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株主総会当日! レンタル大手「ゲオ」の「内紛」「裏金」「裏社会」 - 内木場重人

(株)ゲオホールディングスのHPより

 6月15日、最高裁判所において、ある「損害賠償請求事件」についての決定が下された。主文は、上告の棄却。上場企業の現経営陣が旧経営陣に対し、不必要かつ不法な支出をしていたからと4億5000万円あまりの損害賠償を請求した訴訟で、1審の名古屋地方裁判所、2審の名古屋高等裁判所でそれぞれ旧経営陣側が敗訴し、請求額のほぼ全額を賠償せよとの判決がこれで確定した。

 その確定判決の妥当性についてはともかく、訴訟の経緯を検証すると、上場企業としては実に不可解かつ不透明な金の流れが浮き彫りになった。しかも、訴訟資料の中には、現経営陣と「裏社会との関係」を窺わせる陳述まで飛び出していた。

一種のクーデター

 その上場企業とは、DVDレンタルや中古販売ショップ「ゲオ(GEO)」チェーンなどを傘下におく「(株)ゲオホールディングス」(愛知県名古屋市に本社。以下ゲオ)。「TUTAYA」に次ぐ業界最大手チェーン(1800店以上)の展開で、2017年3月期の売り上げは、インターネットの動画配信などに押されるもグループ全体の連結で2680億円を誇る。

 同社のHPによれば、創業は1986年、遠藤結城氏が愛知県豊田市にビデオレンタルショップを開業したのが始まりである。その後、同業店舗を次々と買収し、新規出店も繰り返すことで業容を拡大。2004年には東京証券取引所、名古屋証券取引所の市場1部に上場も果たした。ちょうどその年、遠藤氏が不慮の事故で死去した。

 その後経営を引き継いだのが、今回被告となっている1人で、社長と会長を歴任した沢田喜代則氏。もともと遠藤氏の片腕として、営業全般から企画なども舵取りをしていた。被告は他に、元社長だった森原哲也氏と元役員の久保田貴之氏である。

 この沢田体制時代に業容はさらに拡大成長したのだが、同氏は2011年12月、突如辞任。次いで社長に就任したのが故・遠藤氏の長男である遠藤結藏氏である。

 そして遠藤社長の指示のもと、上記3人を同社と監査役が提訴。在任中の7つの案件で同社の元顧問にコンサルタント料を支払っていたが、それぞれが不必要であり、取締役会の承認を経ずに行われたので、取締役としての善管注意義務違反による「任務懈怠」および「不法行為」に当たる、と認定されたのである(一部は認定されていないものの、全体として不法行為と見なされた)。

 争点となった7案件の詳細や、それに対する原告被告双方の主張は名古屋高裁での判決文を参照していただくとして、目を引くのは、高裁における控訴人(沢田氏ら)側の準備書面(5)の、たとえばこんな記述だ。

「当時の経営陣側と遠藤ら創業家側との内紛の一環」「(問題の案件に対する)社外調査委員会は、いずれも、神谷(元顧問)による業務提供の実態やその報酬の相当性を認めており」

 この記述を、沢田氏側の証人として裁判でも陳述書を複数回提出している公認会計士の田中肇氏が解説する。田中氏は、ゲオの創業当時から故・遠藤氏の依頼で顧問を務め、資金調達や会計監査などを担当してきた人物で、当然ながら息子である現社長の結藏氏のこともよく知っている。

「そもそもの発端は、2011年の時点で結藏氏が何故か突然、どうしてもすぐに社長になりたいのだと言い出したことでした。一種のクーデターであり、私自身がそれに協力したのです」

1800万円の「報酬」

 そのクーデターの協力のため、田中氏は、当時会長だった沢田氏や他の取締役たちに、遠藤氏を社長にすることに同意させる説得工作を行ったという。

「たとえば、清水松生という役員を説得するため話した際、本人が、すでに遠藤氏から同様の説得を受けているが、条件として、役職(常務への昇格?)と現金600万円、それに1億円のストックオプションを渡すからと言われたけれど断ったのだ、と言っていました。清水氏にしてみれば、当時まだ33歳と若く、役員としての経験も浅い遠藤氏では経営の舵取りは無理だと考えたようです」

 要は、どうしても社長になりたかった遠藤氏が、「裏金」でさかんに買収工作をしていたというわけである。

「私は他の役員や沢田氏にも何度も話をして、結局は、取締役会での多数派工作に成功し、最終的には沢田氏らは辞任しました」

 この説得工作に対し、田中氏は遠藤氏側から1800万円の「報酬」を受け取ったという。

「ゲオの大株主でもあり、遠藤家の資産管理をする『城藏屋』という会社があるのですが、そこから貸付という形で受け取り、遠藤氏が社長に就任すればそのまま返済を免除する、という契約でした。そして実際、いまも返済していないし求められてもいません」

