8月30日、衆議院選挙が行われ、民主党が308議席を獲得。結党以来初となる単独過半数を占め、自民党から政権を奪取した。
インターネットユーザー的に気になるのは、久しぶりに連立ではない与党政権が誕生することで、インターネットをはじめとする情報通信政策にどのような影響があるかということだ。
総選挙公示に先立ち、MIAUでは東京全25区+東京比例区の立候補者に情報通信政策に関する10問のアンケートを行った。結果は
MIAUのサイトで公開している(今回アンケートが返ってきた民主党東京ブロックの議員は9人。いずれも当選した)。
MIAUからの質問と回答はサイトを参照していただくとして、アンケートが返ってきた9人の回答を分析すると、大まかながら民主党の情報通信政策の基本的なスタンスが見えてくる。
ポイントはいくつかある。公示後、ブログの更新などができない現状の公職選挙法に対する問題意識、国民の政策決定プロセスへの関与、インターネットや携帯電話に対する規制、児童ポルノの単純所持禁止を認めるか、コンテンツ政策の保護利用のバランスなどだ。
回答のあった9人のスタンスをざっくりとまとめると下記のようになる。
●東京1区 海江田万里
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:パブリックコメント拡充派
ネット・携帯規制:リテラシー教育派
児童ポルノ単純所持:規制慎重派
●東京6区 小宮山洋子
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:パブリックコメントの拡充派
ネット・携帯規制:規制推進派
児童ポルノ単純所持:規制推進派
●東京9区 木内孝胤
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:パブリックコメント拡充派
ネット・携帯規制:リテラシー教育派
児童ポルノ単純所持:規制慎重派
コンテンツ政策:権利者保護派
●東京15区 東祥三
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:ネットで政策募集派
ネット・携帯規制:規制推進派
児童ポルノ単純所持:規制慎重派
コンテンツ政策:権利者保護派
●東京16区 初鹿明博
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:パブリックコメント拡充派
ネット・携帯規制:リテラシー教育派
児童ポルノ単純所持:規制推進派
コンテンツ政策:利用者重視派
●東京17区 早川久美子
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:パブリックコメント拡充派
ネット・携帯規制:リテラシー教育派
児童ポルノ単純所持:規制推進派
コンテンツ政策:権利者保護派
●東京21区 長島昭久
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:パブリックコメント拡充派
ネット・携帯規制:リテラシー教育派
児童ポルノ単純所持:規制推進派
コンテンツ政策:権利者保護派
●東京23区 くしぶち万里
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:ネットで政策募集派
ネット・携帯規制:リテラシー教育派
児童ポルノ単純所持:規制慎重派
コンテンツ政策:利用者重視派
●東京24区 阿久津幸彦
公職選挙法:解禁派
政策決定プロセス:パブリックコメント拡充派
ネット・携帯規制:規制推進派
児童ポルノ単純所持:規制推進派
コンテンツ政策:権利者保護派
公職選挙法については全員が改正派で、選挙期間中のネット上の選挙活動を解禁すべきという立場だった。これについては民主党が公約にも掲げており、議員の間でも意見は割れていないので、今回政権を奪取したことを受けて、次回の総選挙には、選挙期間中のインターネットを通じた選挙活動が解禁される可能性は高い。
国民の声を政策決定に反映される仕組みについては、パブリックコメントの拡充・明確化を図るべきという意見が大多数を占め、米国のオバマ大統領がやっているように、インターネットを使った政策募集、議論の場の提供といった新たな制度を導入すべきという、より踏み込んだ意見も2名から寄せられた。現状のままで良いという意見はなかったので、このあたりは行政主導の審議会システムとの兼ね合いがどうなるのか、官僚と民主党の関係によって、何らかの手立てが考えられる可能性はあるだろう。
インターネットや携帯電話の規制と児童ポルノの単純所持禁止については議員によって意見がくっきりと割れた。ネット・携帯規制については9人中6人が慎重派でリテラシー教育で対応すべきという意見。3人が国や事業者による積極的な規制を望んでいた。一方、児童ポルノの単純所持規制については9人中5人が規制推進派。4人が慎重派と真っ二つ。党内の意見調整は難しそうだが、このあたりは「世論」との兼ね合いということになるだろう。
著作権や知財・コンテンツ政策については9人中7人が権利者の保護を重視する立場。従来もこの分野については民主党と自民党でスタンスが変わることはほとんどなかったため、今後も権利者保護のスタンスから政策が決定していくものと思われる。
こうしてみると、公職選挙法以外の情報通信政策は、現状議員個人の考えによるところが大きく、党として独立した情報通信政策を打ち出せるところまで行くのかは疑問が残る。
また、今回民主党は大勝したとはいえ、参議院で否決された法案を再可決できる3分の2(320議席)までは届かなかったため、参議院・衆議院とも共産党、社民党との連携を視野に入れなければならなくなった。来年行われる参議院選挙の結果次第ではまたねじれ国会になる可能性もあり、来年の参院選までに民主党がどれだけポイントを積み重ねられるかが当面の焦点となるだろう。
インターネットユーザー的には、ネットユーザー寄りと言われる民主党の川内博史議員が当選したことは朗報だが、児童ポルノの単純所持規制に反対していた社民党の保坂展人議員が落選したことは大きい。
インターネットの問題が政策問題として政党の対立軸になるというのはまだ先の話になりそうだが、今回公職選挙法が公約通りに改正されれば、そうした状況が変わる第一歩になるのではないか。選挙後の民主党がどのような情報通信政策を打ち出してくるのか、ネットユーザーは注意深く見守っていく必要がある。
(津田大介/MIAU代表理事、メディアジャーナリスト)
プロフィール:
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