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「紙の本」の将来

先日の「それでも出版社が『生き残る』としたら」は結構な反響を呼びました。前回は電子出版時代における出版社(および編集者)は、どのような形で残るだろうかということを考えましたが、今回は「紙の本の将来」について考えたいと思います。

先日のエントリにはいくつかの疑問やご批判も寄せられていましたが、今回の「補足」エントリの反応とあわせて、後日まとめて「総括」エントリを書きたいと思います。

●可能性1 紙の本は「美術工芸品」として生き残るのではないか

電子出版は今後大発展を遂げると思うのですが、物理的存在としての紙の本が完全に消滅するということは、さすがにないと思います。紙の本は長い歴史の中で、形態として完成したコンテナー(コンテンツの容器)だと思いますので、その視認性のよさや再生装置が不要であることなど、電子出版に比しての優位性はまだあります。

また、電子出版ではどうしても画面の大きさに制約がありますが、紙の本は物理的に製本可能であればどんな大きさの本も、それこそ「飛び出す絵本」のような仕掛けを施した本でも作れます。ここから考えると、紙の本は今後、判型や仕掛けに凝った「美術工芸品」のような方向で生き残るような気がしています。まあこういうことは、すでに多くの人が考えていると思いますが。

それから、紙の本にフェティッシュな執着を持つ人や、そこまでいかなくとも、紙メディアに親和性の高い中高年世代を中心に「紙」の需要は確実に残るでしょう。そうした人を対象に紙の本は存続するでしょうが、どうしても少部数になるので値段は高価になり、価格に応じて装丁も豪華になって、こちらの方面からも「美術工芸品」の色彩を強めていくことになるんじゃないかと思います。

今後主流が電子出版に移行するとしても、紙の本の需要が存続する以上は、それに対応した出版は残ると思います。ひとつ考えられるのは、任天堂の社内に「かるた工場」が残っていて花札やトランプを製造しているような形です。つまり大手の出版社の中に「紙出版部門」が残って、大判の紙書籍や工芸品的な豪華本を製作していくのです。

いずれ未来の「なんでも鑑定団」に出品されて、鑑定士から「これは表紙の題字が桑名の焼き蛤を磨き上げた板から文字を彫り抜いた象眼細工になってますなあ。本文を見てください。薄手の雁皮紙に本物の鉛活字で印字してありますよ。これはいい仕事していますね〜」と鑑定されて、何十万と値がつくことになるかもしれません。

●可能性2 町のオンデマンド屋さんが繁盛するのではないか

電子出版が主流になっても、「それでも自分は紙の本で読みたい」と望む人に向けて、「町のオンデマンド印刷屋さん」がたくさん現れて、チェーン展開するといいなあと思います。町の写真屋さんがオンデマンド印刷機を入れて、デジカメプリントのように注文を受けて、一冊だけ本を作るようになればいいと思うんですよ。

まず読者がアマゾンやアップルから電子書籍をダウンロードしますよね。それをキンドルやiPadで読むわけなんですけれども、この作品はぜひ紙の本として読みたいと思ったら、データごとオンデマンド屋さんに持って行くと、その場でプリント製本して本にしてくれるといいと思うんですね。元データさえ保存しておけば何度でも印刷できるので、読み終わった本が邪魔になったら捨てればいい。

まあ個人でプリントアウトして、ホチキスで止めてもいいんですけど、どうせ読むのなら、ちゃんと製本したほうが読みやすいですし。好みに応じて文字の大きさを変えることもできるし、表紙を好きなデザインにすることもできる。

以前、法学者の白田秀彰先生と対談したことがあります。そのとき「町のオンデマンド印刷屋さん」の話になりまして、白田先生が「学術書とか、大学の紀要なんかをオンデマンドで本にしてもらう際、見開きの片面だけに文字を印刷して、隣のページは白紙にしておく。こうすれば、自由に書き込みができて便利だと思う」とおっしゃったので、なるほどさすがは学者さんの発想だ、と思ったことがありました。

それから、あらかじめ違うデザインの装画の表紙を数種類用意してあって、書物をダウンロードする時に、好みの表紙を一点だけ選ぶことができるとか。表紙代はもちろん本の料金にはいっているんだけど、違う表紙がほしかったら、それは一点50円とかで個別にダウンロードできたりするといいのではないかと。

いずれにしましても、読者のニーズにあわせて紙の本は残っていくような気がしますですね。でもそれは、読むときだけ紙の本にするだけで、読み終わったら処分して保管はデジタルの状態でするとか。そうなれば、狭い部屋を本で占領するようなことはなくなりますね。

電子出版に関しては、いろいろと想像が広がるんですが、続きはまた今度書きます。

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