記事

【佐藤優の眼光紙背】福島原発に関する報道協定を結べ

 福島第一原発、福島第二原発は依然として危機的状態にある。政府、国民、マスメディアが一体になってこの危機を乗り切らなくてはならない。12日の福島第一原発第1号機をめぐる報道で、政府の国民とマスメディアに対する情報提供が遅れたことを各紙は厳しく批判している。

 例えば、朝日新聞は
こうした政府の対応について、災害時の心理に詳しい広瀬弘忠東京女子大教授(災害・リスク心理学)は、「パニックを恐れて、余計な情報は出さないという心理が透けてみえる」と話した。/避難指示の範囲が拡大された理由の説明も遅れた。広瀬氏は「わかること、わからないことをはっきりさせて、説明するのが危機管理の基本だ。大変なことが起きているのは、すでに皆がわかっている。私たちのリスク観はもっと成熟しているのにバカにしている」と批判した。(3月13日asahi.com)

と報じた。朝日新聞は、広瀬教授の口を借りて、朝日新聞記者たちの感じている不満を読者に伝えているのである。

 また、筆者が親しくする某マスメディア幹部は、「政府は初動の段階でマスメディア対応を誤った。『大丈夫だ。対応はできている』という方向で説明を行ない、原子力発電に理解のある記者たちが、その方向で記事を書いているが、昨日の午後になって『違うじゃないか。だまされた』という気持ちをこれまで政府の立場に理解を示していた記者ほど強く持つようになっている。政府批判の方向性は止まらないであろう」と述べていた。確かに記者の職業的良心、マスメディアの内在的論理に従えば、マスメディアが政府批判を強めるのは当然の流れである。

 しかし、ここでマスメディア関係者に考えてほしいことがある。いまは非常事態だ。1人の日本人として、現在の状況がはらむ内在的危険を理解して欲しい。戦後、日本の国家システムは近代主義に基づいて作られている。そこで中心となるのが個人主義と生命至上主義だ。個人の生命と職務の遂行が天秤にかかった場合、個人の生命の方が重い。従って、国家も民間企業も、職務の遂行のために命を捨てる命令を行うことはできないのである。しかし、今回の東日本大震災による被害を極小にするために、文字通り命を賭して職務を遂行してもらわなくてはならない人々がいる。福島第一原発に関しては、東京電力の原子力専門家や経済産業省、原子力安全・保安院の文官、技官には無限責任(仕事のために命を差し出すこと)が日本国家と日本人同胞のために求められている。菅直人首相は民主的手続きに基づいて選ばれた日本の最高権力者である。ここで重要なのは菅直人という固有名詞ではなく日本国内閣総理大臣(首相)という役職だ。現行の法体系に不備があるならば、日本国家と日本人同胞を救うために首相は超法規的措置に踏み込む必要がある。マスメディアが責任追及の姿勢をとると官僚と原子力専門家が萎縮する。そして、規則やマニュアルの範囲内でしか行動しなくなる。これらの規則やマニュアルは生命至上主義に基づいて作られているので、命を捨てる職務は想定されていない。規則やマニュアルの想定をはるかに超える事態が生じている。破滅的結果が生じることを防ぐためには官僚や東京電力関係者を萎縮させてはならない。マスメディア関係者は是非そのことを理解してほしい。国民、マスメディア、政府が一体となって危機を脱する方策を、誠実に探求することがいま求められている。

 そこで具体的提案がある。福島第一原発、福島第二原発を巡り政府と主要マスメディアが緊急に報道協定を結ぶことだ。政府は、持っている情報を迅速にマスメディアに対して提供する。確認がとれた情報だけでなく、未確認情報や錯綜する情報もただちに提供する。ただし、マスメディアに対しては、それが報道された場合、国民心理にどのような影響があるかについて十分配慮した報道を行うよう要請し、いくつかの合意をする。こうすれば、国民の知る権利と国益、公益の折り合いをつけることができる。
 まさに日本国家と日本民族の存亡の危機がかかっている。政治家、官僚、マスメディア関係者も「われわれは同胞である。日本の生き残りはわれわれにかかっている」という意識をもって職務を遂行して欲しい。(2011年3月13日脱稿)

■関連記事
大和魂で菅直人首相を支えよ
国家翼賛体制の確立を!

■プロフィール
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・元外交官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
近著に「3.11 クライシス!」など。

トピックス

ランキング

  1. 1

    加計学園の「嘘」は極めて不自然

    大串博志

  2. 2

    新潟少女殺害 容疑者家族に疑問

    女性自身

  3. 3

    内田前監督に日大OB「情けない」

    文春オンライン

  4. 4

    なぜ国民は安倍内閣支持するのか

    田原総一朗

  5. 5

    加計学園はマスコミに全てを語れ

    早川忠孝

  6. 6

    「ツンデレ外交」失敗した北朝鮮

    自由人

  7. 7

    夫の年収1500万円でも半数は不満

    キャリコネニュース

  8. 8

    日大選手の寛大な処分求め嘆願書

    AbemaTIMES

  9. 9

    悪者から逆転した日大選手の謝罪

    かさこ

  10. 10

    日大と首相に共通するルール破り

    志村建世

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。