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労働市場が流動的ではないから長時間の残業、地方への転勤、転職の不利など問題が生まれている。年功序列と終身雇用の廃止が必要 - 「賢人論。」第41回城繁幸氏(前編)

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辛口だけれど軽妙。鋭い論旨が人気の人事コンサルタント・城繁幸氏を迎えた第41回。“雇用制度”を軸にした著書「若者を殺すのは誰か?」(扶桑社新書)では、若者たちが経済的に虐げられる社会構造を浮き彫りにした。そんな城氏に日本の雇用制度の特徴である“年功序列”と“終身雇用”について、その問題点とルーツを語ってもらった。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

流動的でない労働市場が転職の不利や無茶な転勤を生む

みんなの介護 人事のスペシャリストである城さんは、日本の雇用制度の現状をどう見られていますか?

 日本の労働環境は非常に特殊ですよね。以前『半沢直樹』というドラマがありましたが、外国の人には全く理解できないそうです。「なぜ転勤を命じられると土下座をするの?嫌なら転職すればいいのに」って(笑)。

そもそも、東京に就職しているのに地方や海外へ左遷されることがおかしいんですよ。他国の企業では、課長クラスの人が遠方へ飛ばされることはまずありえません。例えばアジア統括責任者としてフィリピンへ栄転するなど、前向きな転勤ならありますけどね。

みんなの介護 なぜそのような無茶な異動が生じてしまうのでしょうか?

 終身雇用制度によってひとつの会社に居続けなければならないので、逃げ場がないんです。仮に転職市場が流動的でいつでも転職できるという環境なら「転勤は嫌なので辞めます」と言えばそれまでです。そうなれば、よっぽど辞めさせたい場合を除いて、そもそも企業側もそう簡単には転勤を命じなくなるでしょうし。

みんなの介護 現在は転職をすることがわりと一般的になったような気がするのですがどうでしょうか。

 転職のハードル自体はここ10年でものすごく下がりました。ただ“同じ待遇のポストへの転職”ということに限るなら、その難しさは何も変わっていません。日本の雇用環境の中で転職をすると、ほとんどの場合、前職よりも給与や役職が下がってしまうんです。

若い人だけでなく、40歳以上の人が転職するケースも最近だいぶ増えてはいますが、その多くは新興企業へのものなんです。新興企業はとにかく人材を欲しているため、経験があって優秀なら年齢に関係なく雇ってくれます。

みんなの介護 日本ではなぜ転勤をすると待遇が下がってしまうのでしょうか。能力にふさわしい扱いを受け取ることは本来、制度として当然のように思うのですが…。

 そもそも日本企業の多くは転職を前提とした人材育成をしていません。つまり、自社に特化した形に社員を育てる場合が多いんです。そのため、企業Aで培った技能は企業Bに移ると通用せず、労働市場における価値が下がってしまうんです。

業務の範囲を明確化することで残業が減り、生産性も上がる

みんなの介護 せっかく積んできた経験を転職先で活かせないというのはもったいないですね…。

 海外の企業の場合だと、ふつう「職務記述書」を交わして何の仕事を与えられるのか、それに対していくら支払われるのかがきちんと契約されます。だから評価も明確に下されるし、労働市場で決められた相場に基づいた給与をもらうこともできる。

しかし日本だと、どんな仕事を任せられるのかが決まるのは採用後なんです。たまたま配属された部署で、目の前の仕事をみんなで寄ってたかってやる。しかも時期によって仕事がどんどん変わるんです。

みんなの介護 社員1人当たりに与えられる仕事があまりに雑多で偶然的なので、客観的な評価が困難になり、一貫したスキルを身に付けることもできないんですね。

 ですから、大手名門と呼ばれる企業からリストラされ、40代で初めての転職活動をするような人は、まず自分に何のスキルがあるのかわからないんだそうです。もちろん十何年も働いていたんですから何らかは身に付いているはずなんですが、それを明示することができない。それをまとめて文章にするのも紹介会社のコンサルタントの仕事のひとつなんですけどね。

みんなの介護 日本でも客観的な評価制度を可能にするにはどうすればいいのでしょうか。

 まずは年功序列をやめて「役割給」に一本化することですね。例えば人事部なら、「東大と一橋と慶応から、この条件を満たす学生を何人採用してくださいね。それを達成したらいくら支払いますよ」というような具体的な形でミッションを与えるんです。いわば“仕事に値札をつける”というイメージですよね。

業務の範囲が明確になると、自分の仕事の終わりも明確になるので無駄な残業をさせられるリスクが減ります。それに「東大卒者を獲得するウエイトを何人増やした」とか「より優秀な学生を何人採用した」など仕事の“質”を数的に評価し、報酬を出せるようにもなりますよね。すると、給料を増やしたい人はだらだら残業するのではなく、生産性を高めようという方向へ発想がいくようにもなる。

みんなの介護 営業部などはそのような数値的な目標に応じて評価する仕組みが、すでに採用されているイメージがありますが。

 車のディーラーなど個人向けの営業はそうかもしれませんが、法人相手の営業となるとチーム総出でやりますから事情が違ってきます。そういう場合は「課全体で売上10億円」のような数値目標を課長などの役職者だけに与え、部下たちには「新規獲得」「顧客のメンテナンス」など担う役割をさらに細かく割り振る、という形を取るのがベストだと思いますね。

みんなの介護 そのような評価制度は、まだ日本の企業に根付きそうにないでしょうか?

 よくあるのは、評価制度を取り入れようとするんだけれども、従来の年功序列の骨組みを残してしまっているせいでうまく機能しないというパターンですね。バブル前に入社した50代前くらいの人たちは、極端な話、目標が達成できようができまいが1000万円くらいは給料をもらっているんです。彼らは以前の労基法に守られているので、よほどの損失を出すことがない限り賃下げされないことになっているんです。

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