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書評「さらば愛と憎しみのアメリカ」


ある出来事を点で見てもなかなか全体像は見えてこない。たとえばトランプ大統領誕生と聞いても「へー」で終わってしまうけれども、欧州に移民殺到、イギリスEU離脱、という横のつながりを含めた面で眺めるとまた違った景色が見えてくる。

では戦後史という流れで見た時にどんな景色が見えてくるのか。
田原総一郎、越智道雄という戦前生まれの2人が一冊丸ごと語りつくしたのが本書だ。

というわけで何かすごいアナザーストーリーみたいなものが浮かんでくるということはないが、戦後の日米関係の大まかな流れが数々の裏話とともに開陳されていてなかなか興味深い一冊となっている。適時脚注もあるけれども、興味のわいた人名や事件をいちいちネットで調べて脱線しているうちに読破するまで数日かかってしまった。

読後感としては、トランプは出るべくして出てきた存在だということだ。
アメリカは共和党が自由競争を推進して経済を押し上げ、民主党がそこから落ちた人向けに再分配を強化するという役回りの2大政党制が機能していたが、いつしか両者の役割はボーダーレスになり、形がい化してしまった。たとえばトランプに「お前の局はフェイクニュースだ!だから答えない!」と質問を拒否されたCNNの記者の年収は2億円。確実に1%の側の人間だ。彼らがどんなに「ヒラリーこそ大統領に相応しい」と言っても、それは一度も州境を越えずに人生を終えるようなアメリカ人には届かない。

だから第三の男、トランプが支持されたのだ。
トランプはもちろん民主党ではないが、たぶん共和党の主流とも水と油だろう。越智氏も言うように、彼の役割は、公民権運動から続いてきて黒人大統領、女性大統領が誕生して完成するはずだったアメリカの戦後パラダイムをぶち壊すことなのだ。

もちろん、安全保障等をぜんぶ米国に丸投げしてきた日本も大きく変わらざるを得なくなるだろう。安倍さんもまた出るべくして出てきた存在なのかもしれない。


筆者が一番印象に残ったのは、それまで毎日のように「米軍が上陸してきたらお国のために死ね」と言っていた中学教師が終戦と同時に「実はあの戦争は間違いでした。じゃ教科書の問題個所を黒く塗りましょう」と言い出した部分。そんなこと多感な思春期の真っ最中にやられたらそりゃ先生の言うことよく聞いてた優等生ほど左翼知識人になりますね(笑)

その他、印象に残った名言。

「バーニー・サンダースって日本の政治家で言ったら誰だと思う?社民党の福島瑞穂だよ!」

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