍首相の指示・意向([A]①)と意向の忖度([A]②)だが、実際には、「間接事実」によって、[A]①及び[A]②の事実が推認できるか否かという問題([A]③)に尽きる。

その点に関して重要なのが、前川氏の証言と文科省の内部文書の存在である。その主な内容が、以下のようなものだ。

[前川証言]

ア 2016年9月頃、和泉洋人首相補佐官から、「総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う」と言われた。

イ 同年8月下旬頃、木曽功加計学園理事(元文科省官僚)から、「国家戦略特区制度で、今治に獣医学部を新設する話、早く進めてほしい。文科省は(国家戦略特区)諮問会議が決定したことに従えばいいから」と言われた。

ウ 11月9日の諮問会議で「広域的に獣医学部の存在しない地域に限り」という条件が付され、11月18日の共同告示のパブリックコメントの際に「平成30年度開設」という条件が付され、1月4日に共同告示が制定された際に、「一校に限り」という条件が入り、結局加計学園だけが残ることになった。初めから加計学園に決まっていた、加計学園に決まるようにプロセスを進めてきたと見え、このプロセスは内閣府あるいは内閣官房の中で進んできた。

[文科省文書]

エ 「これは総理のご意向だと聞いている」

オ 「これは官邸の最高レベルが言っていること」

カ 「閣内不一致を何とかしないと文科省が悪者になってしまう」

これらを総合すると、[A]③の間接事実としては相当程度有力なものであるといえ、これらを否定する根拠、合理的な説明・反論がない限り、[A]①及び[A]②が推認されることになる。とりわけ、文科省側の事務方のトップであった前川氏が、「初めから加計学園に決まっていた」と具体的な根拠を示して証言したことの意味は極めて大きい。

存在が明らかになっている文科省内の文書も、その内容だけでは、内閣府等の関係者の言動を正確に示すものとは必ずしも言えないが、文科省と内閣府の間のやり取りについて、内閣府側からは、文科省側の文書を否定する文書・資料は全く開示されておらず、担当大臣の山本氏の説明も、前川氏の指摘に対する合理的な説明・反論になっているとは言い難い。そのため[A]①及び[A]②の事実に関して、[A]③の間接事実による推認が、相当程度強く働いていると言わざるを得ない。

加戸守行氏の証言と京都産業大学の記者会見

閉会中審査における前愛媛県知事の加戸守行氏の証言と、その後に行われた京都産業大学の「獣医学部開設断念」の記者会見の内容をどう評価するかも問題となっている。これらによって、加計学園をめぐる安倍首相の疑惑が解消されたかのように評価する声もあるが、いずれも、加計学園をめぐる疑惑を解消することにつながるものではない。

加戸氏については、愛媛県知事の時代から、今治新都市開発の一環として大学誘致に熱心に取り組んできたこと、同氏にとって獣医学部誘致が「悲願」だったことは、国会で切々と述べたとおりであろうし、教育再生実行会議での同氏の、唐突な、いささか場違いとも思える「獣医学部新設問題」への言及からも、誘致への強い熱意が窺われる。

しかし、加戸氏は、獣医学部の認可を求める側の当事者、政府にとっては外部者であり、政府内部における獣医学部新設をめぐる経過とは直接関係はない。また、「愛媛県議会議員の今治市選出の議員と加計学園の事務局長がお友達であったから、この話がつながれてきて飛びついた」というのも、今治市が加計学園の獣医学部を誘致する活動をする10年以上前の話である。

その後の誘致活動、とりわけ、前川氏が「加計学園に最初から決まっていた」と思える「行政の歪み」があったと指摘する2016年8月以降の経過に、安倍首相と加計理事長の「お友達」の関係がどのように影響しているのかとは次元の異なる問題である。

また、長年にわたって誘致活動を進めてきた加戸氏の立場からは致し方ないことのようにも思えるが、同氏の話にはかなりの誇張がある。愛媛県知事時代の「鳥インフルエンザ、口蹄疫の四国への上陸の阻止」の問題を、公務員獣医師、産業担当獣医師の数が少ないことの問題に結び付けているが、加戸氏自身も認めているように、上陸阻止の手段は、船、自動車等の徹底した消毒であり、獣医師の「数」は問題とはならない。

獣医師が必要になるとすれば上陸が阻止できず感染が生じた場合であろうが、実際には、四国では鳥インフルエンザも口蹄疫も発生していない。また、加戸氏が長年にわたって今治市への獣医学部誘致の活動をしてきた背景には、知事時代に今治市と共同して進めた新都市整備事業で予定していた学園都市構想が実現しておらず、土地が宙に浮いた状態だったという事情があったことを加戸氏自身も認めている。

獣医学部誘致に今治市民の膨大な額の税金を投入することを疑問視する市民も少なからずいることを無視して、獣医学部誘致が「愛媛県民の、そして今治地域の夢と希望」と表現するのは、現実とはかなり異なっているように思える。

