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【佐藤優の眼光紙背】草なぎ剛氏の逮捕に異議あり

2009年04月27日 09:00

眼光紙背

4月23日、赤坂署は、アイドルグループ「SMAP」の草なぎ剛氏(34歳)を公然わいせつの現行犯で逮捕した。<赤坂署の調べによると、23日午前2時55分ごろ、港区赤坂の檜町公園で、酔っぱらいが騒いでいると、近所の男性から110番通報があった。/署員が駆けつけたところ、草なぎ容疑者が1人で全裸になって、意味不明な言葉を叫んでいたという。このため、署員が現行犯逮捕したという。>(4月23日産経新聞電子版)

その後、草なぎ氏がアルコールを飲んでいたことや、自宅に対して家宅捜索が行われたが、違法行為を示す証拠物は押収されなかったことなどが報じられた。

筆者は、京都の同志社大学と大学院で学生時代を送った。毎年4、5月は、新入生が入ってくることもあり、鴨川の河原で学生たちははめを外す。酔っ払って全裸になって騒いでいる男子学生の姿は、それほど珍しいことではない。そういった学生たちが、公然わいせつの現行犯で逮捕されることは、まずない。もちろん、正体をなくして、わけがわからなくなっている学生が警察に保護されることはある。

公然わいせつは、刑法に抵触する犯罪だ。警察でも「ブタ箱(留置場)」にぶちこまれる。これにたいして、酩酊者(アルコールの影響により正常な行為ができないおそれのある状態にある者)は「トラ箱(保護室)」に入れられる。
 
刑事犯罪者と保護を必要とする酩酊者は本質的に異なる。犯罪を構成するには、本人の行為に対する認識、さらに被害者の有無などが重要になる。草なぎ氏の事案は、犯罪として逮捕するのではなく、酩酊者として保護する事案であったように筆者には思えてならない。身体の拘束、家宅捜索などは、国家が人権(自由権)に介入する重大な行為だ。警察や検察が、ささいな事を口実に、ガサ入れ(家宅捜索)してもよい状態になると、権力はいくらでも増長する。

草なぎ氏の行為が褒められるようなことでないのは明白だ。しかし、刑事責任を追及されるような悪質な事案であったかどうかについて、筆者は疑問に思う。マスメディアの報道は、草なぎ氏が公然わいせつ罪という刑事犯罪に該当する犯罪を犯したという前提でなされているが、ここから疑ってみる必要がある。草なぎ氏は、酩酊者であり、あくまで保護されるべき対象で、刑事犯罪者のような扱いをするのは行き過ぎと筆者は思う。(2009年4月26日脱稿)


プロフィール:
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・起訴休職外務事務官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
近著に「テロリズムの罠 右巻 忍び寄るファシズムの魅力」、「テロリズムの罠 左巻 新自由主義社会の行方」、「テロルとクーデターの予感 ラスプーチンかく語りき2」、「「諜報的生活」の技術 野蛮人のテーブルマナー」など。


眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
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