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「空のバリアフリー」を2020年東京パラリンピックのレガシーに―バニラ・エアも木島さんも「空飛ぶ障害者」国際シンポに参加しよう 

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[ロンドン発]鹿児島県奄美市の奄美空港で関西空港行き格安航空会社バニラ・エアを利用した車いすのバリアフリー研究所代表、木島英登(ひでとう)さん(44)が、アシストストレッチャー(座った状態で運ぶ担架)や階段昇降機がないため自力で17段の階段式タラップを上って搭乗したことが大きな問題になった。

ニュースは世界を駆け巡った。しかし日本国内では、悪いのは、車いすの乗客に対応できないのにそれを告知していなかったバニラ・エアなのか、事前連絡すれば搭乗拒否されるとして「車いす利用の事前連絡」を怠った木島さんなのか、議論は単純な善悪二元論に陥り、強い違和感を覚えた。車いす利用者が空の旅をする場合、陸や海の旅に比べてトラブルに巻き込まれるケースは少なくない。

根本的な問題は、現在の航空機が障害者への配慮より、緊急時の安全を最優先に設計されていることにある。障害者の包摂と安全は両立できるのか。高齢化が進み、車いすを利用する人は世界中で確実に増える。また、2020年東京パラリンピックには史上空前の規模のパラリンピアンがやってくる。

障害者に配慮した空の旅は実現可能なのか。どんな視点と配慮が求められるのか。

電動車いすの娘と息子と旅客機を利用して2人が味わった苦痛から2年前に「空飛ぶ障害者(FlyingDisabled)」というキャンペーン団体をイギリスで立ち上げ、「空のバリアフリー」を訴えているクリス・ウッドさんに意見をうかがった。

クリスは木島さんのニュースをツイートし、「車いすが人生の一部になっている人がいる。しかし、悲しいことに彼らは常に旅客機に乗れるとは限らないし、施設が整っているわけでもない」と指摘している。そして「空のバリアフリー」に一歩でも近づくことが東京パラリンピックのレガシー(遺産)を残す最大のカギとなると言った。

客室乗務員もパイロットやキャンペーンに協力的

――娘さんや息子さんと空の旅をした時のことを聞かせてください。どんなことが起こりましたか

クリス「20代前半の娘タイラと息子ジョーダンとはもう何回も空の旅をしています。搭乗する際のスタンダードな手順は旅客機のキャビンドアのところまで来たら、彼らは自分の電動車いすから持ち上げられて機内の通路を移動できる車いすに乗せられます。今度は通路用車いすから持ち上げられて自分の座席に移されます。目的地に着いたら、逆の順序で同じことが繰り返されます」

娘のタイラさん(右)と息子のジョーダン(左)と「空の旅」をするクリス・ウッドさん(クリス・ウッドさん提供)

「この手順は尊厳が損なわれ、安全でもありません。持ち上げられる方も安全ではないし、マニュアルを扱うという点からも安全ではありません。娘との初の『空の旅』は欧州でした。通路用車いすがなかったので、娘を座席まで運んでいかなければなりませんでした。通路用車いすはとにかく、とても不安定です。娘と息子は適切な姿勢を保てず、通路用車いすが2人には適当ではないことは明らかです」

「機内の座席も2人の姿勢を保つのに適していません。もちろん客室乗務員はクッションを持って来て助けてくれますが、小さな助けにしかなりません。最近、息子と8時間かけてドバイに行ったのですが、彼にとって快適な旅ではありませんでした。座席で適切な姿勢にすることが全くできなかったのです」

「日本でも私たちの話は知られているかもしれません。私はこれまで一度も客室乗務員らに文句を言ったことがないのです。私が『空のバリアフリーを実現しよう』というキャンペーンを始めてから、搭乗した便の乗務員を批判したことはありません。客室乗務員もパイロットもいつも信じられないほど協力的です。彼らは与えられた責任の範囲内で非常に良くしてくれるので尊敬しています。彼らも現状を変えていこうという私のキャンペーンに賛同してくれています」

――娘のタイラさんと息子のジョーダンさんについてもう少し詳しく教えてください

「2人とも個人的な介助者がいて独立した生活を送っています。息子は大学で勉強しており、娘は自分の進む道を探していて独立しています。子供2人と旅する時はとても大変です。それぞれの介助者の助けが必要で、資金的にも非常に高くつきます」

「航空会社は個人的な介助者について航空券の割引を勧めてくれますが、割引が私に提供されたことはありません。それはお勧めに過ぎないのです。陸や空の旅をする場合、車いす利用者の介助者には優待券が与えられます。繰り返しになりますが、空の旅はそれには程遠いのです。現代の考え方からかけ離れています」

