記事

誰も考えていない、憲法改正発議後の“広報”の件 - 南部義典

1/2

「スケジュールは変えません」(安倍)と言い張るが…

 東京都議会議員選挙は、安倍一強政治がもたらす傲り、緩みに対する批判、不満が一気に凝縮した結果となり、自民党の歴史的大敗北に終わりました。一つの自治体議会の選挙ではあるものの、国政次元で強烈なダメージを与えることができたと、気分的にスッキリした方も多いことでしょう。週明けに公表された世論調査結果でも、内閣支持率は3割台前半に、軒並みダウンしています。

しかし、安倍内閣、自民党が今後、謙虚な態度に改まり、真摯かつ丁寧な国会対応を重ねていくことは、まったくと言っていいほど期待できません。6月22日、憲法や国会法の規定に則り、野党が適法に要求した臨時国会の召集は、現にこの3週間、目途が立たないまま放置されています。「数の力」に頼りきる、立憲民主政治の破壊者としての姿勢(体質)は、基本的にこれからも変わらないでしょう。

 自民党内部で進められている「憲法九条改正」論議についても、およそ同じことが言えます。常識的に考えれば、自民党に対してこれほどの逆風が吹いている中で、公明党や他の野党との横一線の協調を要する憲法改正の発議が、具体的なスケジュールに従って粛々と進んでいくはずがありません。党内外からも様々な異論が出ていることも踏まえ、ただちに先送りすべき案件であるはずです。

ところが、安倍総理は、「ことし秋の臨時国会で、憲法改正案の原案(自民党案)を提出するスケジュールは変えません」と先週、毎日新聞(7月4日付)のインタビューで言い張りました。自身に対する求心力維持の手段として「憲法改正」が使われるのは、決して今に始まったことではありませんが、主権者の一人として、憤りを超えて、恥ずかしい思いさえします。

 自民党は、国会が発議すべき憲法改正案さえ上手くまとめることができれば、日程上、何の狂いもなく、2019年中に「第一回憲法改正国民投票」を行うことができると考えているフシがあります。しかし、実際には、そんなに甘く、単純な話では済みません。国会の役割は、憲法改正の発議をすれば「まな板の鯉」のような状態になりますが、それで万事終了というわけではないのです。国会が憲法改正の発議をした後、投票日までの間、国民に対して、憲法改正案に関する広報を行わなければならないことが、国会法、国民投票法で明確に定められています。

国民投票広報協議会による広報が、まったくイメージできていない

 憲法改正の発議の後、国会には、国民投票広報協議会という組織が置かれます。協議会は、衆議院議員10名、参議院議員10名、計20名の議員から成ります(議員数の割当ては、会派の所属議員数に応じて按分されます)。また、協議会には事務局が置かれ、衆参の職員が若干名、その事務を担当します。

 協議会が行う事務としては、法律上、(1)憲法改正案の広報番組の放送、(2)憲法改正案の広報広告の掲載、(3)国民投票公報の編集、発行、という三本柱が定められています。

 現在、これら(1)~(3)のイメージがまったく出来上がっていない中、自民党は憲法改正案の中身の話だけに没頭しています。何がそんなに問題なのか、具体的に説明していきます。

 選挙の期間中、NHKなどにチャンネルが合っていると、候補者の政見放送のほか、候補者の経歴に関して、アナウンサーがその原稿内容を読み上げる経歴放送が流れてくることがあります。(1)憲法改正案の広報番組は、政見放送や経歴放送の国民投票版といってもいいでしょう。

①憲法改正案とその要旨、その他参考となるべき事項、②憲法改正案に対する賛成の政党等、反対の政党等が行う意見広告、という内容で構成されます。しかし現状は、番組内容の大枠すら、イメージできていません。さらに、その時間尺として、10分なのか、15分なのか、もっと長くて30分とか、60分とか、どれくらいにするかも、まったく決まっていません。投票日までの期間中、放送される回数についても未定です。

 (2)憲法改正案の広報広告は、新聞広告をそのままイメージしていただければいいでしょう。内容は(1)と同じですが、それが投票日までの間、何回くらい掲載されるのか、そのスペースは全面(見開き)かどうか、全国紙・地方紙の割り当てをどうするかなど、細かいことは何も決まっていません。

 (3)国民投票公報は、選挙の際に配付される選挙公報の国民投票版と考えていただければいいでしょう。①憲法改正案とその要旨、②憲法改正案に係る新旧対照表その他参考となるべき事項に関する分かりやすい説明、③憲法改正案を発議するにあたって出された賛成意見、反対意見、という内容で構成されます。

選挙公報は、各候補者、政党が必ずしも十分とはいえないスペースに、経歴や政策をイラスト付きで盛り込むスタイルが定着していますが、国民投票公報は、あまり単純化した紙面構成はできないはずであり、政党のマニフェスト(小冊子)のごとく、その頁数は増えると考えられます。国民投票公報は、有権者世帯に投票日の10日前までに配布することは決まっていますが、その体裁などは未定です。

あわせて読みたい

「憲法改正」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    中国が密かに米朝開戦の準備か

    一般社団法人日本戦略研究フォーラム

  2. 2

    イチローは引退して指導者になれ

    幻冬舎plus

  3. 3

    松居一代に引っかかったマスコミ

    大西宏

  4. 4

    希望に支持が集まらないのは当然

    早川忠孝

  5. 5

    アラフォーは一生貧困?NHKに反響

    キャリコネニュース

  6. 6

    体外受精はセックスに当たるのか

    井戸まさえ

  7. 7

    退位までに韓国訪問を願う両陛下

    NEWSポストセブン

  8. 8

    満席でも…スタバの強みは中毒性

    内藤忍

  9. 9

    堀江氏を牢獄に送った国家の裁量

    NEWSポストセブン

  10. 10

    相模原殺傷 犯行決意させた入院

    篠田博之

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。