記事

株主総会のあだ花 - パスカル・ヤン

 焼き菓子を配るのを止めた大手総合商社「双日」の株主総会の参加者が9割減だったそうだ。今年の総会は、お土産廃止ムードが漂い、現在のところ、ものもらい資本主義がまだ主流の日本では、個人投資家のがっかり感が強い。総会手土産が廃止されたので個人株主の存在感がまた減少したようだ。以前は全株主のおよそ20%でほぼ正解であったが、2割といえない水準になっているようだ。

 一義的には、持ち合い解消の受け皿、コントロールの出来ない外人株主に対する抑止力として個人株主は歓迎されている。東証資料によると、戦後、取引所再開直後の個人株主数(延べ人数)500万人から高度成長期にも超えられなかった2000万人の壁をバブル崩壊時に達成したあとは、現在まで斬増して延べ株主数は5000万人いるようだ。

 NTT民営化、JR民営化、最近では日本郵政グループ3社の上場などで、節々の障害を取り除きながら、証券民主化が達成しているかのようにも見える。

 少額非課税制度(NISA)の開始などを契機に拡大している。昨今の個人株主数急拡大の要因は、一昨年の郵政で150万人弱、トヨタの種類株発行で20万人弱、メガバンク株はNISAでの人気銘柄として選好されている。1000株から100株への単元株数の変更も大きなインパクトとなった。当然旧来ある主力銘柄の公募増資も株主数の増加に寄与している。

 さらに上場企業の支払い配当額も企業収益の向上から拡大しており、大台の10兆円を軽く超えた。時価総額の2割弱が個人株主の保有とすれば、2兆円が家計に支払われたことになる。しかし、個人投資家の存在感は小さい。売買においても保有においても、心配な2割打者であろう。

 逆に外人投資家は売買において特に存在感は大きく、保有においても主体別で最大となっている。とりわけ、ハイテクを用いたHFT(高速トレード)での市場シェアは目を見張る物がある。7割は超えているだろうか。

 そんな中、個人投資家の役割拡大を意識したトヨタ自動車の種類株発行に見られるように、外人投資家牽制の意味合いも含めて力を入れているものもないことはない。

 一方バブル期の終わりには、金融グループ内の保険会社が保有する株式を含めた持ち合いは、50%を超えていた。市場の流通株が極端に少ない中、日本株は上昇を続けたことになる。当時狭義の持ち合いも35%程度と世界でも類を見ない状況にあった。

 株式持ち合いは、戦後の財閥解体時、また1960年代の資本自由化の流れのなかで、外国企業による乗っ取り対策で始まったと考えてよいと思う。

 90年代には持ち合い比率は急激に低下したが、この10年は傾向の変化は見られない。とはいえ、2015年6月に始まった上場企業へのコーポレートガバナンスコードの適用において、上場株式への政策投資への疑問が投げかけられている。

 この動きの中で、いくつかの企業が、①持ち合い株は保有しない。②原則不保有または解消の方向。③保有するが経済合理性を保有継続の判断基準とするなどの指針を発表している。

 すなわち、外人株主がプレゼンスを増すなか、企業同士の株式持ち合いも容易ではなくなってきている。その中で、主体別保有で2割弱の個人株主に対して注目が集まっているといえる。
加えて東証第一部の上場株としていくつかの上場廃止基準が適用されるが、その一つに株主数基準がある。第一部上場を維持するためには所要株主数2000人が必要とされている。

東芝は国技館で焼き鳥弁当を提供

 当然、数年の猶予期間がもうけられているが、一朝に2000人を確保することは、容易ではない。したがって、常に個人株主へのIR活動をおろそかにすることはできない。

 機関投資家の硬直した保有政策、すなわち一度ことが起きた場合、コード上保有しきれなくなる場合もある。逆に個人投資家は株価や企業収益には影響を受けずに保有する土壌を持っている。そのために、いわゆるファン作りが、きわめて重要になっている。 

 一時期、東芝は国技館で焼き鳥弁当を提供するとこで、3000名以上の株主を集めたこともある。また、たとえばリーマンショック時に廃止されたが、藤田観光株主の楽しみは、総会後の椿山荘での株主懇親会だったそうだ。すなわち個人株主のインセンティブは、通り一遍の経済合理性にないことだろう。

 現在、グロス5000万人の個人株主、ネット千数百万人の個人株主をいかに量的質的に拡大するかが、わが国の資本市場の将来を占うことは明白であろう。「貯蓄から投資へ」などという高邁な思想だけではなく、自社の商品の販売拡大にも個人株主は貢献する可能性もある。

 そんな中、高性能カメラで会場の参加者を撮影しまくる企業や、株主から発言があると大至急通報体制をとる企業もまだあるようだ。

 個人株主は株式市場のあだ花なのだろうか。それともこれから花開く蕾みなのだろうか。真摯な個人株主の質問に対して、木で鼻をくくったような議長の対応を見る度に、この国の資本市場の将来に不安を感じてしまう。

 「時間も押しておりますので、最後にあとお一方の質問をお受けします」で終わらせる紋切り型。

あわせて読みたい

「株式市場」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    デリヘルに素人専門が増えた理由

    PRESIDENT Online

  2. 2

    質問力なし 報道のTBSは死んだ

    和田政宗

  3. 3

    小池氏会見まるでイキった大学生

    キャリコネニュース

  4. 4

    自民は本気の小池氏を甘く見るな

    安倍宏行

  5. 5

    橋下氏 解散批判する野党に苦言

    橋下徹

  6. 6

    斉藤由貴に私刑行う週刊誌に疑問

    篠田博之

  7. 7

    小池氏登場で自民圧勝は不確実に

    近藤駿介

  8. 8

    北の日本攻撃ありうる歴史的背景

    ヒロ

  9. 9

    橋下氏 新党で延命する議員は害

    橋下徹

  10. 10

    北外相「米爆撃機撃墜の権利も」

    ロイター

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。