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懲りない気質?中国の3番手都市にまで広がる不動産ブーム - 岡崎研究所

中国の大都市集中にも変化が現れ、中規模都市で不動産ブームが起きていると、5月20日付の英エコノミスト誌が報じています。要旨は以下の通りです。

 何年も不動産不況に見舞われた安徽省蕪湖市に変化が生じている。2016年以降、同市の不動産価格は30%以上も急騰した。供給過剰は消え、住宅不足が新たな懸念となった。

 こうした不動産市況の目覚ましい改善は中国各地の中規模都市で起きている。蕪湖は「三番手」と言われる60余の都市の一つで、この言葉はこれらの都市の政治的重要性や規模(中国の基準で中規模は人口100~300万人)と共に、将来の展望に関する評価も指していた。専門家や投資家は巨大都市(北京、上海、深圳、広州)や二番手の大都市については楽観的だったが、三番手の都市については、産業基盤等が弱体で人材の流出が続くとして評価が低かった。

 しかし、2015年に大都市で始まった不動産市場の反騰がこれらの都市にも波及し、昨年、三番手の都市の住宅価格は平均7%も上昇し、大都市の市場が冷え込む中、今年も活況が続いている。
 もっとも、三番手の都市の浮上には投機が大きな役割を果たしている。ここ2年の資本規制の強化で資金が国内に滞留した。しかも、政府が景気刺激策として住宅購入者への抵当貸し付けの拡大を公営銀行に要請したため、2015年の株の暴落後は住宅が最も魅力的な資産になった。そこで、大都市の価格が急騰すると、投資家の関心は中規模都市に向かった。

 また、過熱する大都市の不動産市場を冷まそうとする政府の動きも同様の効果があった。昨年、安徽省の省都、合肥が住宅購入に制限を加え始めると、購入予定者は蕪湖等の他都市に押し寄せた。

 とはいえ、こうした地価上昇は中規模都市で一律に起きているのではなく、立地の良い所に集中している。とりわけ健闘しているのは、東部や南部の豊かな大都市の引力圏内の都市だが、インフラ整備のお陰で他の都市も健闘している。僻地だった蕪湖は高速鉄道が出来て上海との時間距離が3時間を切った。他方、中国北部、西部の住宅価格は5年前とほぼ変わらない。

 開発の波は中規模都市の経済も変えた。沿岸部の地価や賃金が上がると、企業は内陸部に移り始め、今や蕪湖には無数のロボティクス関連企業がある。人口の流れも変わりつつある。安徽省は中国各地への出稼ぎ労働者の主要供給源だが、一部出稼ぎ者のUターンで常住人口は2014年以降170万人増えた。

 同様の現象は、同じく出稼ぎ労働者の供給源の四川省や湖南省でも起きている。高齢が理由の帰郷もあるが、雇用機会の改善に惹かれて帰ってくる者も多い。蕪湖のある専門学校教師は、今やほとんどの学生が地元に残ると言う。

 中国政府はこの流れを推進したい。そこで人口2200万の上海は2040年までの人口増を100万人に抑える一方、中小の諸都市は外部者の流入を奨励する。

 都市の規模を制御するこの中国の政策は、最も生産的な都市に人為的制限を加えることで経済的損害をもたらす可能性がある。働いてきた大都市に永住できない出稼ぎ労働者に対しては非常に不公平だ。しかし、蕪湖などの三番手の都市に文句はない。こうした制限はこれらの都市の活性化に資するからだ。

出 典:Economist ‘China’s mid-sized cities are enjoying a property boom’(May 20, 2017)
http://www.economist.com/news/china/21722201-it-speculative-not-crazy-chinas-mid-sized-cities-are-enjoying-property-boom

農業、農村、農民の「三農問題」

 中国政府の大きな経済政策の中で個々の事案を判断しないと結論を間違えます。中国の都市建設計画は、複数の目的を持ちます。農業、農村、農民の「三農問題」を根本的に解決するためには、農業の生産性を飛躍的に高める必要があります。それは大量の農民の離農を意味し、その受け皿としての都市建設が計画されました。同時にそれが最大の格差問題といわれた都市と農村との格差を縮小させることにもつながります。さらに都市居住者の増加は消費の増大も意味し、経済発展のエンジンを投資から消費に切り替える経済の構造改革にも資することになります。既存の大都市への人口流入圧力の軽減にも役立ちます。

 その結果、中国全土で都市建設が進みました。まったく新しい都市を造る場合もあれば、既存の中小都市を合併させる場合もあります。就業の多くを第三次産業が担うにしても、核となる産業がないと都市は成立しません。それが難題だと思っていましたが、インフラ整備が急速に進んだ結果、多くの都市が上海や広東(深圳)などの巨大経済圏と結びつけられ、核となる産業が出来上がってきたようです。巨大経済圏を持たない華北地方にもそれを作ろうというのが、習近平が提唱した河北省「雄安新区」の基本的発想です。中国全土でインフラは引き続き整備され、経済圏はさらに拡大し続けるでしょう。

 上記エコノミスト誌が描いたように、367万の人口を持つ安徽省蕪湖市にも、その波が及んでいるということです。不動産投資というとすぐにバブル崩壊を想像しますが、実体はもっと複雑です。やはり一定の実需は依然としてありますし、中央政府の地価対策も一定の効果を上げています。それにしてもこれだけの乱高下を続ける不動産市場に中国人はよく付き合っていると思います。これも「中国スタンダード」のなせる技なのでしょう。

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