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外務委員会質疑(日印原子力協定)

5月10日、外務委員会で日印原子力協定に関する質疑に立ちました。一部、関心の強い方にはそれなりにご好評だった質疑でした。ただ、冒頭ちょっとおまけのような質疑をしたところだけがメディアに出ました。「常識的にあり得ない事」をしてはいかんよ、という事で指摘しておきました。

 その後、ちょっとアンチダンピングの話をした後、本題である日印原子力協定(協定公文)についてかなり詰めた質疑をしました(ココ)。この協定はインドとの原子力協力を進めるものですが、やはり気になるのが「インドが核実験をした時」の扱いです。そこに焦点を当てて聞いています。

 まず、岸田外相は累次答弁で「この協定によりインドを実質的に不拡散体制に取り込む」と言っていますが、これを以て「日本との」「民生用の」原子力協力に規制を掛ける事で「実質的に不拡散体制に取り込む」とまで言うのは、ちょっと大風呂敷ですね。大臣は答弁でいみじくも「少しでも(取り込みを進める)」と言いましたが、多分、それが真実だと思います。

 また、大臣は累次答弁で「我が国は機会ある毎にインドへのNPTへの加入を求めている。そういう我が国の立場をインドもよく理解している。」という言い方をしています。ここには微妙な言葉の誤解が生じかねません。ここで言う「理解」とは、インドがそういう日本の主張を知っているだけであって、日本の主張に「(好意的な考慮を含意する)理解を示す」という事ではありません。米国のシリア空爆の際も「理解」という言葉を使いましたが、あれも単に「情報として知っている」という意味以上のものはありませんでした。この「理解」という言葉にはとても注意する必要があります。岸田外相もちょっと辛そうでした。

 その後、この条約の「インドが核実験をした場合」に関する部分について、かなり本質的な質問をしています。それは「この条約の解釈において日印間で同床異夢の部分があるのではないか。」といいう問でした。私はかなりの同床異夢があると思っていますが、答弁は「無い」でした(そう答えるしかないのですが。)。

 この条約には「陰の主役」が居ます。それはパキスタンです。インドが将来的に核実験をする可能性があるのは、「パキスタンがやった時」です。その時は必ず、インドもやると思います。つまり、トリガーを引くのはパキスタンです。その時、インドは何というかと言うと「自分達には何の責任もない。モラトリアムだって続けていく意思を持っている。ただ、今回は主権への危機だからやらざるを得なかった。」、こういう言い方になるはずです。ただ、日本は如何なる状況であろうとも、核実験をやったら協力を止めるという立場を表明しています。

 では、その時の規定はどうなっているかと言うと、協定14条第2項です。

【協定14条2】

2 両締約国政府は、この協定が1の規定に基づいて終了する前に、関連する状況に考慮を払い、かつ、終了を求める締約国政府が示した理由を取り扱うために速やかに協議する。この協定の終了を求める締約国政府は、未解決の問題について相互に受け入れることができる解決が得られなかった旨又は協議により解決することができない旨を当該締約国政府が決定する場合には、この協定の下でのその後の協力の全部又は一部を停止する権利を有する。両締約国政府は、この協定の終了又はこの協定の下での協力の停止をもたらし得る状況について慎重な考慮を払う。両締約国政府は、更に、この協定の終了又はこの協定の下での協力の停止をもたらし得る状況が、安全保障上の環境の変化についての一方の締約国政府の重大な懸念から、又は国家安全保障に影響を及ぼすおそれのある他の国による同様の行為への対応として、生じたものであるか否かについて考慮を払うことを合意する

 これらの考慮を払ったとしても、日本のポジションは「必ず協力を止める」というものです。ただ、それであれば、こんな考慮規定は要らないわけです。考慮規定があるというのは、考慮した後、結果が左右される可能性を示唆しているのではないかなと思うわけです。そこを聞きました。「協力を止めるという日本の立場はインドも理解している」との答弁でしたが、この「理解」も、インドとしては「日本がそういう主張をしている事を知っている」というだけで、「そうなる」という事までをも合意していないのだろうと思います。

 そして、よく取り上げられる公文ですが、日本はこれを国際約束だとして「核実験をやったら日本が協力を必ず止める」という根拠はここにある、と主張しています。しかし、これは日本とインドがそれぞれの主張をしているだけです。合意と言うからには「意が合っている」必要があります。この公文で「意の合っている」部分は何処ですか、という事を長々と質疑しています。結論から言うと、第二項の「前記については、両国の見解の正確な反映であることが了解される。」という部分だけだという答弁がありました。つまり、お互いが言い合ったことが正確に反映されている事が合意事項であり、具体的な義務関係を構成する部分はありません。「核実験を行ったら協力が止まるという事についてインドが合意している」わけではないわけです。

 こういうやり取りをしました。担当課長は私の同期でして、答弁に立たれた梨田部長は外務省在勤時、とてもよくご指導いただいた尊敬する方です。梨田部長の「おまえ、中身から因果からすべて分かってるだろ?」という表情のサインがとても印象的でした。

 もう通ったので正直に言うと、「(インドと原子力協力をするかどうかという是非はさておき、交渉をやる事を前提とするならば)あの厄介なインド人相手にここまでやってきたのは立派。あとはパキスタンが核実験をやらない事を皆で願おう。」というのが感想です。上記にあれこれ書きましたが、インドの核実験のトリガーを引くのはパキスタンです。なので、パキスタンが核実験をやらなければ、インドは2008年以降のモラトリアムを継続するはずですし、協定第14条の協力の停止の部分は発動されません。なので、もう一度書きますが「パキスタンが核実験をやらない」限りにおいては普通に普通の原子力協力が進むだけだと思います。

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