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“承認ミニマリスト”というライフスタイル

 佐々木俊尚さん「ミニマリスト的生活が成り立つのは発達した流通と情報テクノロジがあるから成立する」に同意の声

 リンク先のtwitterまとめでは、「ミニマリストは、流通や情報の発達したテクノロジーに乗っかったライフスタイルで、脱-経済成長や脱-テクノロジー的なものではない」という佐々木俊尚さんのツイートに賛同の声が集まっている。

 対して、はてなブックマークには、いつものように色々なメンションがつけられ、目を楽しませてくれる。が、ミニマリストというライフスタイルが、流通技術や情報技術の発達に依拠していて、一見、モノの消費から遠いようにみえて、消費社会を突き詰めたようなライフスタイルであるという論旨は否定しようがあるまい、と私は思った。

「なるべく人間関係を持たずに承認を稼ぐ」

 それより、ふと思ったのは、「そういえば、ミニマリストの理屈って、人間関係とか、承認欲求とか所属欲求とか、そのあたりにも当てはまりそうだ」ということだった。

 ミニマリストがモノをたくさん持たずに生活できるのは、情報技術や流通技術が発展していて、いつでも・どこでもモノにアクセスできるからだ。そういう利便性がなければ、ミニマリストのようなライフスタイルは成立しないし、安定もしない。

 逆に言うと、いつでも・どこでもモノにアクセスできる環境が永遠不変である限り、ミニマリストというライフスタイルは理に適っている。モノをたくさん持たずに暮らすことは、整理整頓の問題や物理スペースの問題を解決できるという意味ではコスパが良い。社会全体にとってコスパが良いかどうかはさておき、少なくともミニマリスト当人自身は、モノを持たないことの恩恵に与れる。

 これと同じことが、「なるべく人間関係を持たずに済ませる人々」にも当てはまるのではないか。

 交通技術と情報技術がじゅうぶんに発展して、いつでも・どこでも他人にアクセスできるとしたら、人間関係は、どれぐらい必要だろうか?

 旧い社会では、人間関係と仕事や家族が密接に結びつきあっていて、人間関係を持たずに生きることは非常に困難だった。と同時に、その人間関係をとおして充たされるところ承認欲求や所属欲求は、友達関係の「つきあい」や共同体への忠誠といったものをメンテナンスしなければ充たしにくいものだった。

 旧い社会の人間が承認欲求や所属欲求を充たすためには、人間関係のメンテナンスという、重いコストを背負い続けなければならなかったわけだ。

 ところが、交通技術や情報技術が発展した現代では、人間関係のメンテナンスが必ずしも必須ではない。いや、現段階では、まだまだ仕事上の付き合いや友人関係といったものは重要だが、そういった既存の人間関係とはまったく無関係に、承認欲求や所属欲求を充たせる世の中になったのも、また事実ではある。

 そしてもし、既存のコネクションに頼らずに仕事が請け負えるとしたら。
 また、家族など要らないのだとするなら。

 ブログ、動画配信、Instagram、Twitterなどを使って、不特定多数から承認欲求を集めている人は少なくない。「認められたい」という気持ちを充たすためのメインの手段とまではいかなくても、“副収入”的に「いいね」を稼いで喜んでいる人なら、今日日はそれほど珍しくもないだろう。

 所属欲求も、いまではインターネットを使って簡単に充たせる。

 見ず知らずの者同士が寄り集まって、リツイートやシェアの輪が広がっていくのを眺めているだけで、私達は所属欲求を充たすことができる。誰かをみんなで炎上させたり、ネット上のムーブメントに乗っかったりすることで、いっそう所属欲求を充たすこともできる。

 もう一歩踏み込んで承認欲求や所属欲求を充たしたい人なら、オフ会で出会うという手もある。首都圏や首都圏に比較的アクセスの良い場所に住んでいる人なら、声さえかけあえばオフ会に出るのはたやすいことだ。

 なにより、こうしたインターネットを用いた縁は、人間関係をメンテナンスする必要が無い。もちろん、人間関係をメンテナンスして抱えたい人は抱えたってかまわない。だが、人間関係という、それなりに甲斐性がなければ続けられない重い荷物をわざわざ背負う必要は無いのだ。

 交通技術や情報技術がじゅうぶんに浸透したおかげで、なるべく人間関係を持つことなく承認欲求や所属欲求を充たす、いわば、“承認ミニマリスト”とでもいうべき生き方が可能になっている。

“承認ミニマリスト”の長所短所

  “承認ミニマリスト”の長所は、ミニマリストの人間関係版だ。

 つまり、インターネット等を介していつでも他人と繋がり、承認欲求や所属欲求を充たせるという前提にたって、人間関係をメンテナンスするコストを最小化できる。そのぶん、しがらみからも自由だ。自分の時間を、自分が考えたいように過ごすには、ある意味、最適なライフスタイルと言える。

 と同時に、ミニマリストが背負っている短所と同じような弱点を、人間関係の次元で背負うことになる。

 ミニマリストは、いつでも・どこでもモノにアクセスできるからこそ生活が成立する反面、ある日、災害等でモノにアクセスできなくなった場合には、モノを何も持っていないがゆえに真っ先に困窮してしまうだろう。モノへのアクセシビリティに高度に依存しているがゆえに、モノへのアクセスに少しでも支障を来してしまったら、ミニマリストはその影響を深刻に蒙ってしまう。

 “承認ミニマリスト”もそれと同じで、いつでも自分が承認欲求や所属欲求を充たせるという前提が成立しなくなれば、心理的に充たされない状態に陥ってしまうだろう。いつでも・どこでもネット経由で承認欲求や所属欲求を充たせるからこそ、心理的にやっていける反面、ある日、なんらかの理由でインターネットにアクセスできなくなったり、承認欲求を充たすための材料が無くなったりした場合、かなり困ってしまうのではないだろうか。

 私は、モノも人間関係も、ある程度は減らしたほうが生きやすくかろうとは思う反面、少なすぎてもいけないのではないか、とも思っている。テクノロジーの進歩によって、モノをたくさん溜め込んだり、人間関係をたくさんメンテナンスしたりする必要性が減っているのは結構なことだが、“なにごとも、過ぎたるは及ばざるがごとし”ではないか。それとも、こんな風に思う私は、旧い人間なのだろうか?

 いまどきの、インターネットで承認欲求や所属欲求を充たし慣れている人達が、このあたりをどう思っているのか、ちょっと気になる。

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