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「不完全失業率」を見ないと雇用問題は見えてこない

この前リタイアして社会保険労務士を始めた友人からニュースレターが送られてきた。その中に先月末総務省が発表した労働力調査のまとめがあった。「5月末の完全失業者は210万人で84カ月連続の減少」「完全失業率は前月比0.3%悪化したものの3.1%と低水準」「5月の有効求人倍率(厚労省統計)は1.49倍とバブル経済期の水準を超えました」

このようなデータを見る限り、日本の雇用市場は堅調というように見える。

先週末は米国で雇用統計が発表された。市場が一番注目していた6月の非農業部門雇用者増は222千人でエコノミストの事前予想179千人を上回った。失業率は5月の4.3%から0.1%上昇して4.4%になったが、これは新たに労働市場に参入する人が増えたための失業率アップで、労働市場の堅調さの表れだ。

ところで米国の労働市場ではもう一つの失業率が注目されている。それは「不完全失業率」Underemploymentと呼ばれる失業率で5月は0.2%上昇して8.6%になった。なおこの水準は過去10年程度で最低水準である。

「不完全失業率」というのは、「本来はフルタイムの仕事を希望しているが、フルタイムの仕事が見つからないのでやむなくパートライムで働いている」人だ。雇用統計上で一番注目される(完全)失業率は、無職の人を失業者にしているので、パートタイマーも雇用者に計算されている。

人手不足が深刻になってくると、企業は人材の囲い込みに動き、パートタイマーからフルタイム雇用に切り替えるので、不完全失業率が低下してくる訳だ。フルタイム雇用者が増えることで、雇用者の賃金水準が上昇し、家計支出が増えるので、経済が活性化する。その点で私は不完全失業率の動向は重要だと考えている。

ところが日本では不完全失業率に関する正式な統計がない。統計がないので、類推しかないが、私は日本の不完全失業率は米国より高いと判断している。根拠はパートタイマー(週30時間以下の短時間労働者)の割合が日本は男女平均21%で米国の11%の約倍だからである。

すべてのパートタイマーを不完全雇用者と判断することはできない(つまり生活の都合上自主的にパートタイマーを選択している人がいるので)が、パートタイマーの中でフルタイム勤務を希望する人の割合が、仮に日米同じだとすると、日本の不完全失業率はアメリカを上回ることになるだろう。

日本が賃金の上昇を消費支出の拡大に結び付け、消費支出の拡大を物価上昇に結び付けようと考えるならば、不完全失業の問題に踏み込んでいかないといけない。

なお米国ではレイオフという形で企業の業績悪化時にフルタイム勤務者を解雇することが容易なこともパートタイムからフルタイムの切り替えが進みやすいといえる。労働市場に弾力性を持たせながら、有効な人材活用を可能にするような仕組みが必要なのだ。

特に日本の場合、完全失業率だけを見ていると雇用問題の本質を見失うだろう。

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