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「野党はボロボロ、自民はマシ…この国に絶望している」18歳の”本音”にジャーナリスト田原総一朗はどう答えたか?

6月19日、ジャーナリスト・田原総一朗氏と明治大学名誉教授でアメリカ学者・越智道雄氏の対談本『さらば愛と憎しみのアメリカ 真珠湾攻撃からトランプ大統領まで』(キネマ旬報社)刊行を記念し、都内でトークショーが開催された。

そのトークショー終盤、観客からの質疑応答の場面で印象的な場面があった。質問を投げかけたのは現在、大学1年生という18歳男性。自民党の「一強多弱」の状況を象徴するような「いまの若者の本音」に二人はどう反応したか、そのやりとりをお届けする。
【取材・野呂悠輔(BLOGOS編集部)】

BLOGOS編集部

男性 私は18歳で、たぶんこの会場の中では一番若いと思うのですが…私はいま、この国にとても絶望しています。一番まともに見える党が自民党で、ほかの野党はボロボロ、マスコミはマスコミでもう何やってるかわからなくて…。

田原 ボロボロってどういうこと?

男性 なんというか…支持者があまりにも少ないように見えます。

田原 なんで少ないと思うの?

男性 信用されてないからでしょうか。

田原 違う。

男性 違いますか?

田原 あのね、日本というのは世界で極めて特殊な国なんですよ。アメリカでもヨーロッパでもだいたい二大政党。アメリカで言えば共和党と民主党、イギリスでいえば保守党と労働党。これは片方は保守で、片方はリベラルでしょう。

じゃあ保守とリベラルとどう違うか。保守は自由競争。政府は社会のことに介入しない。 自由競争だと、勝つほうが少なくて、負けるほうがどんどん大きくなる。そうなると、次の選挙でリベラルが勝つ。リベラルは格差をなくすために、規制を設ける。そして、負けた人間を救うために、福祉・社会保障にどんどん力をいれる。そうすると、財政が悪化する。そして次の選挙で保守が勝つ。つまり、アメリカでもヨーロッパでも、保守とリベラルが政権を変わりばんこでやってるわけです。

AP

ところが日本は、自民党は保守政党なんだけど、やってることはリベラル。リベラルってことはバラマキをやってるんですよ。だから、保守なのに、1千兆の借金がある。一方で、民進党もリベラルでしょう。だから自民党に対抗する対案が出せない。

(男性に)で、なんであなたは自民党に支持が集まると思うの? こんなにバラマキやって、あなたの頃には年金なくなっちゃうよ?

男性 そうですね…でも(自民党が)「他よりマシ」という風に見えて仕方がないんです。

越智 逆に質問なのですが、我々があなたぐらいの年齢のとき、圧倒的に安保反対で、左の支持層が多かったわけですよね。しかし、田原さんとあなたのやりとりを聞いていると、いまは若い人の意識がかなり変わってきていると。これはどういう風に考えればいいんでしょう? 私たちの頃と比較して、あなたたちはどう変わっているのでしょうか?

田原 そう、いまは二十代、三十代のような、若い層の方が自民党支持が多いでしょう? 年寄りの方はわりに自民党支持が少ない。これをどう考える?

※写真はイメージ

男性 なんといいますか、正直、「強い日本」への憧れがあると思います。かつての「経済大国ニッポン」とか「アジアに広がる日本」というものへの憧れが…。

田原 それは何、中国や韓国に侵略したいってこと?

男性 侵略とはいいませんが…。「経済的に」というか。

田原 日中戦争や満州事変なんて、全部侵略戦争じゃない。それがいいわけ?

男性 いえ、人が死ぬというのはイヤなんですけど、「強い日本」というものが欲しいと感じています。

越智 「強い日本」ですか…。私は強い少年ではなかったですけど、昔偶然、ガキ大将に足払いをかけてひっくり返したことがあったんですね。そして気がついたら少年たちのトップになっていたことがあった。でも、慣れないことやるもんじゃないですね、その後ものすごい暴君になってしまって。その倒した相手が兄貴とその友達を連れてきて、衆人監視の中、私をこてんぱんに叩きのめして、三日天下が終わったことがありました。

このとき私は、「強さ」というものと、生きていく上での何か「あうんの呼吸」のようなものは必ずしも合致しないものだと感じました。要するに、「強さ」というもの自体疑ってかかったほうがいいという気がします。そして一番大切なのは、笑顔になること、そして困っている人に対して、優しくできること。これはできないから言ってるんですよ?

私は、家内に面倒を見てもらうものと思って生きてきたのですが、どうやら家内の面倒は私が見なければならないようで(笑)。夫婦っていうのはしょうがないもんで、すぐ喧嘩になるんですね。喧嘩しないでやっていくのは大変なことなんですけれども、それをやらずに進歩できることが「強さ」だという風に思い返す日々です。

ですから私があなたに言えることは、ぜひ「強さ」というものについての見方を鍛えて、あなた自身の「強さ」というものをなるべく早く掴んで頂きたい、ということですね。

田原 でもね、彼の言うことはよくわかる。あのね、自民党の歴代総理大臣は、誰も日本の安全保障について考えてこなかった。

ぼくは田中角栄以降、すべての総理大臣に取材してきた。例えば、竹下登というのがいる。彼に「自衛隊というのはまったく戦えない軍隊だが、そんなんでいいのか」と聞いたことがある。すると彼は「だからいいんだ」と。どういうことかと聞くと、「軍隊がいれば戦ってしまう、戦えないから日本は平和なんだ」と。

中曽根康弘という男がいる。彼は若いころから憲法改正、憲法改正と言っていた。しかしいざ総理大臣になって、僕が憲法改正したらどうかと聞いてみると「悪いが田原さん、いまそれどころじゃないんだ」と。というのは当時レーガン大統領で、日本は(貿易の)自由化を必死にやらないといけなかった。

Getty Images

もう一人、小泉純一郎というのがいる。彼が総理大臣のとき、幹事長だった山崎拓が「そろそろ憲法改正しよう」と提案した。それに小泉はOKして、舛添や与謝野たちが憲法草案を作った。そして、いざ「憲法改正に打ち上げよう」となったとき、小泉は「それより郵政民営化が先だ」と。そのとき山崎は頭にきて、ぼくに電話をかけてきた。「小泉の野郎が逃げちゃった!」と。

つまり、麻生太郎までは安全保障を考えるのがイヤだった。誰も安全保障について考えてこなかった。そんなものはアメリカに任せとけばいいや、と。

だからいまになって「じゃあ日本はどうするんだ」という雰囲気が出てきていて、右翼の本が売れている。「強い日本」を主張する、具体的に言うと、韓国と中国の悪口言うような本がよく売れているわけ。

<書き起こし終わり>

さらば愛と憎しみのアメリカ 真珠湾攻撃からトランプ大統領まで
田原総一朗 越智道雄
キネマ旬報社 (2017-06-01)
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