記事

3歩進んで2歩下がる、ジェフ・ベゾスの「失敗力」

Forbes JAPAN 編集部 , Forbes JAPAN

ジェフ・ベゾスCEOが率いるアマゾン・ドットコムは今、革新的企業の最右翼になろうとしている。ビリオネアランキングで初のトップ3入りを果たしたカリスマ経営者のぶれない信念を支える哲学とは。

経営者にとって戦略上の「大胆な賭け」とは、どこまで許されるものだろうか?
 
アマゾンの共同創業者兼CEO、ジェフ・ベゾス(53)の場合は際限がないようだ。オンライン書店に始まり、AI搭載のビデオ付きホームスピーカーの開発や出口会計が不要のスーパーマーケット展開に至るまで……。2000年に立ち上げた別会社の「ブルーオリジン」では、ロケットまで開発している。
 
こうしたベゾスの大胆な賭けを支える根拠となっているのが、伝説の投資家ベンジャミン・グレアムの提示した「ロングターム・シンキング(長期的思考)」である。『証券分析』や『賢明なる投資家』などの著書を持つグレアムは、かの世界的投資家ウォーレン・バフェットも敬愛してやまない「バリュー投資の父」として知られている。

グレアムは、「市場は、短期的には投票機械のような動きを見せるが、長期的には秤のようなものだ」と語り、最終的には長期的思考にもとづく判断を取ったほうが会社を利すると指摘している。
 
ベゾスはこの点についてたびたび言及している。そして、社内会議や株主向け年次書簡でもグレアムを引用し、株価に一喜一憂せず、利益率よりもフリーキャッシュフロー(事業活動で稼いだ資金で自由に使えるもの)の方を重視する姿勢を崩さない。
 
彼は、キャッシュフローに特に注目する理由について、2006年の株主向け年次書簡で「株式は将来的なキャッシュフローであり、長期的な観点からはキャッシュフロー以上に株価を表すものはない」と記し、「今日すべきことをきちんとすれば、明日はより多くの利用が見込め、さらに顧客が増える。それはより多くのキャッシュフローにつながり、株主に長期的な価値をもたらす」と、株主に長期的思考への理解を求めている。

これが、アマゾンの社風を説明する上で引き合いに出される「顧客中心主義」にもつながるのである。

「2日目」は死の始まり

ベゾスはしばしば、自宅を貸し出したある夫妻についての話を紹介する。家を借りた別の一家が、クリスマスツリーを飾る際、鉢植えを置くのではなく、部屋の床に釘で打ち付けたというのだ。極端な例とはことわりながらも、「所有者であれば、そのような近視眼的なことはしないはず」と語り、そもそも従業員や株主が会社に対して”真の所有者意識”を持っていれば、長期的思考は当然の結果だとさえ説く。

もう一つ、ベゾスの決断を支えるのが「1日目(Day One)」という考え方。これは1997年の年次書簡に書かれた、「今日はインターネットの1日目。学ぶことは膨大にある」という一文にもとづく。

それが最近、社員から「2日目はどんな日か?」と聞かれるという。アマゾンは15年、小売り最大手「ウォルマート」を株式時価総額で抜く規模にまで成長した。社員が次のビジョンに関心を抱くのも当然だ。だがベゾスはこう語っている。

「2日目はすべてが止まってしまった状態で、次第に熱が冷めていくだろう。その後は、地獄のような苦しみを伴う衰退だ。いずれは死が訪れる。だからこそ、永遠に『1日目』でなくてはならない」(2016年次書簡より)

「長期的思考」を常に「1日目」の感覚で持ち続けるー。

ベゾスを突き動かすのは、競合や市場、メディアによるプレッシャーではない。顧客を失望させ、会社として停滞することへの恐怖、そして、大胆に3歩進んで、2歩下がることを恐れない、いわば「失敗力」なのである。

ジェフ・ベゾス名言7選

1. ロングターム(長期的思考)がすべてである
ウォール街の反応に振り回されず、長期的な利益を追求する。臆病な決断ではなく、”大胆な賭け”をすれば、失敗もするだろう。でも、そこから必ず学べる。(1997年年次書簡より)

2. 世界一「顧客中心主義」の会社をつくりあげる
顧客は鋭く、賢いー。ブランドというのは信頼にもとづいて築かれるのであって、決してその逆ではない。競合ではなく、お客さまのことを怖れよ。(1998年年次書簡より)

3. 「借り手」にではなく、「貸し主」になること
ある夫婦が家を貸したところ、借り手に部屋を乱暴に扱われた。所有者なら自分の家にそんなことはしない。「所有者」になれば自ずと長期的思考を持つはずだ。(2003年年次書簡より)

4. データにもとづく”判断”で決断する
アマゾンでは、データにもとづき多くの決断を下すが、「データ主義」にも限界はある。データや数字も重要だが、議論を呼ぶ判断も決断を下す上で大切だ。(2005年年次書簡より)

5. 顧客の声に耳を傾け、彼らの代わりに考える
まずは顧客の意見を聞き、それから彼らの代わりに考えることが大事。競合へのライバル心からではなく、顧客を魅了したいという気持ちでがんばること。(2009年年次書簡より)

6. 発明に失敗は付きもの、絶対不可避と覚悟せよ
発明しようものなら、必ず失敗はする。だからこそ、早く失敗して改善することが大事。これがうまくいくと、失敗によるダメージも相対的に小さくなる。(2013年年次書簡より)

7. 結論が分かっているなら、「実験」する意味はない
発明するには実験が必要だ。しかし、成功すると分かっているのなら、「実験」とは呼べない。十中八九、間違えるだろう。だが、ホームランもあるはず。(2015年年次書簡より)

あわせて読みたい

「Amazon」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    橋下氏 新党で延命する議員は害

    橋下徹

  2. 2

    野田聖子氏の文春砲を扱わないTV

    小林よしのり

  3. 3

    共産と協力へ 前原氏は支離滅裂

    和田政宗

  4. 4

    核放棄で北に6兆円 報道の思惑

    NEWSポストセブン

  5. 5

    正恩氏声明が「読めない」と話題

    ロイター

  6. 6

    フジ「ENGEI」 古臭い設定の謎

    メディアゴン

  7. 7

    小池新党は選挙対策「互助会」か

    中村ゆきつぐ

  8. 8

    iPhone iOS更新で使える11の裏技

    ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)

  9. 9

    斉藤由貴に私刑行う週刊誌に疑問

    篠田博之

  10. 10

    難民「射殺か」 武器使用は可能

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。