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新・坊主丸儲けシステム「ビル型納骨堂」は完売で100億円も

 宗教法人は宗教行為に関わることであれば、法人税をはじめ、固定資産税などが非課税になる。しかし、どこからどこまでが宗教行為か線引きは難しく、常に税務当局とのバトルが起きる。そんな中、寺院界隈で新たな「坊主丸儲け」ブームが到来している。季刊『宗教問題』編集長の小川寛大氏がレポートする。


【最寄り駅徒歩3分、都心の一等地に建つビル型納骨堂】
 * * *
 いま、お寺業界から熱い注目を浴びる、「ビル型納骨堂」というものがある。その名の通り、巨大なビルの中に骨壺をビッシリと詰め込んだ大規模納骨堂である。

 昨年5月、“ビル型納骨堂ブーム“に沸くお寺業界を震撼させる判決が、東京地裁で出された。東京・赤坂でビル型納骨堂「赤坂浄苑」を運営する寺院・伝燈院が、東京都から「建物が本来の宗教目的で専ら使用されていない」として固定資産税などの支払いを求められ、それに反発した寺側が取消しを求めて裁判所に訴えていたのだが、東京地裁は都の主張を支持。寺の敗訴となったのである(寺は控訴せず判決確定)。

 2013年にできた赤坂浄苑は地上5階建てのビルに約3700基を収容可能で、都心ビル型納骨堂の先駆的な存在。日常の販売業務は納骨堂の受託販売で近年名を上げている株式会社はせがわ(「お仏壇のはせがわ」)が担っていた。

経営母体の伝燈院は曹洞宗だが赤坂浄苑は「宗派不問」を謳っており、他宗派の僧侶が入り込んで法要を行うなどの姿が日常的にあったという。

 また伝燈院自体は石川県にある寺で、赤坂へ進出する際に資金調達などもはせがわが協力していた。「副住職が常駐して日常的に座禅教室を開くなど、宗教的にはきちんとしていた」とする関係者の声もあるが、「宗教法人の名義貸しによる、単なるビジネス」との見方も当然あろう。実際、東京地裁は赤坂浄苑の5階本堂や1階寺務所部分以外で、他宗派の供養が実施されていると認定。それが非課税となる「宗教法人が専らその本来の用に供する(中略)境内建物及び境内地」にはあたらないとし、課税を是とした。

 これは赤坂浄苑が特に悪質だったという話ではなく、ビル型納骨堂のほとんどは「宗派不問」だ。地方の寺院が民間企業と組んで、納骨堂を都心に建てる光景も日常化している。伝燈院との訴訟で勝った東京都は、それらにも今後同様の課税をしていく方針を匂わせているという。

 従来、納骨堂といえば寺院に付属するコインロッカーのようなものが主流で、いわば“廉価版の墓地”のような扱いであった。遺族は小さなロッカーの扉を開けて、わずか数十センチ四方の空間に納められた故人の遺骨に慎ましやかに手を合わせる。それが納骨堂に遺骨を納める人々の先祖参りの光景だった。

しかしビル型納骨堂はそのあり方を覆す。一棟のビルに数千から1万もの骨壺を収容し、高級マンションを思わせる1階エントランスを通ると、まるで宮殿のような“参拝スペース”が現れる。

 そこに遺族がICカードをかざすと、ベルトコンベアなどで遺骨が祭壇中央に運ばれてきて、「自分たちだけの豪華な墓所」が一瞬にしてできあがる。

 参拝を終えて遺族が立ち去ると、遺骨は再び収納スペースに戻される。祭壇は引き続いてやってきた別の遺族のICカードからまた別の遺骨を中央に据え、次から次へと「別の家族の墓」に姿を変えて、多くの人々のお墓参りを受け付けるのだ。

「このビル型納骨堂がいま、飛ぶような勢いで売れている」

 と証言するのは、東京都内のある寺院住職だ。

「普通の墓地より圧倒的に(売れ行きの)動きがいい。ましてや従来のコインロッカーのような納骨堂なんてお話にならない。どこも高級マンションか宮殿のように豪華な設備で、『お墓=暗い』というイメージを払拭している。また遺族たち自身でお墓の掃除をしたりする手間も発生せず、この手軽さも人気の要因。交通アクセスの便利な、都心にある施設だと完売も珍しくない」(同前)

こうしたビル型納骨堂の価格相場は、一等地に立地するものだとおおむね1基80万円~150万円程度。ビル型納骨堂は大規模なもので1万もの骨壺を収容することが可能なので、“完売“となれば100億円超ものカネが入ってくることとなる。

 ちなみに現在の日本において、民間の営利企業が墓地や納骨堂を経営することは違法である。霊園の経営は地方自治体や公益法人(宗教法人や公益社団法人など)にのみ認められている特権で、実際に民間霊園の大半は宗教法人によって運営されている。

 つまり、墓地や納骨堂などの大半は宗教法人の“宗教行為”として運営されており、その収入は基本的に課税されない。「完売すれば100億円」のビル型納骨堂も、まったく事情は同じである。

 ところが最新式のビル型納骨堂とは、すでに“普通のお寺”の手に負えるものではない。高度なITシステムによって制御されたもので、日常のメンテナンスも必須。もはや“お坊さん”の扱える範疇にはないものだ。

 ビル型納骨堂とてそのほとんどすべては寺院などの宗教法人が経営母体なのだが、その寺院が日常のメンテナンス管理にまで直接タッチしているような事例は極めて少ない。ビル型納骨堂の技術的な実態とは、完全IT化された物流倉庫のようなシステムを要求するもので、ノウハウを持つ民間営利企業が宗教法人と提携し、実務を担っているのが一般的な姿なのだ。

日本の高齢化社会とは、「毎年大量の死者が出る社会」をも意味する。早稲田大学の研究チームの推計によると、日本では2030年ごろまで、毎年約50万基の墓や納骨堂の新規需要が発生するという。

 霊園をほぼ独占的に運営できる特権を持つ宗教法人が、当面はこの市場の「うま味」から簡単に手を引く理由はない、と見るのが自然だ。

 まさに現在、“坊主丸儲け”の中心地は、これら巨大な納骨堂なのである。

【PROFILE】おがわ・かんだい/1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙「中外日報」を経て、季刊『宗教問題』編集長に。

※SAPIO2017年7月号

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