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すべてのブログ執筆者・サービス運営者にあっぱれ~中川淳一郎の今月のあっぱれ

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イラスト&題字 まんしゅうきつこ

恐らく6月第4週から第5週は「ブログ」という言葉が歴史上もっともメディアを席巻した一週間になったのではないだろうか。当然、フリーキャスター・小林麻央さんの逝去に関してである。マスコミ各社は軒並み麻央さんのブログの内容を紹介し、改めてブログというものが重要な情報のソースになったことを示したが、SNS全盛の今、ブログというメディアについて改めて考えてみたい。

また、今年はブログ開始から15年目という説もある(14年目という説もあり)。正直、業界関係者に聞いても、いつ開始なのだか明確に言える人はいないのだが、ブログって何だったのかな、というのをウェブ業界に生きる者として考えていきたい。

改めて注目されたブログというストック型メディアの強み

麻央さんが亡くなったのは22日だが、翌23日朝に夫の市川海老蔵さんが「人生で一番泣いた日です。マスコミの方々もお察しください。改めてご報告させていただきます」とブログに書いたことで「遂にその日が……」という空気になった。そして、同日午後、海老蔵さんは麻央さんの逝去を記者会見で発表。以後、この会見の様子と、麻央さんが約1年間にわたって綴ってきたブログ「KOKORO.」と海老蔵さんのブログが各メディアで紹介されるようになった。

市川海老蔵さんのブログ(アメーバブログ)

番組の中には、ブログを開始した2016年6月から順を追ってブログの画面や掲載した写真をテレビ画面に映し、それをナレーターが読み上げ続け、麻央さんの1年間の心の動きを数十分にわたって振り返るようなものもあった。これを安直だという声はあったものの、当然彼女の肉声ともいえるものはこの1年間はブログだけだったので、番組がこうした構成になるのは当然だろう。

今回、メディアにはブログの読者だというがん闘病者やその家族らも登場したが、彼女らは「勇気づけられた」「共感できた」「一緒に頑張ろうと思えた」といった発言をしていた。実際、麻央さんのブログのコメント欄には激励の声が日々書き込まれていたものの、一方で同じ境遇にいる人にとっての心の拠り所といった面も多々あったのである。

また麻央さんがブログを書いていたアメブロの担当者によると、ブログを読むうちにブログを綴る価値にも気付いた人もいたようで、麻央さんのブログをきっかけにブログを開設している人も増えているそうだ。

今回改めてブログというストック型メディアであるが故の情報量の多さが、多くの人に知らされたのではないだろうか。時に弱気になったりもする日々移り変わる心境の変化に加え、2人の子供の成長の様子、少しずつ症状が重くなりつつも生への思いと家族への感謝が滔々と綴られ、一人の女性の闘病記としても価値あるコンテンツとなった。もちろん、こうした闘病ブログは一般の人も多数執筆しているが、それらのブログも麻央さんのブログ同様に人々の心の拠り所や交流の場になるほか、ブログ執筆者にとっても生きている証となるうえに、日々のルーティンとしての役割も果たしている。そして、夫・海老蔵さんは海外からも反響があったことから、「KOKORO.」の英訳を発表した。

ブログ黎明期からアルファブロガーの誕生まで

それでは、少し前の時代のブログの姿を振り返ろう。2003年、フリーライターになっていた私の元には企業から多数のプレスリリースが届いたり、知り合いの広報担当者から新商品やサービスを説明させてくれ、という依頼が来ていた。そんな中、某老舗IT企業に勤める知り合いから「ウチもブログサービス開始するので、取材に来てもらえますか?」と言われた。

それまで「さるさる日記」などは見たことがあったし、2003年は、はてなダイアリーが開始した時期だった。自分自身もメルマガを書いたりしていたのだが、「ブログ」という言葉は初耳だった。そこから色々と事前に調べたのだが、どうやらアメリカではすでにジャーナリストらが使い始めており、ジャーナリズムの未来を切り拓く可能性が期待されているといったことが書かれていた。ブログ初期の熱狂については『ルポ 米国発ブログ革命』(池尾伸一・集英社新書・2009年6月)に詳しく書かれている。

当日までにある程度の知識は得ていたのだが、とんと分からなかったのが「トラックバック」の概念である。そこで、担当者に「トラックバックって何ですか?」と聞くと彼女は興奮してこう言った。

「ブログが普通の日記と違うのは、トラックバックというすごい機能があるからなんですよ!今までは、自分のサイトや日記に来てもらう術は『相互リンク』ぐらいしかなかったのですが、トラックバックがあれば、自分のブログやサイトの存在を通知することができるんです!」

「でも、それって通知される側からしたらウザくないんですか?」

「いや、それこそが次世代のコミュニケーションのあり方なのです!」

こう力説されたが、結局トラックバックは業者によるスパムだらけとなり、数年間で滅多に使われることはなくなった。先日、ライブドアブログがトラックバックの機能の廃止を発表したのも、もはや不要という判断だろう。私自身も2010年以降に作ったブログではトラックバックは最初から実装しないようにしてきた。なにしろ、現在の芸能人instagramにおける美容系商品のスパムコメントと同様に、トラックバックはクソ宣伝情報に溢れてしまったのだ。

しかしながら、ブログ開始から数年、「アルファブロガー」と呼ばれる人々が続々と登場し、小飼弾氏や山本一郎氏といったブログ界隈の著名人がテレビや雑誌などのメディアにも進出していくようになる。さらには、『実録鬼嫁日記』や『きらきら研修医』などのブログが書籍化され、連ドラ化する、という流れも生まれていた。女子大生ブロガー・はあちゅう氏が、「さきっちょ&はあちゅうのクリスマスまでの悪あが記」で注目を浴び、後にはあちゅう氏はスポンサーを募って無料の世界一周旅行をブログで報告するなど、一般人がブログを通じ、世間の注目を集める流れが生まれてきた。また、グルメブロガー同士が集い、同じ店に行ったことを各人がブログで報告するなど、コミュニケーション手段としても活用され、ブログが夢に溢れた時代になってきていた。

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