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いまの社会保障は非正規雇用者をカバーできない仕組みになっている。正社員を守りすぎる規制をなくし同一労働同一賃金の実現を - 「賢人論。」第41回城繁幸氏(後編)

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中編「人口が増えることを前提とした現行の年金制度が変わらなければ移民はおろか、就職氷河期世代を支えることさえ困難な状況」では、非正規雇用者や今後受け容れていくかもしれない移民までカバーすることのできる新しい社会保障制度の必要性を訴えた城氏。後編では、少子化と“専業主婦”の意外な関係、そして「同一労働同一賃金が少子化問題を解決する」というその可能性に迫る。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

現行の社会保障制度は非正規雇用が想定に入っていない

みんなの介護 中編「人口が増えることを前提とした現行の年金制度が変わらなければ移民はおろか、就職氷河期世代を支えることさえ困難な状況」では、正規雇用と非正規雇用の格差是正が直近の課題のひとつだというお話が最後にありました。「派遣切り」という言葉は最近それほど聞かれなくなりましたが、非正規雇用をめぐる問題はまだ解決されていないのでしょうか?

 今の社会保障制度の問題点は、正社員と自営業しか想定していないことです。例えば年金で言うと、正社員として勤めていた夫婦ならば厚生年金を含めて月に15万前後もらえます。自営業なら身体が動くまで定年がありませんから、収入と国民年金の6万円を合わせて暮らしていけます。

しかし、非正規雇用かつ65歳以上、という人たちのことはまだ想定されていませんよね。特にスキルを持たない人たちが、どうやって月6万円の国民年金だけでやっていけるのか。大量に切られることはなくなっても、問題そのものは解決していないんです。

みんなの介護 非正規雇用者の保障問題を解決するにはどんな手立てがあるでしょうか?

 社会保障の解決もそうですし、労働市場の解決も必要ですね。正規雇用と非正規雇用の格差は、規制が多すぎることから生じているので、正社員の解雇や賃下げを柔軟にできるような規制緩和も必要です。

みんなの介護 そうすることで正社員の賃金だけが高止まりせず、非正規雇用にお金が回って来やすくなるんですね。

 もうひとつ、非正規雇用者は雇用期間の上限が規制されています。派遣なら3年、有期雇用なら5年ごとに職場を転々としなければいけないので、なかなか付加価値のあるスキルが身に付かない。寿司屋でたとえるなら、皿を洗ったりお掃除したりというような、誰がやっても良いような仕事しか任されないわけですよ。肝心のネタを捌いたり握ったりするのは社員だけ。

スキルが身に付かないと、いつまでも賃金が上がりません。これが賃金格差の最大の原因です。こういう規制をなくして、同一労働同一賃金が成立するような環境整備をしないことには前に進まないですよね。

みんなの介護 同一労働同一賃金というのは雇用形態や性別、学歴などに関わらず、同じ仕事をする人は同じ水準の賃金を受け取る仕組みのことですね。

 ええ。そのためには政府が“同一労働同一賃金基本法”のようなものをつくって企業に見直しを促すことも有効でしょうね。

そうなると、派遣社員の方が正社員に比べ給料が上回るケースが出てきます。それは本来、正しいことなんです。同じ仕事をしている派遣社員と正社員がいるとすると、派遣社員の方が解雇しやすいぶん時給が高くなりますから。


専業主婦制は、経済の停滞した現代では少子化の一因に

みんなの介護 少子化についてはどうお考えでしょうか?

 実は「専業主婦」という仕組みが少子化の原因のひとつになっています。一般的に専業主婦は日本の伝統的なスタイルのように思われていますが、実はそれができたのは戦後のことです。農家などを例に取るとわかりやすいですが、戦前は男女共働きが普通でした。女性が家を守り男性は外で働いて…という暮らし方が可能だったのは一部の上級武士だけですよ。

みんなの介護 それは意外な事実でした。なぜ戦後、そのような専業主婦制が浸透していったのでしょうか?

 ここでも終身雇用制度が絡んできます。前編「労働市場が流動的ではないから長時間の残業、地方への転勤、転職の不利など問題が生まれている。年功序列と終身雇用の廃止が必要」でもお話ししましたが、終身雇用を守るためには転勤が欠かせません。例えば「大阪で社員が足りなくなりました」となったとき、終身雇用制度のもとでは余剰感のある他の地方から社員を転勤させることで雇用そのものを守るわけです。

もうひとつ、長時間残業もつきまといます。従業員が100人必要な企業があったとすると、終身雇用制度の元ではだいたい70くらいを雇うに留めておくんです。なぜなら、終身雇用制度で社員の人数調整ができないため、仕事が少ない時期に人手が余ってしまうからです。逆に繁忙期には70人で100人分以上の仕事をしなければならないので、月150時間くらい残業が発生することになる。

みんなの介護 「転勤」と「長時間の残業」が、終身雇用制度のもとでは不可欠なんですね。そうなると、夫婦共働きが難しくなり、専業主婦が増え、結果として少子化が進んでしまう…と。

 例えば、旦那さんが九州に転勤になったからといって奥さんも一緒に転勤させるのは難しいですよね。夫が長時間残業する分、誰かが家庭に専念しないといけないし。ちなみに東大の社会学者・上野千鶴子さんは「専業主婦は社畜の専属家政婦だ」なんてというきつい言い方をしていましたが…。

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