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【読書感想】東大卒貧困ワーカー

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東大卒貧困ワーカー (新潮新書)

東大卒貧困ワーカー (新潮新書)

Kindle版もあります。

東大卒貧困ワーカー(新潮新書)

東大卒貧困ワーカー(新潮新書)

内容(「BOOK」データベースより)
東大卒、元アナウンサーの筆者が、介護退職した後に見たのは、奴隷労働にも等しい「派遣・非正規」の実態だった。徹夜での12時間労働、日給1300円の仕事、研修名目で3ヶ月間無給等々、人の弱みにつけこむ求人が、今も堂々とまかり通っている。さらに資産家のふりをさせる詐欺紛いの「替え玉」派遣まで登場―徹底した現場主義による潜入取材で見えてきた、知られざる労働現場の真実。

 派遣社員、という働き方は、いまではごく一般的なものになっているのですが、著者が実際に体験した「中高年派遣社員に対する仕打ち」には、読んでいて唖然としました。
 これを「本当に日本でこんなことが行われているの?」と思ってしまう僕は、恵まれているのでしょうけど、著者のように東大卒で大阪の毎日放送でアナウンサーとして働いてきた人でさえ、一度身内の介護で正社員としての立場を失ってしまったら、「ジ・エンド」なのです。

 まあ、著者の場合は、本人が積極的に動いたり伝手をうまく利用すれば、もう少しマシな仕事にありつけそうなところを、取材がてらキツイところに踏み込んでいる、という感じもするのですが、それにしても、人材派遣会社のなかには、ここまで、登録者を人間扱いしていないところがあるのか……

 「人材派遣」といっても、最近はいろんな仕事があるみたいです。 
 これって、「セーフ」なの?というものまで含めて。
 実際に「替え玉資産家」という仕事を何度かしているという60歳男性の話。 

 タワーマンションの部屋のまとめ買いや賃貸アパート建設などの不動産投資が、相続税の節税目的で、2012年頃からブームになった。このビジネスに関わる不動産開発業者は一気に景気が良くなり、バブル期さながらに欧州の古城で研修も兼ねて入社式を行う会社まであった。

 ところが国税が不動産利用の相続税対策に厳しい目を向け、高額の不動産を購入しても、節税にならないケースが出るようになった。また住宅は全般的に供給過剰という見方が広がり、2015年半ばから需要は冷え込んだ。

 これで困ったのは、大手不動産会社が地区ごとに置いている営業所の社員たちだった。大口の顧客から色よい返事はもらえないご時世なのに、本社からは相変わらず「早く購入見込み客を連れてこい」と矢の催促。せっぱつまった営業マンの目に止まったのが、人材派遣企業が提案する「替え玉派遣」だった。

 営業区域内に実際に在住している資産家と同じような年恰好の「派遣」を夫婦に仕立てて本社に連れていく。最終の説得と契約調印は本社の役員があたるため、最後の詰めで失敗し契約に至らなかった責任は本社も負う。見込み客を連れていけば営業所は一応ノルマを果たしたことになる。

 勤務は半年で日当8000円+演技手当2000円。妻役はいつも決まっていて劇団出身の62歳の女性だったという。彼女は生活には困っておらずこの「労働」は趣味。大勢の人をあざむいて演技するスリルがたまらないと、はしゃいでいたという。

 結婚披露宴での「偽親族・偽友人」というのは聞いたことがあるのですが、こういうのもあるのですね。
 営業所の所員たちは、過酷なノルマを果たすために「偽の見込み客」を派遣会社から雇って、本社の役員に面接をさせるのです。

 これって、犯罪にならないのだろうか?
 犯罪ではないとしても、絶対に契約してくれない偽のお客に時間をかけて熱心に売り込むのは、時間の無駄遣いではありますよね。
 それでも、営業所としては、こうして場当たり的に「成果」を出さなければならない。
 結局、誰も幸せになっていない。

 この本には、正社員による派遣社員へのいじめ、差別、パワハラなどもたくさん紹介されているのですが、その正社員たちも、その上にいる人たちから、強いプレッシャーをかけられ続け、壊れてしまっているようにみえます。

 こんなに一生懸命、みんな働いているのに……そもそも、前述の不動産の偽見込み客なんて、「やってもムダであることがわかっているのに、見て見ぬふりをして、架空の実績をつくっている」のですよね。
 そりゃ、生産性上がらないよ、日本。

 派遣労働ってこんなのばっかりなの?と憤らずにはいられない事例もたくさん紹介されています。

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