結局のところ、加戸氏の国会での発言は、政府の対応を正当化する根拠にも、前川氏の証言に対する反対事実にもなり得ないものであり、加計学園をめぐる疑惑に関しては、ほとんど意味がないものと言える。

次に、京都産業大学が7月14日に記者会見を開いて獣医学部設置断念を公表した件だが、そこで明らかにされた理由は、

1月4日に公表された文科省告示で『平成30年4月開学』が条件とされたことで、準備が間に合わないと判断したために応募は断念した。

(獣医学部を断念した理由について)加計学園が来春、愛媛県今治市に獣医学部を開学する予定であることで、国際水準に足る質の高い教員を確保することが難しくなった

というものだった。

既存の獣医学部などが「広域的に存在しない地域に限り」新設を認めるとした条件について「これで対象外になったとは思わなかったが、ちょっと不利だと思った」とも述べている。この会見での説明からすると、「30年4月開学」という条件が付けられたことで、京都産業大学が応募を断念せざるを得なくなり、しかも、加計学園が先に開学することで教員確保が困難となり、結局、国家戦略特区諮問会議で決定された条件のために、「加計学園のみ獣医学部設置」という結果につながったことが明らかになった。

京都産業大学の記者会見での説明は、「平成30年開学」の条件が、「加計ありき」につながったとの前川氏の指摘を裏付けるものと見ることができ、[A]③の間接事実による[A]①及び[A]②の推認を、むしろ強める方向に働くものである。

ところが、高橋洋一氏は、この京都産業大学の記者会見について、獣医学部設置断念の理由についての説明を、《「教員確保が困難だったため」としたうえで、今回の戦略特区の選定作業が不透明だったか否かについては、「不透明ではなかった」と明言している。》などと引用し、加計学園をめぐる疑惑が晴れたかのように述べている(現代ビジネス【加計問題を追及し続けるマスコミの「本当の狙い」を邪推してみた】)が、「平成30年4月開学」の条件が付されたことが特区への応募断念の決定的な理由であったとの大学側が繰り返し述べた理由を意図的に除外している。

しかも、表面上は公開の手続で決定されたのであるから、内閣府と文科省との間で何があったのか知り得ない同大学側が「不透明だった」と言う根拠もない。会見の内容を歪曲して、疑惑が晴れたとの結論を導こうとしているものである。

第2 コンプライアンスに関する問題([B])

次に、国家戦略特区に関する権限を有する総理大臣と、加計学園理事長とが「腹心の友」であることの「利益相反」という問題がある。これは、公正・公平な判断ではない疑いが生じる「外形」の問題である。過去50年以上にわたり認められてこなかった獣医学部の新設を、安倍首相がトップを務める内閣府所管の国家戦略特別区域法に基づき、大学認可を所管する文科省の従来の方針を変更して実現しようとしているのであるが、その権限を持っているのは安倍首相自身だ。

首相と加計理事長との親密な関係が、国家戦略特区の枠組みによる獣医学部新設認可の判断に影響を与えることがないようにする必要があった。それは、安倍首相が強調するように「関与していない」「指示していない」ということで済む問題ではない。安倍首相と加計理事長の親密な関係が、「忖度」等によって事実上影響した可能性もあり、外形上そのような疑いが生じること自体が問題なのである。

これが、事業を行う組織のトップの「利益相反」というコンプイアンス問題であり、それを[B]-①と呼ぶとすれば、もう一つ、この点に関して重要なのが、「利益相反」が生じかねない枠組みという[B]-②の問題である。

国家戦略特区の枠組みは、基本的に有識者の諮問会議やワーキンググループ(WG)の民間議員が中心である。「岩盤規制」を守ろうとする規制官庁と、それを崩そうとする側との間では激しい意見対立が生じ、その意見対立に対して「中立・公正な立場での判断」が必要となる。ところが、現在の諮問会議とWGの民間議員のメンバーは、ほとんどが安倍首相の支持者、アベノミクスの推進者など、その動きや判断が安倍首相の意向に沿うものとなることが確実なメンバーだ。このような民間議員にWG、諮問会議で「判断」を行わせること自体に、公正・中立の確保というコンプライアンスに関して問題がある。

重要なことは、「利益相反」というコンプライアンス上の問題は、あくまで「外形上」の問題であり、実質的な問題ではないということだ。当事者が、その問題を認識・理解し、適切な対応をとれば、大きな問題にはならないし、ましてや、政権を揺るがす問題になるなどということにはならない。要するに、加計学園の獣医学部の新設認可に向けての手続きが取られたことが、その獣医学部の新設計画の中身や、実質的な価値、社会への貢献などの面から、全く問題ないことを安倍首相自身、あるいは加計学園側が十分に説明し、納得を得ることができれば、外形上の問題は結果的には解消されうるのである。

