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【赤木智弘の眼光紙背】「とりあえずビール」なんて文化は滅ぶべきだ

眼光紙背

2008年07月29日 11:00

ライブドアニュース内の記事で、少し気になる記事を見つけた。
「ビール飲めない若者が急増中」(*1)
記事の内容は読んでいただければ分かるように、中年の若者に対する愚痴であり、取り立てて面白い記事ではない。
だいたい、「最初の一杯はビールというのが社会人のたしなみ」だなんて、いったい何年前の記事なのかと思う。

「とりあえずビール」という掛け声が定着したのは、ひとえに店側のサービスが悪かったからである。飲み物と言えばビールと日本酒、そしてサワーぐらいしかなく、一度に多くのメニューを頼むと提供の時間が遅れたりした。だからこそ、てっとり早く飲み会を始めるために、人数分のビールを頼んでいたのである。

しかし、今の居酒屋では、80年代に始まったチューハイブームから、味のバリエーションが増え、甘いお酒が市民権を得た。
確かにこの頃なら「若者は苦いビールが飲めなくなった」という愚痴は通用したのだろう。
しかし、2003年ごろには若い人を中心に乙類焼酎のブームがおき、最近はどんな店でも、芋、麦、米、蕎麦、紫蘇ぐらいの焼酎があり、それぞれ数種の銘柄が並ぶのは当たり前になっている。
そうした流れは、若者の酒に対する志向が「すぐに酔って騒げる酒」から「お酒そのものの味わいを求める」という風に変化していることを意味していると、私は考えている。

そもそも、私には上記の記事を書いた記者が、「酒の場」は好きであっても「お酒そのもの」が好きであるとは思えない。そもそも記事のリードになっている「暑いからビールがウマい!!」なんて、ビールにさまざまな味があることを知らない人間が書くことだ。
確かに、暑いときに銀の缶が印象的なトップシェアのビールをノドに流し込むと美味いけれども、冬には麦芽100%のドイツビールをじっくり飲むとウマイ。
春や秋にはイギリスのエールや、アイルランドのスタウトビールなんかをあまり冷やさずに飲むと最高である。他にも修道院の作るトラピストビールや、フレーバーの入ったビールなど、世界には数多くのビールがあり、さまざまな飲み方がある。
そうした状況で、乙類焼酎ブームによって「銘柄ごとに違うお酒の味」を知った若者が考えるのは、「とりあえずビール」という考え方が、とても「もったいない」ということだ。
普通の居酒屋にだって、さまざまな銘柄の焼酎や日本酒、そしてサワーにウィスキーなどが並ぶ中、どうして最初の一杯を自分で銘柄も決められないような、お任せのビールにしなければならないのか。

今の社会では「個性」が求められている。それは決して個人が自分勝手に行動していいという意味ではなく、同じ会社や部署の中で、同じ考え方ばかりの人間がいるよりも、ある程度違った考え方の人間がいた方が、さまざまな方面から物事を考えていけるという意味で、個性ある人材が求められているのである。
そうした要求に対して、若い人がありとあらゆるシチュエーションで「自分は何をしたいのか」と考えるのは、当たり前のことになっている。そして、それは飲み会の席でも同じである。
また、自分が何をしたいのかを考えることは、「他人が何をしたいのか」を考えることにも繋がる。若い人のなかで一気飲みの強要などが減っているということは良くいわれるし、アルコールが飲めない人がウーロン茶などを頼んでも、文句を言うような無粋な人間も少なくなっている。
自分の飲みたい飲み物を飲む為には、当然、他人にも飲みたい飲み物を選んでもらうという心がけが必要なのだ。

そう考えて行くと、「とりあえずビール」なんてことを当たり前だと思っている人間は、居酒屋で焼酎や日本酒の種類が増えている現象にも気付かず、ビールにさまざまな味わい方があることも知らず、自分が何を飲みたいかも考えておらず、他人に対する配慮もない人間であるということが分かる。
そんな人間にとって、都合がいいだけの「とりあえずビール」なんて文化は滅びてしまえばいい。私はもっといろいろなお酒をいろいろな人たちと楽しみたいのだ。

*1:http://news.livedoor.com/article/detail/3747743/

赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。近著:「若者を見殺しにする国

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