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こどもフジロックは、こどもをしつける

■子どもというコンセプトほど、ロックというコンセプトに近いものはない

今年もフジロック・フェスティバルがやってきた。フジロックは去年あたりから「こどもフジロック」という名前で、親子連れの客をターゲットにしているようだ(「こどもフジロック」って何だ? ライブ聴けなくても格別な楽しみ方)。

僕はフジロックに1度だけ行ったことがある。それはたしか2003年の、ビョークや渋さ知らズやアンダーワールドで盛り上がった年だ。

それまで僕は別のフェスにも行っていたが、その年のフジロックは格別で、特に渋さ知らズのステージには圧倒された。CDで渋さは知っていたが、フジロックのあの雰囲気の中、雨に打たれつつ、あの渋さの曲群を聞いたことは、僕の人生のになかで格別の体験となっている。

だからフジロックについてごちゃごちゃ言いたくはないのだけれども、子どもとロックが並ぶ「こどもフジロック」という名称にはずいぶん考えさせられるものがある。

そう、子どもというコンセプトほど、ロックというコンセプトに近いものはなく、またロックにとって、子どもというコンセプトほどロックなものはない。

また同時に、子どもというコンセプトほど社会迎合的な概念はないし、ロックというコンセプトほど現代社会に迎合しているものはない。

両者は非常に似ている、また、両者はいつになっても危険な概念でもある。それを単純にくっつけるのは、僕にとっては安易過ぎる。そう、「こどもフジロック」は、あまりにも考察のない言葉で、だからこそロック過ぎる言葉なのかもしれない。

■アタッチメント

僕が子どもを見ていて、あるいは人間の超初期を見ていて一番おもしろいのは、「アタッチメント」形成の時期(0.5~1.5才)だ。アタッチメントは日本では「愛着」と訳されるが、「くっつく」あたりのもう少し平易な抽象用語のほうを最新の発達心理学では提起されている。

僕もそう思う。「愛着」にはある種の規範性・道徳性がまとわりつき、説教くさい。それよりも、アタッチメントという、よくわからないが何となく感覚的にわかってしまう「くっつき」感ただよう言葉のほうが直接的に届く。

2才までは乳児院、3才以降は児童養護施設で暮らさざるをえない、虐待被害等でついていない子どもたちは、このアタッチメントを獲得できないまま思春期を迎える。そうするとやはりどこかでひずみを生じ、他人に対するふるまいが不安定なものになる。

あるいは不登校や非行、または家庭内逸脱(親のカネを盗む等)行為を繰り返す。

人間とはせつないもので、幼少期に圧倒的「他者への信頼」体験がないと、その後の人生あるいは人間関係が不安定なものになる。だから、アタッチメントの形成は超重要なのだ。

だからこそ、このアタッチメント期を無事通り過ぎた子どもに対して(まあほとんどの子どもがそうだが)、ホンネを言うと、僕はあまり興味がない。

そして、「こどもフジロック」は、こうしたアタッチメントを無事獲得した小さな人々(子ども)がどうやら対象のようだ。

■日本のロックがもつロマンティシズム

アタッチメント獲得以降、人間は「社会」に入っていく。そして社会は、また社会の「尖兵」である親は、「しつけ」と称した社会規範を小さな人間たち(子どもたち)に与えていく。それが「子育て」と呼ばれるものだが、これは非常につまらない作業でもある。

基本的な他者への信頼を獲得してもらうアタッチメント期は非常にスリリングで、人間初期のこのわずかな時期(1年程度)を逃せば、一生かかってもとりかえすのが困難なほどの一瞬にして過ぎ去る時期だ。このわずかな1年のあいだ、べたーっと愛着し続けることができるかどうかで、その人の一生がある意味決まる。

そして、貧困世帯や下流世帯になればなるほど、こうしたアタッチメント期の重要性が感覚的にわからないことが多く(なぜなら親自身がそうした愛着形成されていないから)、うかつにもアタッチメントしないまま3才にさせてしまう。

ラッキーにもアタッチメントを形成でき、その後の「子育て」を体験する多くの子は、社会規範という「子育て」の中心に放り込まれる。社会規範のひとつは「学校に行く」ということなども含まれ、それはロックにとって「敵」のひとつだ。

だから、子どもとロックは親和性が高いのだが、同時に、ロックがもつ(特に日本のロックがもつ)ロマンティシズム(恋人・家族への愛の崇拝等)は、通俗的社会規範そのものだったりする。

我が国では、ロックそのものが、子どもが獲得を迫られる社会規範の裏ジャンルである。

■こどもフジロックはあやしい

フジロックはそのまったり感からずいぶん人々を癒すのではあるが、同時に、日本のロックがもつロマンティック・リベラリズムのようなものを体現している。そこに、社会規範を植え付けられるアタッチメント期をすぎた子どもたちと見事にマッチする。

ロックのくせして、それは子どもを規範あふれる「人間」にしていく。ロマンティックなリベラリズムという社会規範(たとえば通俗的「愛」の重要性等)をさりげなく子どもに忍び込ませる。

こどもフジロックはだから、僕にはあやしい。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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