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JASRACは突然やってくる 強権的手口に音楽教室側が怒りの集団提訴 (中島みなみ)

東京・渋谷にあるJASRACの本部(右から2番目の建物)。(撮影/馬杉峰子)

音楽教室と日本音楽著作権協会(JASRAC)の対立は、ついに法廷闘争に至った。ヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所が中心となり設立した「音楽教育を守る会」(以下、守る会)の15団体249社は6月20日、音楽教室でのレッスンには著作権法に定める演奏権は及ばないとして、JASRACに徴収権はないことを確認するための訴訟を東京地裁に提起した。

両者の主張は法解釈の食い違いだ。著作権法は「公衆」に聞かせることを目的とした演奏権は著作者にあると定める。JASRACは音楽教室には不特定多数の受講生がいて「教室は公衆」と主張。音楽教室から年間受講料の2・5%を使用料として来年1月から徴収すると宣言。6月7日、文化庁に使用料規程を届け出た。これに対して守る会は「音楽教室での練習や指導のための演奏は該当しない」と、真っ向から対立する。

今年に入って激化したように見える両者の対立だが、現場の音楽講師はこう見る。

「JASRACの主張を黙って聞いていたら、奪われるばかり。音楽教室が存続できなくなるという危機感がある」

その強硬な徴収ぶりが長年積もり積もって追い詰められた結果だと、愛知県在住の経歴30年の女性講師は言う。大手音楽教室からスタートして10年後に独立。現在は数カ所の教室を経営し、小学校低学年を中心に教えている。

「最初は楽譜を買っていないという指摘だった。10年以上昔は、発表会でも楽譜をコピーして使うことも。これは決してほめられたことではないが、こういう状況に前触れなく突然、JASRACが音楽教室に査察のように入ってきて、著作権使用料を支払っていないと、賠償金をとっていった」

今も語り継がれているという手口はこうだ。

【要求は執拗で強権 美容院のBGMも!】

「発表会が近づいてきているのに、楽譜が売れないのはおかしい。教室のコピー機のコピー枚数を開示しろというわけです。それで発表会前にコピー枚数が異常に増えていることを根拠に、大手の音楽教室は複数年分で1000万円単位の解決金を支払うことになった。その時、閉鎖に追い込まれた教室もあり、講師もそれで仕事を失った」

現状では音楽教室の、こうした複製の不払いは解消された。JASRACに対して著作権物使用料として、楽譜作成価格(販売価格)の10%を支払うように改めたからだ。しかし、その後もJASRACの追及は続いた。

「音楽教室に通う子どもたちは、まず自分の好きな曲を演奏したいと思って通ってくる。その成果を大好きな家族に見せたい。この感動がないと続かない。この子どもたちの“やる気”の前に立ちふさがるのがJASRACです」

彼らの請求は突然やってくる。

「どこで知るのかわからないけど、発表会で演奏した曲の演奏が、許可した楽譜どおりではないと言い出した。音楽教室が使用料を払っているのは楽譜どおりの楽曲。これをアレンジして演奏するのであれば、新たに著作権者に許可を取り、さらに著作権使用料は従来どおり払えというのです」

譜面どおりにしか演奏できないことは、致命的なことだという。

「音楽教室は今流行の曲を弾きたいと思う子どものレベルに応じて講師がアレンジして何とか演奏させ、音楽の楽しさを実感してもらうのが仕事。しかし、そのために譜面を起こして許可をとることは現実的には不可能です。結局、子どもの好きな曲を大人の事情で演奏させられなくなる」

JASRACの強権ぶりは、今年6月13日、美容院325店舗にBGMの使用料を求めて一斉調停を起こしたことにも現れている。

「今回のことにしたって、いずれまた請求対象を広げてくる。何かにつけ理由をつけて使用料を請求する彼らに、もう譲歩する気はないというのが正直なところです」(前述の音楽教室講師)

未来の音楽ファンは、どちらを支持するだろうか。

(中島みなみ・ジャーナリスト、6月30日号)

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