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「経営陣と管理職は時間の20%を人事に使うべき」と大前氏

【経営者の時間配分が会社の未來を分ける】

 企業に対し、「社会貢献」「社会的責任」が求められて久しい。投資家たちも、就職先を選ぶ学生たちも、「この会社はどんな社会貢献ができるのか」といった視点で企業を見るようになった。しかし、大前研一氏は、「人事への力の入れ方」こそ「良い会社」を判別する指標になると指摘する。

 * * *
 世間では“良い会社”の概念が変化しつつあるようだ。その背景にあるのは「ESG投資」の世界的な広がりだ。これは企業のビジネスを、

・環境(Environment)
・社会(Social)
・企業統治(Governance)

 の観点で分析し、その評価が高い会社のほうが将来の成長が見込める“良い会社”とみなして積極的に投資するというものだ。日本でも住友商事をはじめ多くの企業が「今後は利益だけでなく社会貢献だ」と言い始めた。

 もちろん企業は「社会の公器」であり、社会的責任(CSR=企業が事業活動を通じて自主的に社会に貢献する責任)があるから、それを重視するのは大切なことだ。しかし、私が考える21世紀の「良い会社」の本質的な条件は違う。

 経営コンサルタントを40年以上にわたって務めてきた経験から言えば、その会社が「良い会社」かどうかは、経営者の時間配分を見れば、だいたいわかる。

 経営者が社内の制度改革やシステム作りに多くの時間を使っている会社は、良い会社になる可能性が高い。一方、経営者がメディアに取り上げられやすい企業戦略やM&Aばかりを考えている、あるいは経済団体活動などの対外的なことに多くの時間を使っている会社は、良い会社である可能性が低い。

 とくに、経営者が人事制度を疎かにして時間を使っていない会社は、良い会社にはならないと思う。だが、残念ながら日本企業の大半はそうなっているのが実情だ。

 たとえば、私はコンサルティングを依頼されたら最初に人事ファイルを見せてもらうのだが、ほとんどの会社は入社時にどこの部署に配属され、その後どこの部署に異動したかということくらいしかわからない。その部署でどんな仕事をして、どのような成果を出したか、同僚や部下との関係はどうだったのか、何を改善してどんなスキルを身につけたらよいのか、といった具体的な評価と課題が全く書いていないのだ。

 それは経営陣が、人事の重要性を理解していないからである。このため、上司が部下を評価するために資料を残す際、きちんとやったら数日はかかるはずなのに、1時間ほどで10人分をいい加減に書いているというパターンがほとんどなのだ。

 言い換えれば、その社員が来年1年間はどんな努力をすべきなのか、何が達成されたら上のレベルの仕事ができるようになるのか、というキャリアプランとキャリアパスがそもそも存在しないのである。これでは適材適所の人事などできるはずがない。だから日本企業では往々にして、上司に対するおべんちゃらがうまい太鼓持ちタイプや腰巾着タイプが、能力に関係なく高評価されて出世する。

 自社の「人的資源」を最大限に活用するためには、経営トップが人事に相当な時間を費やさなければならない。

 たとえば、今回退任が決まったGE(ゼネラル・エレクトリック)のジェフリー・イメルトCEOは毎週金曜日の夜は必ず、将来のリーダー候補250人の中の1人と1対1で夕食を共にしている。250人全員と会食するためには5年かかるわけだが、その結果、イメルト氏の頭の中には、誰がどのような経験をしてきたのか、どういう仕事が得意なのか、人品骨柄はどうなのかといった一人ひとりの詳細なプロファイルが出来上がる。

それを基に彼は250人を50人に、さらに50人を3人に絞り込み、後継者を育てていく。これはジャック・ウェルチ前会長のやり方を踏襲したものであり、GEが優良企業であり続けている理由がそこにある。

 つまり、会社は「人事がすべて」なのだ。そのために経営陣は、社員の能力や人となりの“入力”に時間を使わなければならない。人事部に任せたり、人事部長に評価を聞いて判断したりしているようでは、決して「良い会社」にはなれないのだ。

 基本的に経営陣と管理職は、最低でも自分の時間の20%を人事のために使うべきだと思う。

※SAPIO2017年8月号

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