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佐藤優氏と片山杜秀氏がオウム、スプーン曲げなどを語り合う

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佐藤優氏(左)と片山杜秀氏

【佐藤優氏(左)と片山杜秀氏】

1990年代半ばのオウム真理教による一連の凶悪事件、そして“無差別テロ”の地下鉄サリン事件が日本に与えた衝撃は大きかった。その影響力は日本だけでなくロシアにも及んでいる。外務省でロシア担当の官僚だった作家・佐藤優氏と慶應義塾大学法学部教授の片山杜秀氏が、いまも続くオウム真理教とロシアとの親和性、関係について語った。

佐藤:麻原彰晃の定宿だったモスクワのオリンピック・ペンタホテルにプルシャを付けた連中が集まって話題になったり、モスクワ放送で「オウム真理教放送」というラジオ番組を流したりしていた。

そしてサリン事件の2、3年前から家族が入信して困っているという相談が日本大使館に寄せられはじめた。

片山:サリン事件前まで日本ではオウム真理教の攻撃性や狂気に気づいている人は少なかった。宗教学者の中沢新一さんや島田裕巳さんらもオウム真理教に理解を示していた。
(*注:バブル経済期に禁欲的な出家主義を取るオウム真理教と麻原彰晃に、宗教学者の中沢新一や島田裕巳、評論家の故・吉本隆明ら多くの文化人や知識人が共感を示す発言をした)

一般的にも神秘主義的でオカルト、超能力を売りにしているけど、平和的な宗教団体という認識でした。夜中に自宅のポストに麻原彰晃の伝記マンガ入りの広報誌が投げこまれていたりして、やや不気味にも思いましたが。

そういえば、雑誌でキーレーンについて書いたらオウムの広報から電話で次の催しに誘われました。私の電話番号をどうやって知ったのか……。

◆1000年に一度の大世紀末


佐藤:ロシアではオウム真理教の危険性は十二分に理解されていました。それはオウム真理教のドクトリンが、19世紀末の思想家・ニコライ・フョードロフの影響を受けているから。

モスクワのソクラテスと呼ばれたフョードロフは、本がたくさん読めるからという理由でロシア中央図書館で住み込みで働いていた。彼のもとにはドストエフスキーやトルストイらが訪ねています。

キリスト教ではイエス・キリストとともにアダムとエバ以降のすべての人が復活すると信じられていますが、フョードロフは自然科学の発達によって近未来に万民が復活すると考えた。

ただし万民が復活すると地上に土地と空気が足りなくなる。だからほかの惑星に移動しなければならないと主張した。その思想はアポロ計画やソユーズ計画に活かされ、やがてフョードロフはロケット工学の父と呼ばれるようになる。

片山:一種の終末思想ですね。オウム真理教はフョードロフの思想で理論武装して、ロシアでの布教に活かした。ロシアから輸入した思想をロシア人が喜ぶ形で循環したわけですね。

佐藤:その通りです。その万民復活の終末思想が、オウム真理教のポアの論理とつながっていくんです。

ルターはドイツ農民戦争で「権力に反抗する農民をできるだけ早く殺せ」と指導しました。権力に刃向かって傷ついた魂は復活できないから、魂が傷つく前に殺せ、という論理です。そのロジックはオウムのポアに活かされている。

大量虐殺やテロは単なる恨みや辛みから行われるわけではありません。背景には必ず全人類救済事業のような思想があるんです。

片山:そもそも終末論は日本人の時間意識、歴史意識にはなじみにくい。「言霊幸ふ国」というくらいで天皇陛下がお言葉を発し続けているかぎり、今の秩序が永遠に続くと考えたがるのが古代からのこの国の思想なのですから。

その伝統的感覚からかなり離れたのが「1960年代生まれの世代」だと思うのです。私も佐藤さんも多くのオウム信者と同じ1960年代前半生まれ。私たちは1970年代にブームを呼んだ、1999年に人類が滅亡するという「ノストラダムスの大予言」に少年期に引っかかった世代でもある。

佐藤:しかも1999年は単なる世紀末ではなく、1000年に1度の大世紀末でしたからね。

1895年にイギリスで刊行されたH.G.ウェルズの『タイム・マシン』も終末論の影響を受けて世紀末の雰囲気を色濃く反映した小説でしたが、日本では単なる時間旅行としてしか読まれなかった。でもその100年後、日本人は終末論を自然に受け入れるようになった。

片山:そうなんです。私たちの世代は終末思想を意識せざるをえない状況で育った。私の場合は、大阪万博開催が7歳。そのころまでは経済成長と科学文明の夢が純粋に信じられていた。

しかしその3年後、オイルショックが起きてすべてがひっくり返った。オイルショックの影響で停電や節電、テレビの放送時間の短縮なども行われた。近い将来には石油が枯渇するとカウントダウンして、科学文明の限界をすり込まれた。文明は破綻する、人類は滅亡する、と。

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