――「空飛ぶ障害者」をどのようにして立ち上げましたか

娘のタイラさん(左)と(クリス・ウッドさん提供)

「2015年に娘とメキシコでホリデーを過ごした時です。空の旅は散々でした。彼女の電動車いすは壊れかけました。陸や海の旅は適応できたのに、どうして空の旅はできないのか、私は自問自答しました。どうして航空業界は400トンの金属の塊を飛ばすことができるのに、自分の車いすで搭乗できないのか、それは経営上の問題なのかと考えました」

「しかし航空会社は5000万ポンド以上の価格で航空機を購入し、ロンドンからドイツのハンブルクまでで約30ポンドの航空券を販売しています。航空業界はイノベーティブでクリエイティブな気風に満ちているのに、どうして空のバリアフリーの問題を解決しようとしないのか、自分に問いかけました」

「『空飛ぶ障害者』を立ち上げると、影響を受けている非常にたくさんの人々やコミュニティーから連絡を頂きました。若い人からお年寄りまで、決して屈することのないパラリンピックのアスリート、最先端で社会的包摂を唱えている主張者や議員など異なる分野の人々から連絡がありました」

「アメリカのキャンペーン団体『舞い上がれ!すべての車いす利用者(All Wheels Up)』とも連帯しました。世界中のキャンペーン団体が支援してくれました。これは世界的なチャレンジです。だから空のバリアフリーに関する現状に不満を言うことは歓迎されなければなりません。キャンペーンが展開するにつれ、解決策を見つけなければならないことが明白になってきました。航空会社、車いすのメーカーなどすべての関係者を巻き込んでいく必要があります」

これからますます障害者は空の旅をするようになる

――「空飛ぶ障害者」のキャンペーンはどんな成果を収めましたか

「最初から航空業界や障害者団体の中で興味を持ち、影響力のある人々が加わってくれました。表に出ることはできないけれども、オープンにいろいろなアドバイスを頂きました。2~3カ月前にヴァージン・アトランティック航空からこの問題を協議したいと電話がかかってきました。会合はとても正直で非常に建設的な結果をもたらしました。彼らは私たちを助けるためにシンポジウムを後援したいと提案してくれたのです」

「シンポは利害関係者と関心のある人々を一堂に集めて、解決策を探ろうというものです。ヴァージン・アトランティックとの会合のあと、すぐにイギリス政府からも連絡がありました。彼らは問題を非常に深刻にとらえていました。政府関係者もシンポに参加して発表します」

「今、イベントとスピーカーについて計画を練っており、日々、進展しています。日本も何らかの形で参加されることを望んでいます。何と言っても日本は2020年にパラリンピックを開催するのですから」

――障害者にとって空の旅のバリアとは何ですか。何が問題なのでしょう

「主な障害は航空機の中の構造です。1914年に初めて商業用の航空機が飛ぶようになってからほとんどその形状は変わっていません。専門知識を持った人々と話すようになってからこの問題に長い時間を割いてきましたが、みんな最終的にできないことはない、きっとできると信じています。たたき台となる解決策はあります。そのたたき台をテーブルの上に乗せれば、自ずと適切な答えが出てくるはずです」

「これからますます障害者の人たちが空の旅をするようになります。その数は増えていきます。できる限り早く土台を築くことは喫緊の課題です。私たちの寿命が延びて、お年寄りの旅行をしたいという欲求はおそらく、これまで以上に強まるでしょう。お年寄りの中に車いすの利用が欠かせないという人が出てくるのは確実です」

(筆者注)コンサルティング会社OCSの調査報告書「空港での経験」、イギリスの人口は6459万6800人。このうち何らかの障害を持つ人は1190万人(約19%)で、こうした人々の年間購買力は800億ポンド。年に1度は空の旅をする人は平均で49%にのぼっており、この割合と同じように障害者が空の旅をするようになれば、年間利用者は580万人にのぼると予想される。

「航空安全当局が安全対策で譲歩することはあり得ません。これは当たり前のことです。2010年に欧州航空安全機関(EASA)は障害者の空の旅について報告書をまとめています。障害者の乗客が増え、緊急時の避難を含めたリスクのインパクトについて認識しています。障害者の空の旅が増えるほど安全は損なわれていきます。車いす利用者や個人的な介助者のスペースを設けることによって、少なくとも、より適切な安全のためのより現実的な解決策が示されます」

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