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日本人に必要な「異文化理解力」という教養

Forbes JAPAN 編集部 , Forbes JAPAN

「照れ屋で発言しない」「時間を厳守する」。日本人は海外で、このように評されることが多い。しかし、こうしたステレオタイプと、文化の違いを理解することが、国際社会で成功する鍵となる。

グローバル社会で働くビジネスパーソンには、「異文化理解力」という新時代の”教養”が不可欠だ─。文化間の誤解や対立を避けるための思考法について異文化マネジメントを専門とする、気鋭の教授に訊いた。

──国際社会で働く人が増えるなか、文化の違いに当惑する人が少なくありません。

エリン・メイヤー(以下、メイヤー):外国人と働く際、私たちの多くは行動するに当たってステレオタイプに頼ります。ただ、ステレオタイプの問題は不正確だということよりも、”不完全”だということです。
 
例えば、アメリカではフランス人は婉曲的だと思われており、フランス人はアメリカ人の方が率直だと考えがちです。確かにそうした面はありますが、批判や評価に限っていえば、フランス人の方がアメリカ人よりも率直な物言いをします。

アメリカでは前向きな言葉を交えながら相手の問題点を指摘しますが、フランスでは過ちを過ちとしてただすことが一般的です。なので、もしアメリカ人の上司が自国流にフランス人の部下の勤務評価をした場合、フランス人からすれば直接的な批判がなかったために評価されたものだと誤解する恐れがあります。

──”不完全なステレオタイプ”が誤解を生んでしまうわけですね。

メイヤー:国際的な環境で働く人は、常に微妙で複雑な文化の差異の影響を受け続けており、しかも、それは私たちが一般的に抱くステレオタイプとは異なるものだと知っておく必要があります。こうした「異文化理解力」を高めるために、「カルチャー・マップ」(下チャート)を作りました。

8つの指標はそれぞれ、マネジャーが自覚しておくべき分野を表しています。その分野内で両極端の特徴のうち、自分と相手の文化がどこに位置するかを示すことができます。


ただ、文化の違いを測る際に重要な点があります。それは、指標における各国の絶対的な位置ではなく、二つの文化の「相対的な位置関係」に注目することです。

例えば、「評価」の項目を見る限り、日中ともに、世界全体では間接的な評価を好みます。しかし、実際には日本人と比べて中国人の方が直接的な評価をしているわけです。ここでは、この”違い”の方が大事なのです。

──企業や組織では、この「カルチャー・マップ」をどのような場面で利用すればいいのでしょうか?

メイヤー:私は、「リーダーシップ養成」のときに最もよく使います。「グローバル・リーダーシップ」こそが、今世紀で大切な課題の一つです。今日、国際的な企業の経営陣には、従業員の文化に適応する能力が不可欠です。今までは、自国と同じ文化の人たちを率いるだけで済みましたが、これからはそれだけでは十分とはいえません。

一例ですが、会議でイギリス人チームが積極的に発言するのに対して、日本人チームはおとなしいという話をよく耳にします。イギリス人は「日本人チームは恥ずかしがり屋で黙りがち。会議に貢献していない」と考え、日本人は「イギリス人は話を最後まで聞かず、自分たちの発言にしか興味がない」と互いを誤解しがちです。

イギリスの場合は沈黙だと落ち着かないという文化、日本の場合は「考えてから発言しなさい」という教育にもとづく違いなのでしょう。リーダーは、このような違いを理解していなくてはいけません。

──異文化間マネジメントにおいて、日本の企業やリーダーが抱えている課題とは?

メイヤー:一つ、日本の特徴として挙げられるのが組織の構造や、正確性をとても重視している点です。とりわけ、時間の正確性は他国の追随を許さないほどです。ドイツやスイスも似ていますが、日本ほど他国からもそう思われている国はありません。 

ただ一方で、「柔軟性に欠ける」とも見られています。これは重要な点です。なぜなら今後、日本の企業は途上国を含む世界各国の企業と働く機会が否応なく増えます。そして、途上国では交通などの社会インフラが未熟だったりします。「時間を守る」のが簡単ではないのです。
 
だから、臨機応変に動き、柔軟に判断することが重視されます。それが途上国における「プロ意識」なのです。彼らは「約束の時間を守らない」のではなく、さまざまな事態に柔軟に対応して仕事の優先順位を変えた結果、遅れてしまっただけなのかもしれません。
 
少しだけ肩の力を抜いて、周りをよく見てみるのもよいのではないでしょうか。

エリン・メイヤー◎フランスの名門ビジネススクール「INSEAD(インシアード)」客員教授。専門は、異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学。ハーバード・ビジネス・レビューをはじめ、寄稿多数。著書に『異文化理解力─相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養』(邦訳:英治出版刊)など。

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