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実は日本人よりこだわりが強い、欧米人の「美白」意識

朝吹 大 , CONTRIBUTOR

夏の海辺に漂うココナッツの甘い香りは、はるか昔の情景となり、中年の思い出のみに存在する。前回のUVの話の延長として、日本の夏のキーワード、「美白」について考えたい。

もはや季節ものではなく、美白は1年を通して美容全体のキーワードになっており、エステサロンの経営主軸はダイエットと美白になってきている。
 
先日、ある美容業界の友人から「美白は日本独特の美容じゃないかな。東洋人だから美白好きなのかも」という言葉を聞いた。美白とは果たして、日本に限ったキーワードなのだろうか。
 
美容でいう美白の前提条件には、UV対策という意識が存在している。UV対策が広がった結果、美白が人気トピックになっているのだ。日光浴が皮膚ガンなど皮膚の病気の原因になるなんて議論がなければ、もしかしたら日焼けは今以上に歓迎されていたのではないか。

日光浴をどんなに過激に行っても「健康にいい」「若くなる」となれば、今頃は日焼けサロンも大人気ビジネスで、厚労大臣自ら日焼けしているだろう。残念ながら日焼けし過ぎがカラダに良くないという現代医科学による正しい回答が、美白市場を伸ばしている。しかし、UV対策=美白だけでは、美白関連ビジネスや美容ビジネスも大きくならない。

日本人はどのような意味で、白さが好きなのだろうか。実は、欧米のような白色人種が多いところでも美白は人気ワードである。色素沈着が少なく日焼けしにくい白人種での場合は、UV対策より、どちらかというと美白を若さの象徴としている。透きとおるような肌が若さのイメージであり、若葉の透明感や瑞々しさを美白のイメージにオーバーラップさせているのだ。

肌にとどまらず欧米では歯の美白(ホワイトニング)も美容文化であり、金髪もまた、美白作業の一つである。金髪の欧米人女性の多くは元は茶色系の髪色だったりするが、脱色して金髪にする。白髪においても、綺麗にみえるように黄色成分を脱色して綺麗な白髪にしている。

こと白さに関していえば、実は意外にも、欧米人は日本人にも増して関心が高いのだ。例えば「白いシャツ」の色表記が「白」と記載されていても日本では誰も気に留めないが、欧米では「white」だけでなく「shimmer white」「eggshell」「snow white」「off white」「cool white」「milk」など日常での表現が多様で、自分の肌の白さにあった「白」を気にしながら文化を深めている。

シャツの生地だけではなく、壁紙の色や、ホームセンターの白ペンキの色段階の豊富さには驚くだろう。色ってこんなにあるんだなあ、なんて感心してしまう。
 
道が逸れた。美容ビジネスの白に話を戻そう。

日本における美白の原点は、いわゆる白粉である。京都の舞妓さんがしているあの化粧である。歌舞伎世界でも使われているので親しみがあるだろう。明治時代までは鉛が入った白い粉が主流だったので、顔に白粉をつけると逆に鉛害で肌が荒れる難物だった。肌荒れどころか、健康も害したので政府が鉛使用を禁止し、女性も健康になったのが明治の終わりの美白だった。

そもそも大袈裟にも見えるあの白さの由来は、芸術的感覚というより室内の暗さだとも言われる。昔は室内が暗く、特にに夜はろうそくしかないために限りなく暗い。多少なりとも白いメイクでないと、かわいい仕草や表情も相手に伝わらず、一般の女性との違いも宴席で表現できなかった。目の大きい宝塚メイクの感覚と一緒である。

また、日本に残る昔の西洋屋敷を見学すると、自分の目線以上の高さに鏡が多いことに気がつく。これは、天井から吊るされているろうそくのシャンデリアや初期の照明を、鏡で反射させて部屋全体を明るく見せる工夫だった。

写真撮影にも関係している。幕末の写真は、浅黒い肌の武士が写っていることが多い。当時は国民全体が日焼けしており、それが写真でも正確に表現されているのだ。美しい女性も写真になってしまうと、浅黒く苦労の表情が写ってしまう。これを回避して、できるだけ可愛く写真に写りたいと思った女心が、白粉であり美白ではないだろうか。今でいう画像加工アプリと同じなのである。
 
ところで美白は世界でも流行っているのだろうか。いわゆる日焼け止めでUV対策できるような日差しの量ではないアフリカ大陸はどうだろう。

日本だけではなく、欧米でも中近東でも、地中海でもアフリカでも、白は重宝され、高貴な色、尊い儀式の色という扱いが多い。清廉の象徴、真実の象徴が白である。汚れていない清潔さは白であり、汚れが落ちた清らかさも美容業界でのクレンジングの「美白」と同じ白色概念である。

白は高貴でオシャレ。白のスーツ、白色のビキニなど、男女ともにオシャレで格好いい人でないと普通は着こなせないファッションだ。

「ソワレブランシュ」というパリ発祥のオシャレなイベントがある。全身白い洋服でドレスアップした100人くらいが一堂に集まり食事をする会だが、ハイファッションのイメージになるのは白の持つ特殊性かもしれない。自然界には広い面積で存在しにくいものが「白さ」であり、それがたくさん集まった姿が特別に見えてしまうらしい。
 
美白と白の話の締めくくりに、歴史の面白さに触れてみたい。実は、”美白”の原点も太陽だった。紀元前何世紀も前のエジプトで、布地を太陽にさらして脱色し、白色にしたのが白さの原点と言われている。神である太陽の恵みをいっぱい受けると白くなる。尊い白い布地ができる。高貴で美しい白色の生地が完成する─。

太陽光線を浴びて日焼けした高貴な白の布地を手に入れた人間が、数千年たって太陽を避けながら白さを追求しているのが、人間社会の面白さかもしれない。もしかしたら人間も太陽を浴び続けると白くなるのかな。

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