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【赤木智弘の眼光紙背】危機を感じる人たちもまた、ゲームを考える人たちである

眼光紙背

2009年03月26日 11:00

アメリカのABCが、オンラインゲームを通じて子供に近づく性犯罪者がいるという報道を行った。
その際に、任天堂Wiiの人気ソフト『街へいこうよ どうぶつの森』を例えに使い、同ソフトで遊ぶ大人がすべて性犯罪者予備軍であるかのような不適切な報道をしたとして、批判が集まっている。(*1)

『どうぶつの森』は、どうぶつたちが暮す、ほのぼのとした小さな村で、住民のどうぶつたちとコミュニケーションをとりながら生活していくゲームである。「ゲームクリア」という概念は存在せず、住民達とさまざまなイベントをのんびりと楽しむことが、ゲームの目的となる。
今回の『街へいこうよ どうぶつの森』は、シリーズ5作目にあたる。基本的には子供向けのゲームではあるのだが、ほんわかとした世界観にはまる大人も少なくない。

で、報道に関してだが、『街へいこうよ どうぶつの森』では「ともだちコード」というシステムを採用しており、基本的には見ず知らずの人がゲームの中に入り込むことはないような仕組みになっている。
他のプレイヤーと会話を楽しむためには、記事にも書かれているように、「ともだちコード」を交換して、双方がお互いのともだちコードを登録して始めて、ゲーム上でコミュニケーションができるようになる。もし、偶然に自分のともだちコードが見知らぬ人に知られたとしても、自分の側で相手のともだちコードを登録しなければ相手が自分のゲーム内に表れることはない。そうしたことから、突然、子供の遊んでいる村に、見ず知らずの人間が入り込むことはない。
その点、同じサーバーにログインすれば、自動的に数多くのプレイヤーと接することになるネットを介したゲームと比べれば、見ず知らずの人と子供がゲーム内で会話をする可能性は、圧倒的に低い。
しかしながら、多くの人とゲームを楽しみたいと思った子供が、ネットなどを用いて見ず知らずの人と、友達コードを交換しあうことは可能であり、絶対に見ず知らずの他人が入り込まない形式になっているかといえば、そうではない。
つまり、どうぶつの森が採用するシステムのみを利用している限り、偶然に見知らぬ人がゲームに入り込むことはないが、ネットを通してともだちコードを交換することさえできれば、能動的に見知らぬ人をゲーム内に入れることは可能である。
そして、ネット上にはどうぶつの森のともだちコードを交換し合うコミュニティーサイトが、多数存在する。その大半は普通にゲームを楽しみたい人たちではあるのだが、その中に犯罪目的の人間が紛れ込むことも、可能性として否定することはできない。
そうしたことから、ABCが伝えた内容というのは、あながち間違いであるとも言えない。絶対に他のプレイヤーが演じる可能性のないキャラクターを指さしてしまったことは、大きな失敗ではあるにしてもだ。

ABCが『街へいこうよ どうぶつの森』を例えに使ったのは、Wiiが全世界でよく売れており、一般的なハードであり、かつ子供が多く遊ぶゲームであることから、子供がネットを介して遊ぶ一般的なゲームとして、使いやすかったということがあるのだろう。
ABCが例えとしてこのゲームを使ったことによって、「雰囲気がほのぼのしたゲームであっても、ある程度の危険は存在する」という親に対する警告にもなったと私は考えている。
子供が他のキャラクターを銃や剣で殺すゲームをプレイしているならば、感覚的に「このゲームは危険だ!」として注意する親も、暴力的描写がまったく存在しないゲームを子供がプレイしている時に感覚的に「このゲームは安全だ!」と認識してしまうかもしれない。
ゲームそのものの雰囲気でリスクを見積もってしまうということは、偏見によって単純に評価を決定してしまうということだ。今回のABCの報道は、結果論かもしれないが、そうした偏見のありように対するカウンターになった可能性を見逃すべきではない。
もちろんこの報道が偏見を助長し、「どんなに表面はほのぼのしていても、ネットを介する以上、どんなゲームであっても危険である」という結論を生む可能性もある。
しかし、ほのぼのなゲームが決して安全ではないという報道を見て、自分の感じる雰囲気や印象で、リスクを語ろうとすることの不合理に、気付く可能性は決して低くはないと、私は考えている。

普段、ゲームに対して親しみを持って接している人たちが、こうした偏見を助長させかねない報道に接する時、つい「子供がゲームの向こうの人たちに傷つけられるより、親や周囲の大人に傷つけられる可能性の方が高い」「子供による凶悪犯罪は増えていない」など、明確なデータをもって、否定的にこうした報道を断罪する傾向がある。それは私を含めてではあるのだが。
しかし、ゲームに対して危機感を抱く人やメディアの大半は、決して悪意を持って批判しているわけではない。
彼らの考えかたに対し、否定するべき部分を否定することはもちろん必要だが、受け入れられる部分を受け入れ、理解の姿勢を見せることも、また大切なのではないだろうか。
そういう意味で、今回のABC報道を、私なりに最大に譲歩できる部分は譲歩する形で論じてみた次第だが、いかがだろうか?

*1:『どうぶつの森』をプレイする大人は“変質者”との報道にブーイング(ジーパラドットコム)
http://www.gpara.com/kaigainews/eanda/2009032001/


プロフィール
赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。近著:「「当たり前」をひっぱたく」。

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