 しかし田中氏は、遠藤氏が社長に就任後に経営が傾くなどした場合、いずれ再び沢田氏の経営手腕が必要になると考え、沢田氏の辞任も穏便にすませるべきだと考えていたという。

「でも、当時の遠藤氏の側近役員は、どうしても沢田氏の息の根を止めなければ、と繰り返し私に言い続けていました。そのために起こしたのが一連の訴訟だったと私は思っています」

 ではなぜ当時、遠藤氏はどうしてもすぐに社長になりたかったのか。田中氏は、1、2審で提出した陳述書でこう証言している。

「会社を自由に支配することにより個人の資金繰りをなんとかしようとする意図があった」「株価が7万円を割ると、個人の借入金(相続税の支払いのために借りた借入金)に対する担保に差し入れている株が担保割れする」「不自然に経営権の奪取を急ぎ、不正事件(不正のように見える事件)を利用して沢田氏を追い落とそうとしたのであり、さらに追い打ちをかけ再起不能にしようとしている」「公認会計士として公正な立場から、強い憤りを覚えます」

 取締役の買収工作や、不透明な経路による「裏金」の受領など、場合によっては公認会計士としての資格を問われる事案であるにもかかわらず、あえて告白した田中氏のこの証言の意味は重い。

迂回して支払い続ける1200万円

 さらに同社にはもう1つ、不可解なカネの流れがある。

 バブル時代、都内の地上げなどでのし上がり、旧三和銀行などから巨額の融資を受けて急成長した「エスポ」という不動産会社があった。一時は同名のF1レースチームのスポンサーにもなったことで知名度も上げた。同社を率いていたのは、伊東和夫という人物。伊東氏は、明治期に活躍した「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一の縁戚にも連なり、一時はその名を冠した「渋澤国際総研」なる会社も傘下に入れていた。

 実は、そもそも創業前後のゲオはエスポの一事業部門であり、その事業を伊東氏が故・遠藤氏に譲渡したことで現在に繋がっている。

 そうした関係から、創業当初から、故・遠藤氏は伊東氏に対し、一種の顧問料として毎月300万円を払い続けていたという。伊東氏が言う。

「それが2001年、私と遠藤氏で話し合い、『経営指導に関する基本契約書』を取り交わし、以後は毎月100万円に減額して受け取ることにしました。名目は『経営指導料』です。しかし実際には、私はゲオに対して経営指導したことなど一度もありませんでした」

 そして2004年、遠藤氏は死去する。個人間で結ばれた契約であるため、通常ならばそれで途切れると思いきや、この100万円の振り込みはいまも続いているという。

「その支出は、ゲオの店舗にかかわる保険を一手に引き受けるために作った保険代理店からなされています。一種の迂回ですね。もちろん、息子であるいまの遠藤社長の指示によるものです」

 支出については、その保険代理店関係者も認めている。年間1200万円と決して少なくない額である。なぜかくも不可解な手法で意味不明の支出を続けるのか。

「息子の遠藤氏が社長になってからも、私は一度も経営指導をしていない。何もしないのに金だけもらっているのも不自然なので、私としては何とか遠藤氏に面談し、契約通りの経営指導をしたいのです」

「裏社会との交友」

 加えてもう1点、件の訴訟で前出の公認会計士、田中氏が裁判所に提出した陳述書の中に、看過できないこんな記述もある。

「当時ゲオの社長であった森原哲也氏や、副社長であった久保田貴之氏から、遠藤氏による裏社会との交友を理由にゲオが三菱東京UFJ銀行から取引を切られつつある(遠藤氏の裏社会との交流について、証拠はありませんが、当時週刊誌なども賑わしていたので多少のリアリティはありました)と聞いたことを踏まえ」

 裏社会、とはいわゆる暴力団ないし反社会的勢力を意味するのだろう。事実であれば、上場企業の社長としては由々しき問題である。

 以上の問題について、ゲオ総合企画部広報課に対して7項目に分けて詳細な質問状を送付し、事実確認を求めたが、

「本件裁判に関してのご質問についてですが、2017年6月19日に開示いたしましたリリースのとおり、当社の主張が地裁、高裁、最高裁で認められたものと考えております」

 としか回答してこず、すべての事実関係の確認を事実上拒否した。確認に応じられない事情でもあるのだろうか。

 折しも本日(2017年6月28日)14:00より、ゲオは株主総会を開催する。株主に対しても、責任ある説明が求められるのは言うまでもない。

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