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過剰な「おもてなし」と化しているアマゾン配送業務

■ヤマトの値上げ理由は何なのか?という問題

 先週、アマゾンが「当日配送ができる独自配送網の拡大に乗り出している」との報道があった。
 この一報からは、アマゾンが配送業も内製化するのではないか?との憶測話も流れたが、実際のところは、丸和運輸機関【証券コード9090】という物流会社に委託するとのことだった。丸和運輸機関は2500人程度の中堅の物流業者であり「桃太郎便」としても有名だ。しかし、従業員4万7000人の佐川が匙を投げ、従業員16万人(2017年3月時点)を擁するヤマトが窮しているアマゾンのネット配送業務の肩代わりが本当にできるのかどうかは未だ不透明感が拭えない。

 しかし、もしこのままアマゾンが配送料の値上げをせずに事を収めた場合、ヤマトの10月からの値上げ理由は何なのか?という問題が浮上することになる。個人的には27年間も値上げせずにきたのだから、デフレ緩和のためにも値上げには賛成だが、そうは思わない人の方が多いのではないかと思う。
 ヤマトはアマゾンの当日配送業務の請負を減少させているにも拘らず、一般の基本配送料を値上げしたということになれば、アマゾンの配送で発生した損失分をアマゾン利用客ではない人々が肩代わりしているということになってしまいかねない。既にそういった意見はネット上でも広く出回っており、一般消費者からは素直に納得を得られない便乗値上げとなってしまう可能性がある。

■「お客様は神様(=店員は奴隷)」が招いている悲劇

 数年前、滝沢クリステル氏の「お・も・て・な・し」発言から「(お)もてなし」という言葉が脚光を浴びて話題になったが、日本企業では過剰に成り過ぎた「おもてなし」が問題視されるようにもなってきた。それは「お客様は神様」というような価値観が企業哲学として深く浸透してしまい、過剰なまでのサービスを要求され、またそのサービスに文句1つ言わず黙って従うことが善しとされる過剰労働社会の問題だ。

例えば、

 コンビニのアルバイトに百貨店の店員のサービスを要求する。

 ファストフード店のアルバイトに高級レストランのサービスを要求する。

 など、ろくな対価も支払わずに、対価以上のサービスを要求することが当たり前で、消費者自身が「お客様は神様だ」と勘違いしているような人もたまに見かけることがある。
 以前、牛丼屋のレジで店員に向かってお金(小銭)を投げている人を見かけたことがあるが、その態度は、まるで店員を奴隷か何かと勘違いしているように見え、憤りを覚えたことがある。そんな消費者に限って、自らがサービスを提供する側(生産者)に回ると、奴隷根性丸出しの態度に豹変するのだろうけれど、「お客様は神様(=店員は奴隷)」などというさもしい感情を持っていると、その悪循環から永遠に抜け出すことができない。因果が解らない人間とはどこまでも愚かだ。

■「おもてなし」とは「心のこもった待遇」のこと

 翻って、アマゾンの「当日配送」というのも、少々、「おもてなし」が過ぎるのではないかと思える。このことも既に多くの識者が述べられていることだが、「当日配送」を求めている消費者は本当にそれほど多いのだろうか?

 私自身も会社の備品を購入する時、アマゾンを利用することがあるが、例えば週末の金曜日に注文した場合、商品の到着は週明けの月曜日で構わないのだが、大抵は休日の間に1度、会社に届けに来ているようで、月曜日に再配達するようなシステムになってしまっている。これなど、明らかに必要の無い過剰なサービスだと言える。
 個人で注文した場合は休日に届いた方が有り難いが、法人として注文したものが休日に届いても有り難迷惑であり、そこまで急いで配送してもらうと逆に気を遣ってしまう。そのため、週末に注文することは避けて、週が明けてから注文するというようなことになってしまう。そうなると月曜日に受け取れるものが火曜日、水曜日にずれ込んでしまうことになり、結果的に配送が遅延していることになる。
 発注日(アマゾンから見れば受注日)を敢えて遅らせることはアマゾン側にとってもマイナスなはずだが、この辺の無駄なシステムは特に見直すこともなく続けられているようだ。それにより、配送業者が悲鳴をあげることになるのだから、まさに過剰サービスが招いている皮肉であり、「おもてなし」サービスの弊害とも言える。

 企業相手では1日でも速く商品を届けることは至上命題であることも確かだが、それは時と場合、商品と都合にもよる。1日でも速く届けて欲しいのであれば、企業側がプラスαとして追加料金を支払うのが筋であり、何の追加料金も要求せずに、良かれと思って、休日ですら配送する。これでは思考停止業務であり、本当の意味での「おもてなし」になっていないのではないかと思う。

 「おもてなし」とは「心のこもった待遇」のことであり、対価を一方的に下げることでも無ければ、無用なサービスを提供することでもない。
 「消費者は神様」ではなく「生産者は奴隷」ではない。「心を擦り減らすまでの過剰な待遇」を「おもてなし」と考えるのはもう止めよう。

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