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四国の獣医学部新設が国家戦略特区か -ライフサイエンスは無理だし、四国の家畜はもっと減少する- 

<ごった煮の国家戦略特区>

国家戦略特別区域法は、第1条で特区において「経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することが重要であることに鑑み・・・」と定めている。

そして、東京圏、関西圏、愛知県といった広域的なものから、仙北市、養父市といった小さな区域、そして問題の広島県・今治市まで10区が指定されている。広さもさることながら、区域の目玉も抽象的なものから具体的なものまで、わけのわからないものとなっている。

例えば東京圏は「国際ビジネス・イノベーション拠点」として、23の改革メニューと75の事業がリストアップされている。都市再生特別措置法の特例から病床規制に係る医療法の特別まで、何でもござれで、正直なところ私には何が国家戦略なのかよく理解できない。

<今治市に的を絞った特区指定>

そうした中に広島県となぜか瀬戸内海を隔てた対岸の愛媛県ではなく今治市がくっついて区域指定され、その中の8つの規制改革メニューの1つとして「獣医学部の新設に係る認可の基準の特例」があり、事業主体として「学校法人加計学園」が含まれている。

他にもこの規制改革が何で国家戦略か、どこが国際競争力の強化なのか、どうやって国際的な経済活動の拠点が形成されるのか、さっぱり理解できないものばかりが並ぶ。加計学園の岡山理科大学獣医学部は、2017年1月20日に区域計画が作成されている。

広島県にそれこそとってつけたように付け加えられた今治市の特区指定からして、加計学園ありきだったことが窺われる。このことは1番最近の暴露文書(?)でいえば、「10/21萩生田副長官ご発言概要」に記されたとおり一目瞭然である。期限も安倍首相の意向で2018年4月開学と述べられている。

<どこへ消えたかライフサイエンスの拠点>

当初はライフサイエンスの拠点と銘打っていた。しかし、四国の中ぐらいの市・今治市に新たに獣医学部を造ることが産業の国際競争力の強化につながり、今治市が国際的な経済活動の拠点になるのだろうか。そんな計画はどう捏造してもできないはずである。上記文書では「ハイレベルな伝染病実験ができる研究施設を備えること」と記されている。

一方、愛媛県はというと、「ハイレベルの獣医師を養成されても嬉しくない」と正直であり、矛盾も垣間見ることができる。だから、途中から問題の「広域的」という言葉が入り、四国に獣医学部がないからという後付けの理由に変わった。さすがにライフサイエンスの拠点は世間からも理解されないとわかってのことである。

<獣医学部の偏在是正は構造改革特区の論>

愛媛県の要望どおり普通の獣医師を育成することになったが、今度は国家戦略特区の名が浮いてくるという新たな矛盾が生じてくる。同僚の桜井充参議院議員は、この矛盾にいち早く気付いて追及していた。

ところが、攻める野党はいつの間にか「総理のご意向」や、言った言わないの手続きにばかり向かい、本質を全く突いていない。獣医学部のない地域の獣医師の育成は、せいぜい以前の構造改革特区のことである。

2007年から8年間に15回申請したというが、そちらのほうがまだ筋が通っている。しかし、家畜が増える見込みの全くない四国に、獣医学部がないからといって獣医学部を新設するのは、どう考えても国家戦略特区の話ではない。

<四国でライフサイエンスは無理>

計画では160人という我が国最大の1学年定員に対し、既存の大学を上回る教授数の72人を集めることになっている。文系の法学部や経済学部は大教室で講義するだけなので定員が増えてもたいしたことはないが、今は臨床実習が伴う獣医学部は、国立大学で教授1人に約7人、私立大学で約21人の学生しか面倒を見切れていない。しかも、どこの既存の大学も教授数が足りていない。

また、ハイレベルの教授陣というが、他の大学を定年退職した高齢教授かオーバー・ドクター(博士課程を修了したものの行く宛てのない者)だらけで、中間のいない教授陣しか集められないであろう。これでは人畜共通伝染病の世界最先端の研究などできるはずもない。何よりも、こうした学術的研究には、生物学、医学、化学等の他学部との協力が必要である。

ところが、残念ながら近隣県の大学は十分に要求に応えられまい。その点、広域的に獣医学科が存在しないという文言に排除された京都産業大学のほうがずっと有利な条件が備わっている。関西圏の大学とすぐに連携できるからである。それよりも適地は、東京圏の東京農工大学(府中市)と日本獣医生命科学大学(武蔵野市)の拠点がある東京都の23区以外が最適地となる。

<家畜の減少著しい四国に獣医学部は不要>

それよりも何よりも獣医師を育成したところで、生乳の指定団体制度をなくし、規制緩和に規制改革だと叫ぶだけのアベノミクス農政では、畜産も振興できない。現に急激な勢いで畜産農家戸数も減り、飼育頭数も減っている。

獣医師の育成の前に、農業後継者の育成こそ急務なのに対し、農業を傷めつけるTPPや日EU・EPAを推進している。まさに矛盾に満ち満ちた戦略なき国政である。

このままいくと、獣医師の対象とする畜産が四国にはほとんどなくなって、せっかくの獣医師も他の地域に行かないと仕事にありつけないことになる。四国に獣医学部の唯一の合理的理由である地方創生も何もなくなってしまう。 今治市の特区指定は最初から「腹心の友」加計孝太郎へのプレゼント以外の何物でもなかったのだ。

行政が歪められたどころか、すべてが大きな歪みの中で展開されてきたのである。今回の一連の事件(?)は国家戦略特区制度が「お友達優遇戦略」にとって代わられただけのことである。
8月下旬には出される大学設置審議会の結論は、多分設置を許可せずに終わるであろう。そうでないと日本の民主的な法治国家とはいえないからである。

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