記事

メルカリ&バイマ現象がもたらす「個」の消費革命が進行中

【大前研一氏が現在進行中の消費革命について語る】
メルカリやジモティー、バイマなど、「店舗」ではない「個人」から、スマホで気軽に物を買ったり交換することが当たり前になりつつある。経営コンサルタントの大前研一氏が、なぜ、消費の革命ともいうべき事態が起きているのか、解説する。

 * * *
 松坂屋銀座店などの跡地に複合商業施設「GINZA SIX」がオープンして2か月が経過した。来館者数は開業18日で150万人を突破し、目標を上回る好スタートと報じられた。

 しかし、私は開業前から、この新施設に疑問符を付けている。報道によれば、「GINZA SIX」運営会社の中核であるJ・フロントリテイリング(大丸松坂屋百貨店の親会社)の山本良一社長は「脱・百貨店」「日本で類を見ない商業施設」などと強調している。

 たしかに森ビル、住友商事、Lキャタルトンリアルエステート(LVMHグループの不動産投資・開発会社)と組んだ運営形態は「類を見ない」かもしれないが、それは裏を返せば、土地を提供する以外に百貨店として新しい提案ができなかったということではないか。

総店舗数241店のうち旗艦店が半数以上の122店舗を占め、銀座初出店も81店舗あるので、高級ブランドや目新しい商品の“ショールーム”として見学に訪れる客は多いだろう。だが、見た目は従来の百貨店と代わり映えがしないし、高価格帯の店が多いから、実際に購入する人は少ないと思う。一方、銀座の一等地だからテナント料は非常に高い。

 となると、広告宣伝塔の役割が大きく、採算度外視のケースが多い旗艦店はともかく、他の店は採算を取るのが難しいので、もしかすると短期間で撤退するテナントが続出するかもしれない。

 百貨店の苦戦とブランドの崩壊は、世界的な現象だ。たとえば、アメリカでもメーシーズやJCペニーなどの百貨店は大規模な店舗閉鎖と人員削減に追い込まれている。実店舗を大々的に展開するアバクロンビー&フィッチ、J・クルー、ギャップ、バナナ・リパブリックといった既存のアパレルブランドも軒並み業績が低迷し、店舗閉鎖とリストラを余儀なくされている。

 未だにブランドをありがたがっているのは、日本人の一部と中国人くらいである。

 もちろん、百貨店や既存のアパレルブランドが凋落したのは、消費者の購買行動がリアルからサイバーにシフトしたことが最大の原因だ。家電量販店が不振に陥ったのと同様に、今や大半の消費者は実店舗(=ショールーム)では現物を確認するだけで、買う時は価格コムなどでEC(電子商取引)サイトの値段を調べ、最も安い物を購入する。この現象が、今後は国境も業界も関係なく広がっていくことは間違いない。

◆家には“在庫の山”がある!

 そんな新しい消費者がフル活用しているのが「越境ECサイト」だ。代表的な例は、フリーマーケット(フリマ)アプリ「メルカリ」やソーシャル・ショッピング・サイト「バイマ(BUYMA)」である。それらの仕組みの特徴はCtoC(消費者間取引)ではなく、企業(Business=メルカリやバイマ)を間に入れた「CtoBtoC」だということだ。

 たとえばメルカリの場合、お金のやりとりはメルカリが仲介し、購入者が届いた商品に納得したら出品者に代金が振り込まれるという安心・安全なエスクローを介した売買システムを採用している。それがユーザーに支持されてアプリのダウンロード数は6000万を突破し、そのうち3分の1はアメリカが占めているので、アメリカ版メルカリを利用すれば、アメリカで出品されている商品も簡単に購入できる。

 一方、バイマの場合は、海外135か国に駐在している日本人社員の奥さんなどのパーソナルショッパー(バイヤー)約9万人が現地で直接買い付けした商品を安価で買うことができる。

 その背景にあるのは、ネットやスマホの普及と物流の進化である。「CtoBtoC」といっても、メルカリやバイマのマージンは10%+物流・通関料なので、実質的には「CtoC」「パーソンtoパーソン」だ。しかも商品は世界中ほとんどの国から急げば24時間、遅くても48時間で自宅に届く。

 この出品価格や現地価格に10%のマージンと物流コストを上乗せしただけの価格で48時間以内に届くという「メルカリ&バイマ現象」は流通小売業の本質的な変化であり、革命的な進歩である。

百貨店や輸入品の国内販売特約店は、輸入品の定価の60~80%のマージンを上乗せして売っている。つまり、現地仕入れ価格の3~5倍の定価を付けていたわけで、売れ残った商品をバーゲンセールやアウトレットで3~5割引きで売っても損しないほど大きなマージンを取っていたのである。その構造が「マージン10%+物流・通関料だけ」のバイマによって急激に崩されているのだ。

 また、メルカリの台頭は従来のフリマサイトだけでなく、リユース業者にも打撃を与え始めている。今まで消費者は不用品をリユース業者に二束三文で売り払っていたが、メルカリを利用すれば、もっと高い値段で売れることに気づいたからだ。『週刊東洋経済』(5月13日号)によれば、昨年の夏以降、大手リユース会社の既存店売上高が前年割れになっているという。

 消費者にしてみれば、メルカリなら家にある“不良在庫の山”を簡単に処分できる上、そのお金でまた新しいものが買えるので、まさに一石二鳥である。

 今のところはメルカリで現金やライブチケットが出品されたり、アマゾンで詐欺が社会問題になったりしているが、そうした不正行為も購入者のレピュテーション(評価)や事業者側の規制などによって、いずれ淘汰されるはずだ。

 もはや、この「CtoC」「パーソンtoパーソン」の流れは止まらない。「個」が世界を動かす時代の象徴の一つとなるだろう。

※週刊ポスト2017年6月30日号

あわせて読みたい

「大前研一」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    24時間TV直前にスタッフ飛び降り

    NEWSポストセブン

  2. 2

    日本ファーストが「泥舟」なワケ

    猪野 亨

  3. 3

    牛乳石鹸CM批判「考えが浅すぎ」

    赤木智弘

  4. 4

    新卒一括採用への批判は的外れ

    キャリコネニュース

  5. 5

    ビッグダディ AV出演の経緯語る

    NEWSポストセブン

  6. 6

    詐欺で立件可能? ヒカルVALU騒動

    やまもといちろう

  7. 7

    権力と寝る女?小池氏の素顔とは

    文春オンライン

  8. 8

    VALUは投資ではなくギャンブル

    ニャート

  9. 9

    ウザい?正恩氏 陰口言われる理由

    高英起

  10. 10

    前原氏が代表になれば民進終わる

    猪野 亨

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。