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女性が子供を産む奴隷に 米ドラマ「ハンドメイド・テール」の衝撃

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密告に怯えながら暮らす「侍女」たち

チャンネル4の「ハンドメイド・テール」のサイトから 主人公の「オフレッド」

今年4月、米国の動画配信サービス「Hulu」で放送されて絶賛を浴びたディストピアドラマ「ハンドメイド・テール」(Handmaid’s Tale=「侍女の物語」が、英国でも5月から放送中だ。「ハンドメイド・テール」は女性たちがその権利をことごとく奪われ、子供を産むだけの存在となった世界を描く。

子供を産むにはその前に性行為が必要になる。このドラマの中でセックスは子供を産むためだけの儀式であって、感情を持つ人間と人間の営みではなくなっている。

厳格な宗教の教えに従って住民全員が感情を押し殺し、誰かに密告されないかと恐怖におののきながら暮らす社会は、男性にとっても、女性にとっても息詰まるような世界、まさに「ディストピア」だ。そんな世界の恐ろしさが美しい映像で語られる。

原作はカナダの小説家マーガレット・アトウッドが書いた「侍女の物語」(1985年)である。発売直後にベストセラーになり、カナダ総督文学賞やアーサー・C・クラーク賞などを続々と受賞している。邦訳版は新潮社(1990年)、早川書房(2001年)から出版されており、映画化(2009年)もされている。

原題の「ハンドメイド」の意味は「侍女」であるため、「ハンドメイド・テール」はこれまで「侍女の物語」として訳されてきた。侍女と言うと「貴人に使えて身の回りの世話をする女性」という意味になる。しかし、アトウッドの小説の中の「ハンドメイド」は「侍女」と言う言葉の意味を著しく超えている。

例えば、主人公の劇中の名前は「オフレッド」。これは「オブ・フレッド」、つまり「フレッドの」という意味だ。居住している家の家長の名前がフレッドなので、「フレッドのもの」という意味になる。主人公には人間としての権利や自由が認められず、持ち主の私有物になる、つまり「奴隷」であることを示している。

テレビ版「ハンドメイド・テール」の概要をたどりながら、その世界を紹介してみたい。一部、ネタバレになることをご了解願いたい。

舞台は、近未来のアメリカに設立された宗教国家

ドラマは夫婦と子供が森の中を逃げ回る場面から始まる。誰に追われているのかは分からないが、相手は銃を抱えているようだ。途中で、家族はバラバラになり、女性はとうとう捕まってしまったー。

目が覚めた時、主人公の女性「ジューン」は「オフレッド」として登場する。全身覆う真っ赤なドレスを着ている。頭髪は白いキャップに隠されている。ジューンと言う本名は、この世界では全く使われなくなる。

オフレッドは「司令官」と呼ばれるフレッド・ウォーターフォードが主人となる屋敷の新しい「ハンドメイド」である。「オフレッド」と言う名前は「フレッドのもの」という意味だ。

オフレッドは赤いフード付きマントを着て、つばの広い白い帽子をかぶり、そっくりの恰好をした「オフグレン」とともに買い物に出かける。一人では外出はできない。二人組で外出するのは互いを監視するためだ。屋敷の門には銃を抱えた男性がいる。二人のハンドメイドはひそひそと小さな声で話しながら買い物場所にでかけてゆく。通りにも武装男性があちこちにいる。

オフレッドたちが住んでいるのは「ギリアデ共和国」。設定は近未来のアメリカで、キリスト教原理主義によって生まれた宗教国家だ。ほかの宗教は認めず、有色人種は迫害される。国民は社会上の役割によって異なる制服を着ることが義務化されている。

環境汚染や原発事故などによって出生率が低下し、妊娠可能な女性は限られている。この枠に入った女性たちが「ハンドメイド」として訓練を受け、支配層の「司令官」の家庭に送られる。オフレッドとオフグレンは歩いているうちに、壁がある場所に来る。壁には社会のルールに従わなかったために絞首刑で処刑された数人の姿がある。

口答えには罰が下る

作品内では、統制社会の怖さが次第にじわじわと迫ってくる。

赤い装束に白いキャップをかぶったハンドメイドたちは教室に集められる。「おばさん」と称する女性にハンドメイドが何たるかを教えてもらうためだ。口答えは許されない。このルールを破ったハンドメイドの1人が男たちに連れて行かれる。後の回で、この女性の片目がえぐり取られたことが分かる。

言ってはいけないことを言えば、罰が下る。反抗的なふるまいをすれば、電流が流れる棒を「おばさん」がハンドメイドに押し当てる。ベッドに体を縛り付けられ、はだしの足に電流棒を当てられることもある。ハンドメイドの体は司令官の子供を産むためにあるわけだからレズビアンの恋愛はご法度だ。

司令官との「儀式」は感情を持った人間同士の行為ではなくなっている。

儀式が行われるのはベッドの上だ。ハンドメイドはベッドの端に座り、体を横たえる。長いドレスをたくし上げて脚を広げ、司令官がやってくるのを待つ。司令官はズボンから下半身を出し、ハンドメイドの両脚の間に入る。

横たわるハンドメイドの体をベッドの上に座って支えるのは、司令官の妻である。司令官が体をハンドメイドに押し付ける度に、ハンドメイドの両腕を後ろから抱える格好の妻がその衝撃を感じながら、儀式の遂行を間接体験する。ハンドメイドのオフレッドは無表情だ。

オフレッドが望むのは、離れ離れになった娘と再会すること。夫は逃走中に撃たれて亡くなったと聞いている。「娘には会えるまでは、絶対にくじけない。生き残ってやる」とオフレッドは自分の心に誓っている。

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