ところが、国会で「加計学園の理事長・加計晃太郎さんと7回食事をしています。2年半で13回も食事。総理、なぜ規制緩和をしたのですか?」と野党側からの質問を受けたのに対して、安倍首相は、「特定の人物や特定の学校の名前を出している以上、確証が無ければ極めて失礼ですよ!」などと言い返し、その後も、「(国家戦略)特区の指定や規制改革項目の追加、事業者の選定のプロセスは関係法令に基づき適切に実施しており、圧力が働いたことは一切ない。」との答弁を続けた。

野党側は、安倍首相と極めて親しい関係にある加計氏が経営する学校法人が国家戦略特区で有利な扱いを受けた疑いを、さしたる根拠もなく質問しただけだったのだが、安倍首相は、[A]-①、②を否定するだけではなく、「関係法令に基づき適切に実施している」と言って、[B]-①、②の問題を全く問題ないかのような答弁をしたのである。

「関係法令に基づき適切に実施」というのが、この問題に対する説明にも反論にもならないことは明らかだ。法令上、国家戦略特区法は、諮問会議の決定等の手続を経て従来の行政の判断を変更することを可能にしているのであり、その手続に則って行われている以上、法令上問題がないことは当然である。しかし、だからと言って、「法令遵守」を超えたコンプライアンス問題である[B]の問題を否定できるわけではない。

安倍首相としては、この段階で、次のように答弁すべきだった。

加計孝太郎氏は、私の古くからの「腹心の友」ですが、今回の獣医学部の新設認可に関して、私は、全く口を出していないし、加計学園を優遇するように指示したことも全くありません。

しかしながら、国家戦略特区において、52年ぶりに獣医学部が新設されるという「岩盤規制の打破」が実現したことについて、総理である私と親しい加計氏が経営する加計学園だけが認可されたという結果になったことで、加計氏が私の親しい友人であることが、官邸や内閣府の関係者に認識され、忖度が働いたのではないかとの疑いを受けたこと、また、現在の特区諮問会議等の枠組みが、そのような疑念を払拭できるものではなかった点に問題がなかったとは言えないと思いますし、特区諮問会議の議長である私自身が、利益相反についての問題意識が若干欠けていたことは反省すべきだろうと思います。

今後、国家戦略特区の運用においてこのような疑念が生じることのないよう、「岩盤規制」を守ろうとする規制官庁と、それを崩そうとする民間議員との間で、公正・中立な判断が行われ、規制緩和の恩恵を受ける事業者の選定においても疑念を受けないようにするための枠組みを作ることなど、改善を検討していきたいと思います。

このように[B]のコンプライアンス問題を意識した適切な答弁を行い、国家戦略特区諮問会議の構成や運営を改善する方針を示していれば、加計学園問題は、その時点で収拾できていたはずだ。

ところが、「全く問題ない」と言い切ったために、実際に、安倍首相の指示・意向があったか否かは別として、国家戦略特区の枠組みで、従来の文科省の方針に反して獣医学部の設置認可を迫られたことに対する文科省関係者の反発を招き、その後、「総理のご意向」などと書かれた内部文書の存在が指摘され、前川氏が記者会見で「文書は確かに存在した」「文科省の行政が捻じ曲げられた」と発言するという、安倍首相にとっても内閣にとっても最悪の事態に発展していった。

そして、さらに火に油を注ぐことになったのが、このような文科省側の動きに対して、菅義偉官房長官を中心とする首相官邸側が、読売新聞を使って前川氏の個人攻撃を行うという「禁じ手」まで使い(【読売新聞は死んだに等しい】)、一方で、文科省の文書に関する調査に関する要求には、「法令遵守」を振りかざす対応に終始したことである。

文科省の当初調査では文書の存在が確認されず、その後、文科省の事務次官を務めていた前川氏が「確かに存在していた」と証言したが、菅氏は「怪文書のようなもの」と切り捨てた。それによって、内部からの告発証言が相次ぎ、再調査を求める声が高まっても、「法令に基づいて適切に対応している」と言い続けて、再調査を拒否し続けた。

そして、結局、再調査をせざるを得ない状況に追い込まれ、再調査の結果、文書の存在が確認された。当初の調査は、文書の存在を確認するためのものだったのに、実際にはその文書を隠ぺいした疑いが日に日に高まっていった。「隠ぺい」は組織に対して厳しい批判の根拠となる事実だが「法令違反」の問題ではない。そういう問題について、「法令に基づいて適切に対応している」という言葉だけで済ませようとしたのは、明らかに間違っていた(日経BizGate【「法令遵守」への固執が安倍内閣の根本的な誤り】)。

菅氏の対応は、「利益相反」という「法令遵守を超えたコンプライアンス問題」であった加計学園問題について、内部告発的な動きがあったのに対して、「法令遵守」の考え方で押し切ろうとしたところに最大の問題があった。

このように、安倍氏や菅氏が[B]の問題を十分に理解せず、さしたる根拠もない[A]について躍起になって否定するという対応を重ねていったことで、逆に、安倍首相の指示・意向ないし「忖度」という[A]の事実について、疑いが相当程度あるように世の中から認識されるようになっていった。

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