記事

 特集:マンネリ気味の日本経済論

1/2

特集:マンネリ気味の日本経済論

このところずっと「トランプもの」ばかりを追い続けていましたが、久々に日本経済を取り上げます。今年はそれくらい米国発のサプライズが多いけれども、裏を返せばこの間、日本経済に関するニュースは乏しかったような気がします。景気に対する世間全般の関心も低下しているようで、「どうせ良くはならないだろうが、かといって急に悪くもなりそうにない」といった草の根レベルの「達観」を感じるところです。

考えてみれば、アベノミクスも今年で5年目。黒田緩和への期待感も薄れており、「成長戦略」も毎年の恒例行事になった感がある。景気の分析も、どこかで聞いたようなことばかり。日本経済にとって最大の敵は、内なるマンネリズムかもしれません。

●月例経済報告は6か月ぶりの上方修正

「緩やかな 回復続いて 治らない」

少し前に流行った川柳である。何が言いたいのか、説明は不要であろう。ここ数十年の間に、「景気は緩やかに回復」という説明を何回聞いたかわからない。ところが日本経済が完治した、あるいは絶好調になった、などという表現は聞いたことがない。

今週6月22日、政府は月例経済報告における景気の基調判断を6カ月ぶりに上方修正した。その結果、「一部に改善の動きもみられるが、」という前段の部分が省略され、6月分は「景気は、緩やかな回復基調が続いている」というシンプルな表現になった。

あらためて過去の基調判断を振り返ってみると、次ページの通り「緩やかな回復基調」という言葉が過去38か月間連続で使われている。いくら「緩やか」でも、3年以上も続いたらもっと実態が良くなってもよさそうなものである。

○安倍政権下における基調判断の歴史



最近の動きはと言えば、昨年12月に上方修正、その前は昨年3月の下方修正があっただけである。「変化は半年に1回程度」であるから、月例経済報告の歴史の中でも非常に動きが乏しい時期に入っているようだ。ちなみにアベノミクスが始まった2013年には、12カ月中7回もの上方修正が行われている。ところが消費増税が行われた2014年4月以降の動きは、まさしく「緩やかな回復基調」の連続である。

ちなみに今月行われた「景気動向指数研究会」の判定によれば、前回の景気の谷は2012年11月であり、この間ずっと景気の拡張期間が続いているのだそうだ。安倍内閣が続いている間、一度も景気後退は起きていないということになる。

●個人消費は本当に回復しているのか

6月の月例経済報告は、各論を見ると個人消費、設備投資、住宅建設、公共投資の4点を上方修正している。この中でも最大の焦点は個人消費であり、5月には「総じてみれば持ち直しの動きが続いている」であった評価を、6月には「緩やかに持ち直している」と修正している。簡単に言ってしまえば、「雇用環境の改善が消費の拡大につながっている」との認識を示したということだろう。

とはいえ、「消費が改善している」と言えば、たちどころに反論が殺到しそうである。6月23日の日経朝刊が、「消費 確信なき回復」「家計、節約志向なお」と報じているのは、まことにごもっともと言えよう。所得の伸びに比べると消費の伸びは弱いし、過去の景気回復局面と比べても個人消費の伸びは弱い。それもそのはずで、世界経済の回復を受けて企業業績の改善が家計に波及したとしても、収入を主に年金に頼っているリタイア組にとってはさほど恩恵が及ばない。

熊野英生氏によれば、「家計の世帯構成は、高齢化・無職化・単身化が進んでいる1という。消費行動を決めるのは人口よりも世帯数であり、今の日本で世帯主が50歳以下という世帯は46.4%(2016年)に過ぎない。60歳以上のシニア世帯は、2001年の37.7%から15年かけて53.6%と1.4倍になった。このトレンドを前提とすると、今までと同じ発想で「景気回復局面では個人消費が増えるはず」とは言えなくなる。

最近の「ジェロントロジー」(老年学)の研究によれば2、人類の歴史のほとんどの時代において、平均寿命は非常に短かった。ローマ時代には、生まれてくる子どもの半分以上が10歳未満で死亡していたというデータが残っている。若年死亡率が低下して、平均寿命が急速に延びるようになったのは、産業革命が始まった18世紀中盤以降である。

次に20世紀に入って、今度は中高年の寿命が劇的に伸びるようになった。分かりやすい例として、アニメ『サザエさん』の中で磯野波平は54歳、フネさんが52歳という設定である。今ならさしずめ70代に見られそうなカップルである。が、20世紀中盤においては、「波平とフネ夫婦」はわが国における平均的50代のイメージだったのだ。

そして現在、起きているのが高齢世代のさらなる長寿化である。平均寿命はこれからもさらに伸びて、先進国における21世紀生まれ世代は半数が100歳に到達するとの試算もある。そうだとしたら、今までの高齢化論議はほとんどがやり直しとなるだろう。

長寿化は本質的には人口増と同じことなので、それ自体が景気にはプラスであるはず。ところが多くの高齢者にとって、長生きはリスクであって警戒すべきもの、と受け止められているようだ。だから社会保障のさらなる充実を、とはよく言われるところだが、むしろリタイア世帯で所得を増やすような方策を採る方が効果的なのではないか。

ともあれ、従来の社会の制度設計を大急ぎで見直していかなければならない。思えば「企業が20歳前後を大量採用し、60歳定年で追い出す」という仕組みは、産業革命以降のせいぜい250年程度の歴史しかない。これをどんな風に作り替えるべきなのか。先進国共通の課題となるが、もちろん日本はその先頭ランナーということになる。

あわせて読みたい

「日本経済」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    24時間TV直前にスタッフ飛び降り

    NEWSポストセブン

  2. 2

    詐欺で立件可能? ヒカルVALU騒動

    やまもといちろう

  3. 3

    村本のツイートは自衛官に失礼

    岡田真理

  4. 4

    前原氏が代表になれば民進終わる

    猪野 亨

  5. 5

    牛乳石鹸のCMに感じる15の違和感

    松井博

  6. 6

    読売が突然 岸田氏の存在を強調

    NEWSポストセブン

  7. 7

    「あくまで個人の感想」違法に?

    永江一石

  8. 8

    小池知事の経費400億円削減は嘘

    文春オンライン

  9. 9

    籠池氏の詐欺罪起訴は検察の汚点

    郷原信郎

  10. 10

    五輪音頭に星野源使わない最悪さ

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。