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北米のビジネスは人件費との戦い

人件費が重い負担だと感じるのは世界のすべての経営者の共通した意見でしょう。もちろん、それ相応、ないし、それ以上の稼ぎを叩き出している会社なら「共存共栄」「我が社は首を切ったことは一度もない」「終身雇用こそ命」と立派な経営者のお言葉に繋がるのですが、99%の会社の運営はそう甘いものではありません。よって会社の運営は人件費との戦いであると断言してもよいかと思います。

さて、最近ではロボットやAIなどで人間の仕事を代行させようという動きが加速しています。考えてみれば90年代以降、パソコンが出来、メールが出来、スマホが当たり前になった時点で多くの仕事は簡素化され、楽になり、社員の数は大幅に減らせたはずです。社員が減っていない会社とは売り上げが伸びていて社員がうまく業容拡大に対応しているということなのでしょう。

では北米とアジアはどう違うかといえば、その人件費の高さであります。私がカナダに92年に来た時、東京の親会社に訴えたことは「カナダの税制に基づいた人件費を賄うにはプロジェクトを3人体制で進める必要がある」でした。当時、日本企業が海外で事業をするならば人海戦術で使えない人間が物見遊山のごとくやってくるのが当たり前だった時代です。そんな中、1000億円の不動産開発プロジェクトを原則3人で廻し、かつ、出張者も費用が掛かるからほとんど来させず、電話等で丁寧な説明を行うことでコストカットしました。

それが成果を上げたことは言うまでもありません。日本や中国は人口が多いこともあり、何かにつけて人材を豊富に投入します。かつて上海で自社運営のホテルが開業し、社長同行の秘書として伺った際、驚いたのは働いている人間の多さで社長と「これは宿泊客より従業員の方が多い」とつぶやいたほどでした。

一方で北米が「Do it yourself」の国である理由は人に頼めばとんでもない労賃がチャージされるからで「修理するより新しいものを買え」というのもある意味、理にかなっているのです。

その北米、私の住むバンクーバーも政権交代があったことで最低時給が15ドルに向っていくことになりそうです。この15ドルはアメリカでも各地で目標にされ、一部の州や街ではそこに向っていく段階的プログラムが既にキックインしています。

更に技能者となればその給与はレベルに応じてえっと驚く水準となります。それゆえ、人件費の塊が北米であると断言して過言ではないでしょう。こうなると若者はより給与の高い職を求めますのでエントリーレベルやきつい仕事には誰もつきたがりません。ガソリンスタンドやコンビニ、スーパーのレジで働く人の多くはパリパリの白人ではなく、移民が支えていると言ってもよいでしょう。

私の会社で清掃業務をしてくれているフィリピン出身の男性も大学出なのに言葉のハンディや大学で習得したことが当地で生かせないことで今の仕事に甘んじています。 人件費主体のビジネスをされている方からは売り上げが上がっているのに大して儲からないというつぶやきを耳にします。これは人件費に社会保険料、労災保険といった様々な追加コストがかかるだけではありません。たまには社員に飯でも食わせるかとか、クリスマスにはパーティーをするといった費用も当然加わります。事務所の場所も提供するのですからスペースだって必要ですし、机やいすといった備品も取りそろえなくてはいけないでしょう。

それ以上に人が増えると作業がオーバーラップすることになります。それは一人の人に全部を任せられない、あるいはガバナンス上、スーパーバイズする人が必要といった二重、三重の仕組みを作り上げなくてはいけません。これが効率化を阻む最大の敵であり、「一人でできたらいいのにな」とつぶやく経営者の本意であります。

それゆえ例えば私のところのレンタカー部門はワンマンオペレーションにも満たない極小運営に変えてしまいました。予約はネットか電話のみ。車のピックアップ場所には普段は誰もおらず、貸し出しの時間だけ我々がそこでお客さんと対面し、ペーパーワークや支払いなどをプロセス。車の返却はお客様が勝手に指定場所に戻し、カギはキーボックスに入れる仕組みです。カーシェアリングもほぼこの仕組みになっているのにレンタカーでできないはずはない、ということで昨年から人を削ってしまったのです。

アマゾンなどが無人化スーパーやドローンでの配達実験を繰り返すのは人件費の高騰は今後も続くし、適材適所という人事運営が困難になることを予見したものでありましょう。経営者は最低時給15ドルを払うために販売価格に転嫁するか、人材を今までより数十%カットして対応するかの選択を迫られます。価格転嫁は飲食業なら可能ですが、製造業で輸出を前提にするなら競争力が欠如します。

人件費も上昇しますが、採用される人のハードルも上がっていくというのが私の将来の見立てです。いまは北米がその矢面にあるわけですが、いずれ日本にもそのしわ寄せは必ず来るでしょう。その時、オファーされる給与は高いけれどそれに見合う能力を持たなければ採用されないというジレンマが待っているということでしょうか?

雇う方も雇われる方も大変な時代を迎えそうです。

では今日はこのぐらいで。

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